「うんって誰に言うてんねん、オラァ!オイ!」
複数の職員が訴える大阪府・交野市役所の幹部職員からのパワハラ被害。
被害を訴えた職員の内部通報はなぜ、1年以上も放置されたのか。
取材を進めると、職員が人事課にパワハラ被害を訴えるも、「泣き寝入りせざるを得ない」状況だったことが分かった。
また、交野市の内部通報制度にも問題があることが明らかになった。
■「口の利き方気をつけろよコラ!」幹部からの暴言や恫喝、暴力で退職を選んだ人も
交野市職員の田中さん(仮名)は、先月、幹部職員からパワハラを受けたという複数の同僚とともに記者会見を開いた。
この音声は、職員が幹部職員との内線電話でのやり取りを録音したものだ。
幹部職員:うんって誰に言うてんねんオラァ!
職員:はい…。
幹部職員:おどれ、口の利き方気を付けろよコラ!誰に抜かしてんねんコラァ!オイ!
この幹部からの暴言や恫喝、時には暴力を受けて退職を選んだ人もいたという。
田中さんは、被害者の1人ではなかったが、同僚が受けている被害を看過できないとして、去年7月に市の人事課へ内部通報をした。

■「パワハラの証拠提出」を求めた市 調査は行われないまま約1年経過
人事課は田中さんに対し、市の内部通報制度で「客観的、合理的な根拠を示さなければならない」との規定を理由に、「パワハラの証拠提出」を求めた。
田中さんは人事課に録音データなどの証拠を持つ被害者のリストを渡し、「第三者同席のもと、直接聞き取りをして確認してほしい」と伝えた。
しかし、調査は行われないまま約1年が経過。このため田中さんは記者会見を開き、問題を公にした。会見後、事態は一気に動き始める。
今月14日、山本景市長が急遽会見を開き、「第三者委員会設置の条例案提出」や、「幹部職員の暴力事案について、刑事告発の検討」を発表した。
記者:通報者から『客観的な根拠』が示されなかったから、動けなかったという認識を市は持っていたということですか?
山本景市長:当時の人事課ではそういう認識を持っておりましたが、その期間が1年にも及んだっていうことは、批判はされても当然だと思っております。

■内部通報制度に「“客観的な証拠までいる”という規定があるのは問題」と弁護士
取材を進めると、交野市の「内部通報制度」自体に問題があることが明らかになった。
公益通報制度に詳しい眞砂法律事務所の林尚美弁護士は「証拠まで出す必要がないというのが、そもそもの法律になっている。交野市の要綱で『通報ができる』とは書いているが、“客観的な証拠までいる”という規定があるのは問題」と指摘している。

■「お前周りからものすごく嫌われとんのよう分かるわ」幹部職員のパワハラ音声
さらに取材を進めると、田中さんの内部通報より半年以上前のおととし12月、別の職員の鈴木さん(仮名)が、すでに幹部職員のパワハラについて、人事課に相談していたことが分かった。
(鈴木さん(仮名)が録音した幹部職員との電話音声より)
鈴木さん:だからそれは。
幹部職員:だからじゃないやろが。誰に言ってんねんコラ。
鈴木さん:ちょっと待ってくださいよ、それ。
幹部職員:お前ちょっといちびりすぎやぞ。
鈴木さん:いちびってないですよ。
幹部職員:お前周りからものすごく嫌われとんのよう分かるわ。
鈴木さん:もうそれでいいですよ。
鈴木さんは幹部職員から「人格否定ともとれる内容で詰められた。それが繰り返し行われてきた」と証言する。

■人事課に相談するも…「泣き寝入りをせざるを得ない組織」と鈴木さん
さらに驚くべきことに、鈴木さんが人事課に相談した際、担当職員から衝撃的な発言があったという。
人事課職員は「外部に出さんと、浄化作用が働かなくなってもうてると思ってるんで、この会社(市役所)っていうのは中で突き詰めても、最終てっぺんのところで限界がくる」と発言。鈴木さんはこのやり取りも録音していた。
さらに別の人事課職員は、「もうあれ(幹部職員)が一番上におるみたいな状態」と話したという。
鈴木さんは「本当にがく然とした。(自分以外の)被害に遭われた職員も、泣き寝入りをせざるを得ない組織なんだなと確認ができたというか。情けない限りなんですけども」と語る。
「録音や音声データをあるということも話はしたんですけど、(人事課からは)出してくれとは言われませんでした」と鈴木さん。
「(市が)何も対応することはないだろうと。まるでもみ消すかのような話」だったと話す。
“自分の訴えは、もみ消されるかもしれない”と鈴木さんは証拠の提出を諦め、その後もパワハラを我慢する日々を送ってきた。

■「適切に市長にも情報が上がっていない」「幹部職員が怖いという話も聞いている」市長
被害を訴えられても及び腰の人事課、そして市の上層部に問題があるかのような発言。組織のトップである市長に、事実なのかぶつけた。
山本景市長:人事課の当時の職員にも聞きました。(市は)要綱を厳しく適用したのはあるけれども、同時に今回の幹部職員が怖いっていう話も事実として聞いてます。
さらに「結果的に今回の幹部職員に対しての案件については、適切に市長にも情報が上がっていない。適切に対処ができていなかったところもあるんじゃないかなと思う」と述べた。
今回の問題の責任として、市長は自身と副市長の2カ月分の給与を10%カットすると表明している。
(Q.組織風土を改革できなかった市長の責任は?)
山本景市長:今後、改めて第三者委員会等での調査を通じて、明らかになるものとは考えております。ただ現状において、私ができることも多々あると思っております。役所の組織風土であったり、体制を変える。

■「掘り下げて調査していただきたい。大喜びはできない」と被害訴える鈴木さん
被害を訴える鈴木さんは「事実解明をして、事実であれば加害者は処分される。加害者と被害者だけの話ではない」とし、「(組織の)隠ぺい体質、人間関係、組織上の問題、制度上の問題、そういったところもきちんと掘り下げて調査していただきたいという思いがある」と交野市に抜本的な調査を求めた。
最後に鈴木さんは、「(第三者委員会を)設置するというだけでは、大喜びはできないと思っています」と今の思いを話した。
第三者委員会の調査結果と市の今後の対応が注目される。
(関西テレビ「newsランナー」2025年11月20日放送)

