若い世代にも注目が集まる高市首相の国会答弁。
その答弁をコミュニケーション戦略研究家の岡本純子氏に分析してもらうと、“あるキーワード”が浮かび上がってきた。
論戦続く国会に若い世代も注目
14日、Mr.サンデーは東京・上野にある人気のサウナ「サウナ&カプセルホテル北欧」へ。
皆さん、熱い視線を注いでいたのは…連日、論戦が続く国会中継。
30代:
すごく分かりやすい質問と簡潔な答えで、集中して見ちゃった印象がありますね。
50代:
見てたらちょっと興味を引かれたんで。高市さんの答弁の仕方、内容が。もう少し聞いてみたいなって。
国会で予算委員会が始まった11月7日から14日までの、「国会中継」に関する「X」の投稿を分析すると…。

最も多く使われている関心の高い単語は「高市総理」、さらに注目は…「久しぶり」。
国会中継を「久しぶり」に見ているといった投稿が数多く見られた。
街で聞くと、今、若い世代も…
20代:
サナさん サナさん。サナさん(の動画)結構流れてくるかも。
ーーサナさんって?
20代:
高市さん、サナさん(笑)。
20代:
国会中継の切り抜き(動画)とかが、TikTokでよく流れてくるのを見てます。
20代:
エンタメ的に今、政治を楽しんで見ているかなっていうのはあります。

世代を超えて注目が高まっている就任後初の本格的な国会論戦。
人々は“高市答弁”の何に引きつけられているのか?
Mr.サンデーが取材したのは…

1000人を超える企業のトップや政治家らに、スピーチやプレゼンをコーチングしてきたコミュニケーション戦略研究家・岡本純子氏。
高市首相の答弁を分析してもらうと、“あるキーワード”が浮かび上がってきた。

コミュニケーション戦略研究家・岡本純子氏:
変化球を投げるというのは、彼女の面白さかなというふうに考えています。
ちょこちょこいろいろ変化球を入れてくるというので、想定外がちょっと起きる。
高市答弁の“変化球”。
岡本氏は、質疑応答の中で、国会論戦らしい“直球勝負”に加え、主に4つの“変化球”が織り交ぜられることで、高市首相には予定調和ではない面白さがあると指摘する。

その1つが…
【変化球(1) 漫才風掛け合いの妙】
岡本純子氏:
やっぱり“掛け合いの妙”って言うんですかね。漫才みたいな感じになっている部分ですね。

参政党・安藤裕参院議員(14日・参院予算委「閣僚への上乗せ給与の削減方針について」):
これから国民の給料を上げていかなきゃいけない。その中で(閣僚の)給料を引き下げるのは、むしろ逆のメッセージを出していると思う。これからしっかりと外交交渉してもらいたい。安物の服で対応していたら(外国に)なめられます。これ、まさに国益に反する判断ではないか?
これに高市首相は、「ほかの公務員の給与引き上げは認めている」としたうえで、自身の服装については…
高市早苗首相:
そんなに恥ずかしくない格好で海外に行けるようにいたします。あの…物持ちがいいので。15年くらい前の服も引っ張り出してきてますので、どうかご安心ください。
安藤参院議員:
物持ちがいいことをアピールするのではなくて、日本の最高のものはこれなんだと、総理の立場でアピールしてもらいたいんですよ。

高市首相:
で…でもですね、たぶん内閣総理大臣給与として上乗せされるものをいただいたとしても、日本最高レベルのものは絶対に買えないと思います。あの…誕生日とかのプレゼント、じゃあよろしくお願いします。日本最高のものが何なのか、そういうセンスも実はあまりないもんですから…すんません。
また、長年の連立を解消した公明党には…
公明党・石川博崇参院議員(13日、参院予算委「26年間の自公連立の総括について」):
(連立した26年間の)経験や教訓を今後の政権運営にどのように生かしていこうとお考えでしょうか?
高市首相:
残念ながら連立を解消することになってしまいましたけれども、どうか御党にも協力をお願いしながら、柔軟に私の方も真摯(しんし)に議論をさせていただきたいと思いますので、ご協力よろしくお願いいたします。

岡本純子氏:
ちょっと声色変えたりするんですけど、これまでの国会論戦の中で、あんまりそういうちょっと道化的なものっていうのは、あんまりなかった気がするんですよね。
上手にユーモアを使うっていうのは、1つの有能さの証しに見えるんではないかなと。
基本的にはインテリジェンスと見なされると思うんですね。

しかし、過去の高市首相の答弁を振り返ると、2年前の国会ではこんな光景が…

立憲民主党・杉尾秀哉参院議員(2023年3月15日・参院予算委「放送法の行政文書をめぐる質疑」):
高市大臣の証言を補強する人は誰もいません。誰もいません。まったく信用ができません。あなたの答弁はどうですか?

高市経済安保相(当時):
私が信用できない、答弁が信用できないんだったら、もう質問をなさらないでください。

杉尾参院議員:
いやいや、ちょちょちょっと待って。

怒りを“ストレート”に見せる場面もあった高市首相、それが今は…
高市首相:
誕生日とかのプレゼント、じゃあよろしくお願いします。
岡本純子氏:
今までに比べると、非常に感情の抑制をきかせている部分が強いです。非常にマイルドに、ここは非常に進化していると。

その進化の中で、岡本氏が指摘するさらなる“変化球”が…
【変化球(2) 隣のサザエさん戦略】
岡本純子氏:
私は“隣のサザエさん戦略”と言うんですが、本当にもう隣にいて、そこにいらっしゃるような。雲の上の天上人でもないし、庶民のことが分かっているっていう。その戦略は、彼女はもう終始一貫してとっている戦略なんですよね。

国民民主党・榛葉賀津也幹事長(12日・参院予算委「物流やトラック業界の課題について」):
物流トラック業界について質問させていただきます。総理、総理はテレビショッピングとか、ネットショッピングやったことありますか。
高市首相:
私が履いている靴はネット通販で買っておりますし、下着などもそうでございます。あとテレビ通販はですね、うちの夫が、すごい知らない間にですね、いろいろ注文してて、まだ開けてもいない箱があるとか、決して使わないものがですね、放置されているとか、振り込んで来てくれとか悲惨な状況になっております。

国民の側に立って共感を得る。その方向性の変化球はもう1つ。
【変化球(3) 自己犠牲・献身エピソード】
岡本純子氏:
本当に世襲で、もう何の苦労もなく特権階級でやってきましたっていうことではなくて、自己犠牲的なすごく粉骨砕身、献身してますっていうエピソードをよく出されますよね。やっぱり響くんですよ。

立憲民主党・黒岩宇洋衆院議員(7日・衆院予算委「午前3時の首相公邸への出勤について」):
朝3時から公邸に移られてですね。聞くところによると、約100人ぐらいの規模の皆さんが待機してると…。大変多くの方に、ちょっと大きな影響を与えたということは事実だと思ってるんです。
高市首相:
(答案書が)出来上がるぐらいの時間が、おおむね(午前)3時ごろだろうという話を受けまして、3時に公邸の方に行きました。私がどんどんペン入れして直しちゃうもんですから、それを手伝ってくれた秘書官、そして、宿舎から公邸までついてきてくれたSPさんとドライバーの方にはご迷惑をかけたと思っております。
黒岩衆院議員:
時間管理のこともありますが、それ以上にやっぱり危機管理の観点から、やはり公邸に入られた方がよろしいと…。

高市首相:
荷作りの暇がないどころか、睡眠時間もほとんど取れていないような状況で仕事をしてますので、どうかそこはご理解ください。できるだけ早く引っ越します。

さらに高市首相は、自ら“ある絶望感”を打ち明けた。
7日に行われた衆議院予算委員会。
高額療養費制度のあり方をめぐる議論の中で、高市首相は…

高市首相(7日、衆院予算委「高額医療費制度の在り方について」):
関節リウマチという話がございましたが、私もその患者でございます。なんとか薬剤で進行を止めているという
状況でございます。その病名を告げられた時には、もう絶望的な思いになりました。つまり、一生この薬剤を打ち続ける、注射ですけれども、打ち続けなきゃいけないのかと。しかも高いということで。
そういう患者の方々の苦しみや悩みや、その時の絶望感、そういったものは、よくよく自分で分かっているつもりでございます。
医療制度改革全体の中で、しっかりと丁寧に考えていくという考え方には変わりはございません。
岡本純子氏:
そういったものもありながらやっていますよということをおっしゃると。徹底的に皆さんにお仕えするんですって
いう、(見る人が)エールを送りたくなるような部分はあるかもしれないですね。

さらに岡本氏が、高市首相の答弁に見た人の心をつかむ戦略が…
【変化球(4) “チーム早苗”のボス戦略】
高市首相(13日・参院予算委「労働時間の規制緩和について」):
そこにいる賃上げ環境整備担当大臣(城内実大臣)、先ほど少し答弁でしくじったかもしれませんが、担当大臣に対して、この物価上昇を上回る賃上げが継続する環境整備に向けた戦略策定を指示いたしました。

高市首相(12日・参院予算委「不記載議員の起用について」):
こういう人材を全然…。
働いてもらわないと、しんどい仕事についてもらわないと、ということ。

岡本純子氏:
「“チーム早苗”のボス戦略」と私は言ってますが、「皆さん私が働かせますから」って言っているんですね、ボスとして。「今まで働かずにタダ飯食ってんじゃないか」って思ってる人からすると、ちょっと気持ちいい。

見る人にウケる…だからこそ、高市首相の答弁には、あるリスクも潜んでいると、岡本氏は指摘する。
岡本純子氏:
コミュニケーションがお上手な方というのは、コミュニケーションで失敗するリスクがあるということです。表裏一体みたいなところでして。
それは、SNS上でも大きな関心事となっている「台湾有事」について。

高市首相(7日・衆院予算委「存立危機事態(台湾有事)について」):
最悪の事態を想定しておくということは非常に重要だと思います。例えば、台湾を完全に中国・北京政府の支配下に置くようなことのために、どういう手段を使うか、いろんなケースが考えられると思いますよ。だけれども、それがやはり戦艦を使って、そして武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても「存立危機事態」になりうるケースであると私は考えます。
「戦艦を使って武力の行使を伴うもの」は、集団的自衛権の行使が可能な「存立危機事態」になる場合がありうるとの認識を示した高市首相。
これが、踏み込んだ発言だとして、野党に何度も撤回を求められたが…
高市首相(10日・衆院予算委「存立危機事態(台湾有事)について」):
政府の従来の見解に沿ったものでございますので、特に撤回・取り消しをするつもりはございません。そのうえで、今後ですね、反省点としましては、特定のケースを想定したことにつきまして、この場で明言することは慎もうと思っております。
と、反省点を述べることとなった。

岡本純子氏:
彼女がもう信念があって、思わずなのか、意図的なのか、そのへんはわかりませんが、これまでしてきた主張というのをつい言って。これは国際問題に発展したりするということなので、そのへんの難しさが今後の課題としてあるんではないかなと。
(「Mr.サンデー」11月16日放送より)
