兵庫県宝塚市で親族4人をボーガンで撃ち、母親ら3人を殺害し、伯母を殺害しようとした罪に問われ、神戸地方裁判所から無期懲役の判決を言い渡された野津英滉被告の裁判で、検察側が控訴をしないと明かしました。

神戸地方検察庁は、「判決内容を仔細に検討して証拠を総合的に判断した結果、控訴理由が見出せなかったことから控訴しないことになりました」と説明しています。

■母親ら3人ボーガンで殺害した罪など問われ「死刑になるため」

野津被告は2020年、宝塚市の自宅で祖母・母親・弟の3人をボーガンで撃って殺害し、伯母にも重傷を負わせたとして殺人と殺人未遂の罪に問われていました。

これまでの裁判で野津被告は起訴内容を認め、「死刑になるためにわざわざ3人殺した」と話していました。

検察側は「犯行は計画的だった」と死刑を求刑していましたが、弁護側は「心神耗弱の状態だった」などとして、「懲役25年が妥当」と主張していました。

■神戸地裁が言い渡した判決は「無期懲役」

先月31日の判決で、神戸地裁の松田道別裁判長は、野津被告に対して「無期懲役」の判決を言い渡しました。

判決では野津被告の刑事責任能力について、「自閉スペクトラム症や強迫性障害は動機形成に関係するが、自らの判断で犯行していて、制御能力を十分に有していた」と指摘し、「心神耗弱は認められず、完全責任能力を認める」と判断しました。

その上で無期懲役とした理由については「不遇な家庭環境で母と弟の突然の出現で症状が悪化した。自殺を選択せず、『死刑になる』という極端な思考は自閉スペクトラム症の症状で、被告を一方的に非難できない。

精神科を受診できず、一人で判断していたのも被告人に有利に考慮できる。社会的影響は大きいが、家庭内であり反社会性はない。

同種事案と比べると、死刑が真にやむを得ないといえない。生涯をかけて罪に向き合わせる」と述べました。

■自身も重傷を負った伯母「障害や特性を持つ方は危険ということではない」など話す

この事件で自身もボーガンで撃たれ重傷を負った伯母は、判決を受けてコメントを発表し、殺害された家族の悔しさや無念さを語るとともに、男についても「大切な家族」とし、「罪と向き合わせることで償わせるという裁判所のご判断は、私にも響きました」と述べていました。

また裁判で被告の男本人や家族について、発達障害や自閉スペクトラム症等のことが多く取り上げられたことに触れ、次のように訴えました。

【野津被告の伯母のコメントより】「決して、障害や特性を持つ方は危険であるということではありません。

彼に関しては非常に残念でしたが、犠牲になった3人は、それぞれ障害などを抱えながらも、誰かに当たったりせず、必死に頑張って社会にくらいついて、それぞれの人生を生き抜きました。

どうか、障害や特性について誤解がなされないように願いたいです」

関西テレビ
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