12月、真冬の北海道から、熱い視線を浴びる二人の若き才能が全国の舞台へと飛び立つ。バレーボールU16日本代表として国際大会の経験を積んだ札幌大谷中の井上奈々帆と小西出隼翔。同級生であり、共に日の丸を背負った二人がジュニアオリンピックカップ全国都道府県対抗中学バレーボール大会(JOC)で、北海道選抜として全国の頂点を目指す。彼らの胸には、国際舞台で得た確かな手応えと中学最後の大会にかける決意が宿る。
わずか1年2か月で日の丸を背負ったセッター・井上奈々帆の「未熟な挑戦」
「中国など高さのある相手に対してどうトスの組み立てをするか、ブロックをどう交わすか、今までやったことないことばかりですごくいい経験になりました」。11月、U16バレーボールアジア選手権。セッターとして初めて国際大会のコートに立った井上奈々帆は、その経験をそう振り返る。全国の強豪校から集められたチームメート、そして海外チームの攻撃のパターンの多様さ、技術の高さに、彼女は驚きを隠せなかったという。自身のトスワークについては「レフト、ライト、クイック、バックアタックと4枚しっかり使えなかった」と反省の言葉を口にする。その言葉の裏には、世界との差を肌で感じたからこその、次への渇望が滲む。
小学校3年でバレーボールを始め、中学2年まではセンターとして活躍。しかし、昨年9月にセッターへ転身するというキャリアを歩む。セッター経験わずか1年2か月でのU16日本代表選出は、まさに異例のスピードでの抜擢と言える。札幌大谷中学校女子バレーボール部監督で、担任でもある朝倉美紀先生は、彼女のセッターとしての経験不足を認めつつも、その潜在能力に太鼓判を押す。「ボールの出しのスピードやリズムがいいので面白いセッターになる。まだ未熟で、バラつきが多いので、まずは安定してきちんと上げられるセッターになってほしい。ブロックがとてもいいし、スパイクも打てるのでオールラウンダーな選手になってほしい」と井上が持つ多様な可能性を示唆している。
12月のJOCではU16のチームメートとの対戦も予想される。「北海道にもいいアタッカーが揃っているので、セッターとして、しっかりと特徴を掴んで生かせるようにしたい。U16で一緒にやったメンバーには負けたくないです」と、強い決意を口にした。

悔しさを糧にチームを牽引するキャプテン・小西出隼翔の「リベンジ」
井上と同じく、男子U16日本代表として国際舞台を経験した小西出隼翔。彼もまた、12月のJOCで北海道中学選抜チームのキャプテンとして、チームを初の全国優勝へと導くべく燃えている。8月、札幌大谷中として挑んだ最後の全国中体連決勝トーナメント。彼は発熱による体調不良で、不完全燃焼のまま大会を終えることになった。「自分が情けないプレーで終わってしまってすごく悔しい全中」中学生として最後の全国大会で味わった苦い記憶は、JOCでのリベンジへの強い原動力となっている。
北海道選抜の「キャプテン」という重責は、彼を大きく成長させた。「みんなに声をかけることが多くなったりして、コーチングし合ったり、自分のまだ足りないところを補ったりできていることが、自分の成長にもなって周りの成長にも繋がっているのかなと思います」チームをまとめる中で、自身の課題と向き合い、仲間と共に高め合う。その過程こそが確かなリーダーへと成長させている。
担任の朝倉先生は、普段の小西出について「すごく面白くて、みんなから慕われているし、凄いものを持っているのに表には出さない。でもコートに立つと豹変する。だからいいんじゃないかな」と語る。コートに立てば、普段の彼からは想像できないほど、真剣な眼差しに変わる。
中学卒業後は共に札幌大谷高校への進学を希望している井上と小西出。彼らは将来の北海道の高校バレーボール界を盛り上げる存在としてもすでに大きな注目を集めている。
中学生として最後の大会、全国中体連で成しえなかった全国制覇への強い思いが、二人の原動力となっている。今年の北海道選抜チームについて、北海道選抜選手団の家近滉一コーチは、「チーム作りはこれから」としながらも、「選手個々の能力はすごく高い。将来プロでプレーする選手が何人か出てくるのでは」と手応えを口にする。過去に北海道勢の優勝は一度も無い。北海道バレーボール界の歴史に新たな1ページを刻む挑戦は、単なる勝利以上の、未来への可能性を秘めている。

