浜松のご当地ソース・トリイソースを作るメーカーが直営食堂をオープンしました。創業101年目の新たな挑戦に込められた思いとは?
静岡県浜松市中央区に本社を置く鳥居食品。
1924年に創業した老舗の看板商品と言えば…
女性:
(Q.浜松でソースと言えば?)トリイソース。結構おいしいですよね。ほかのソースを使っても戻っちゃいますね。トリイソースに
男性:
あっさりした感じで上品な味。小学校の時にトリイソースの小分けの袋が給食で出た
玉ねぎやにんじんといった野菜を煮込んだあと、木の桶で1カ月間じっくり熟成させるなど丁寧な工程を経て完成するトリイソース。
浜松では大多数の人が知っていると言っても過言ではなく、全国にもファンが多いと言われています。
その鳥居食品が先週新たにオープンしたのが直営食堂。
狙いや背景とは…?
オープンを10日後に控えた11月11日。
厨房で仕込み作業の先頭に立っていたのは鳥居大資 社長です。
鳥居食品・鳥居大資 社長:
社員全員でやるというやり方でいきたいので、工場や事務の仕事をしている人たちからすれば、普通の仕事はいいが、新しい仕事はやりたくないかもしれないので、それを説得する意味で自らやらないと問題になる
直営食堂はホールも含めてすべてのポジションを鳥居食品の社員が担う予定で、飲食店を経営した経験がある社員の指揮のもとすべてが手探りで準備を進めていますが、こうまでして社員だけで運営することにこだわるのにはワケがあります。
鳥居食品・鳥居大資 社長:
僕らの本当の狙いは料理を提供することもそうだが、料理を通じてソースの可能性を知ってもらうという意味ではソースを作っている人間がここにいた方がいいので、無理を言って社員さんに一緒にやってもらっている
ハンバーグや魚の煮付けなどメインの料理はもちろんのこと、小鉢やプリンのカラメルに至るまで、ほぼすべての味付けにトリイソースが使われています。
鳥居食品・鳥居大資 社長:
本日は肉と魚(の定食)で、肉の方がハンバーグソースを使ったデミグラスハンバーグで魚の方がウスターソースを使ったカレイの煮つけです
このため、ホールを担当するスタッフは注文をとるだけでなく、ソースの特徴や魅力を十分に伝えるため料理について説明することも大切な仕事の1つです。
社員:
工場だと人に対してではなくずっとソースに向かって黙々とやる仕事が多く、全部初めての経験ですごく緊張した
個性的なソースの開発など、これまで既存の枠にとらわれない様々な取り組みを手がけてきた鳥居社長。
ただ、今回の挑戦ばかりは期待と不安が入り混じった様子です。
鳥居食品・鳥居大資 社長:
手探りでやっているので、人から「これできているの?」「これ準備できてるの?」と言われて、「できていなかった。これ用意しないと」という状態。何とか無事にオープンを迎えられればと思っている
こうした中、11月21日に迎えたオープン当日。
社員:
プリンはカラメルに木桶で寝かせるウスターソースと香辛料を焙煎して一緒に練り込んでいるのでぜひお楽しみください
たどたどしい部分はあったものの、スタッフも練習の成果を発揮します。
来店客:
肉肉しくておいしい。ハンバーグのソースは買ったことがなかったが、初めていただいておいしかった
来店客:
家庭でソースはフライにかけるとかキャベツにかけるとか一辺倒なことしかしないが、いろいろな使い方があるんだと
来店客:
びっくりしたのがひじき。ウスターソースで味付けをしたと。こんなに風味が変わっておいしいんだと思って。ひじきは好きではなかったがおいしかった
また、直営食堂では提供している料理のレシピを無料で配布。
自社製品の新たな使い方を提案することで、将来的にはトリイソースの味と魅力を世界に発信する拠点へと成長させたい考えです。
鳥居食品・鳥居大資 社長:
(ソースが)素材を引き出す可能性をひとつでも多く見つけてもらえれば、僕らからするとひとつの役割を果たすことができる。いまは食堂という形だが、ゆくゆくはワークショップとかいろいろな形態の中で海外の人も含め、ソースの可能性を知ってもらえる場所にしていければと思う
創業101年目に挑んだ新たな試み。
ソースと向き合い続けてきた企業だからこそ知ってもらいたいおいしさを伝える取り組みに終わりはありません。