最高裁が契約社員の「不合理な格差」認定

日本郵便の契約社員が、手当や休暇などで正社員と格差があるのは不当と訴えた3件の裁判で、最高裁は、いずれも「不合理な格差」と判断し、支給を認める判決を言い渡した。

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日本郵便をめぐっては、契約社員が、年末年始手当や扶養手当、病気休暇が付与されないのは不合理と訴えていて、東京・大阪・福岡の高裁で判断が異なっていた。

最高裁は15日の判決で、扶養手当について、「正社員が長期にわたり勤務することが期待され、生活保障を図り、継続的な雇用を確保する目的」などと指摘。
そのうえで、「相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば、支給されるべき」と判断し、契約社員も正社員と同様の手当を認めた。

また、年末年始の手当と病気休暇などについても、正社員と不合理な格差があると判断した。

各方面に大きな衝撃

非正規社員と正規社員の待遇格差をめぐっては、今週注目の最高裁判決が相次いで言い渡されている。

まず、15日の日本郵便をめぐる裁判では、契約社員側の訴えを認め、扶養手当や年末年始手当、病気休暇などに正社員と不合理な格差があると判断し、支給を認める判決を言い渡した

一方、13日の大阪医科薬科大学と東京メトロ子会社のケースでは、ボーナスや退職金について、非正規社員と正規社員には職務の内容などに違いがあり、不合理な格差までは言えないと判断し、いずれの支給も認めなかった。

最高裁は、いずれも個別のケースに対する判断としているが、各方面に大きな衝撃を持って受け止められている。

「会社」への貢献から「仕事」への貢献へ

三田友梨佳キャスター:
約3000社の企業の人事、教育サービスを手掛ける(株)「あしたのチーム」代表の高橋恭介さんに伺います。高橋さんは企業から様々な相談を受ける立場でいらっしゃいますが、この判決が今後どのように影響すると思われますか?

(株)あしたのチーム代表・高橋恭介氏:
企業側としては今後一層、仕事や役割に賃金を支払う、いわゆるジョブ型の雇用が進むと思われます。そして働く側もジョブ型の雇用が進むことで働き方の多様化が進んでいくと思われます。

すなわち副業や業務委託という働き方が増えていき、正社員というシンボリックな雇用形態ではなくなっていく可能性があります。
メンバーシップ型の会社への貢献から、ジョブ型の仕事への貢献に変わっていくと考えられます。

三田友梨佳キャスター:
そういった変化は、高橋さんご自身も現場ですでに感じていらっしゃいますか?

高橋恭介氏:
はい、実際の企業の現場に行きましても、本人の同意無くしては転勤も部署異動もさせないという企業がここにきて急速に増えてきているというのが実状です。

三田友梨佳キャスター:
非正規と正規の線引きというのはより難しくなってくると思うのですが、そのあたりはいかがですか?

高橋恭介氏:
今後懸念されるのは、正社員の待遇劣化により正社員の生産性が下がっていくこと。これは絶対に避けたいと考えます。

逆に、正社員の生産性を上げていくことで、賃金格差の合理性を担保する方向性に企業が動いていくことが望ましいと考えています。

三田友梨佳キャスター:
来年4月からは中小企業も同一労働同一賃金が適用されますが、各企業はまずは現場の実状をしっかりと把握して、その上で公平で透明性の高い人事制度の検討が求められます。

(「Live News α」10月15日放送分)