アサヒグループに続いてサイバー攻撃の標的となったネット通販大手の「アスクル」。2025年10月、外部からのサイバー攻撃を受けて2週間余り。今尚、抜本的な復旧の見通しが立っていない中、地域の医療現場では、必需品が安定して届かない状況に直面している。

医療現場でも“在庫不足”に困惑

福岡市内にある「小児科そのだクリニック」。診察で使用するマスクや手袋など6割以上の備品をアスクルに注文していたが、在庫が切れかけている。

「小児科そのだクリニック」(福岡市)
「小児科そのだクリニック」(福岡市)
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「元々、このエリア全体にマスクが置いてあったが、今はなく、注文が間に合っていない状況。多い時は、1日3~4枚はマスクを交換するので、毎日、代替え品を探すようなことが続くと、凄く厳しい」とスタッフは、日々の診療への影響を口にする。

また、注射器での採決や予防接種を行う際、医師が自分の手にフィットする使い慣れたゴム手袋をアスクルに注文していたが、院内に在庫がほとんど無くなってきたので、どこから調達するか、困っているという。

アスクルがサイバー攻撃を受け、システム障害に陥ったのは、2025年10月19日。物流業務を委託する『無印良品』や生活雑貨専門店の『LOFT(ロフト)』などでもオンラインストアでの販売を一時停止している。

復旧いつ?“高くて遅い”代替品

発生から10日後、アスクルは、手作業で出荷できる体制を構築し、出荷を停止していたコピー用紙やペーパータオル、トイレットペーパーなど計37品目について、医療機関や介護施設など一部の法人ユーザーからの注文のみFAXで注文を受け付けると発表したが、以前のような安定供給への目途は未だたっていない。

このクリニックでは、現在、在庫切れの必需品について、別の業者から購入しているが、アスクルに比べ、品揃えが少なかったり、値段が高いなどの問題も多いという。「アスクルだったら1週間以内に商品が届くところ、今、頼んでいるところは、1週間以上待ったり、届くのは、アスクルより時間がかかる」とスタッフも困惑している。

こうした中、危惧されているのが、これから本格化するインフルエンザの流行だ。福岡県によると、10月26日までの1週間に県内で確認されたインフルエンザの感染者数は、1医療機関あたり3.9人で、前の週と比べ、1.45倍に増加している。

「気温もぐっと下がってきて、湿度も50%切ってきたので、これから本格的にインフルエンザの流行が予測される。

予防対策に必要な物品が不足しないようにスタッフと日々の在庫管理を徹底してきたい」と『小児科そのだクリニック』の園田幸司院長は語る。

アスクルのシステム障害は、いつ復旧するのか?地域の医療機関は、年末年始を念頭に置いた中長期的な代替対策が必要となっている。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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