自由気ままな子どもたちに、いつも親はハラハラドキドキ、時にもやもや。
「笑った!困った!」…でもウチの子はどうしてこんなことするんだろう。その行動の裏には、知られざる“子どものココロ”が隠されているはず。

今回、元気なココロちゃんとマナブくんきょうだいの育児に追われる小木(こぎ)さん一家に寄せられたのは、こんなエピソード。

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テレビを見ているとよく「ここ、僕も行ったことあるよ!」「これ、僕もしたことあるよ!」と話す息子。ある日「火星に行ったことあるよ!」と言われてびっくり…


「あれ、知ってる!」「見たことある!」を通り越して、テレビで見ただけのものや・聞いたことをそのまま自分の体験談として語ってしまう子どもたち。
もちろん、中には正しい体験談もあるし、全てが“ウソ”というわけではないのだけれど…

育児に役立つ“子育て心理学”を発信している公認心理師・佐藤めぐみさんに、なんでも「それ、やったことある!」と言ってしまう子どもゴコロについてお話を聞いた。


――実際にはしたことのないことを「やったことある!」と言ってしまうのはよくあること?

小さいお子さんに見られます。もちろんウソをつこうと思って言っているのではありません。
小さいうちは、空想と現実の区別があいまいであることが知られており、「火星に行ったことあるよ!」と言ったお子さんも、おそらくは夢の中で別の惑星に行く体験をしたりして“行った気分”になったのかもしれません。

それが本当に起こりうることなのか、それとも、夢や絵本・マンガの中でなら起こりうることなのか、その判断を子どもたちに問うと、現実に起こりうることに対しては、「本当に起こる」と正しく判断できる傾向があります。

一方で、空想的な絵など、現実には起こりえない事柄も、「本当に起こる」と誤って判断してしまう傾向があります。たとえば、人間が郵便物を配布している絵(現実に起こりうる)も、ヤギが郵便物を配布している絵(起こりえない)も同様に判断されてしまうわけです。


――このような言動は何歳ごろの特徴?

幼稚園生くらいが多いです。3、4、5歳児を対象に空想と現実を区別する能力を調べた研究でも、とくに3歳くらいは誤判断が多く、空想の絵を見て、「現実には起こりえない」と正しく判断できた子は12%だったそうです。
そして、4歳で43%、さらに5歳になると正答率が77%と急速に上がることからも、この時期に大きな変化を遂げることが分かります。

ただ、裏を返せば、5歳の段階でも、まだ2~3割の子は見分けが難しいと感じているということ。まだまだ空想と現実の認識は十分とは言えません。その後の児童期をかけて発達し続けるので、年齢的には、小学校に上がっても見られる現象だと思います。


実際にはしたことのないことも「やったことある!」と言ってしまう子どもゴコロの正体は、決してウソをついているわけではなく、空想と現実の境目があいまいな時期にあるから。
そのため、たとえば夢や想像の中で体験したことも「これは実際にはやったことがない」とブレーキをかけることなく話してしまうのだ。

ファンタジーな体験談には「乗ってあげて」

子どもならではの「空想と現実」が混ざった体験談は思わず笑ってしまうようなものもあるだろうが、「そんなウソついちゃだめ!」と注意したくなってしまう…というパパママもいるはず。

子どもたちの「これ、やったことある!」「ここ、行ったことある!」にはどのような返事をすればいい?


――本当はしたことがない子どもたちの“体験談”…どう反応すればいい?

「そうなの!? その話聞きたい、教えて!」と乗ってあげるのが望ましいです。

ある研究で、想像力をフルに活用した遊びを行ったグループとよくある遊び(歌を歌う、ボール投げをするなど)を行ったグループを比べると、前者のグループの子の方が、認知能力のテストで高い伸びを示したことが分かっています。子どもたちが、頭の中のファンタジーを体現化することが大切なのだそうで、ならば親がその話に乗って、外に出させてあげるのがベスト。子どもたちの空想の世界を引き出してあげてください。

なお、子どもが事実と異なることを言ったとき、親御さんは「ウソをついているのでは」と心配になってしまうことも多いようです。でも、これはウソをついているのではなく、空想と現実との区別がまだあいまいなだけ。この時期ならではのファンタジーの世界につきあってあげるのがおすすめです。

「聞きコミ PRIME online」では皆様からの「育児あるある」エピソード投稿をお待ちしています。

・「もういらない」と言ったから代わりに食べたおやつ。「やっぱり食べる!」と言われて大慌て…同じものを用意しても「さっきのがいい!」と泣かれて大苦戦!
・無くしたと思っていたスマホを冷蔵庫の中から発見!なんでここに入れちゃうの!?

などなど、あなたの「育児あるある」に隠された子どもたちの気持ちを探ってみませんか?

※入力された内容は記事で紹介させて頂くことがございます。
※改めて取材をさせて頂く場合もございます。

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(解説:佐藤めぐみ/公認心理師)
英・レスター大学大学院修士号取得・オランダ心理学会認定心理士。欧米で学んだ心理学を日本の育児で取り入れやすい形にしたポジ育メソッドを考案。アメブロの「ちょっと子育て心理学」(http://ameblo.jp/la-camomille/)にて発信中。

(漫画:さいとうひさし)

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。