外国から持ち込まれた大型ネズミ「ヌートリア」。その生息域は年々拡大していて、農作物を食い荒らすなど深刻な被害が相次いでいる。
かわいい見た目とは裏腹に、実は農作物を食い荒らす「害獣」だ。その生息地は拡大し、都会にも出没している。
被害をもたらすヌートリア捕獲に、報奨金を出す自治体も。進撃する「ヌートリア」の実態に迫った。
■「こんなにかわいいのに駆除されちゃう」という声も
姫路市立水族館で飼育されているヌートリア。お食事タイムでは、固い生野菜をボリボリと食べる姿が「かわいい」と来館者に人気だ。
(Q:ごはん食べてたかな?)
来館者:カボチャ。
(Q:かわいかった?)
来館者:うん、かわいかった。
来館者:カピバラの小さい版だなって思ってましたけど、パッと見はね。
「カピバラ」と似ていますが、「ヌートリア」は農作物を食い荒らすため、特定外来生物に指定されたいわゆる「害獣」なのだ。
もともと南アメリカに生息し、軍服の毛皮のために輸入されたヌートリア。その後、野生化し西日本を中心に広く生息している。
農作物への被害は、近年、増加傾向にあり、およそ5000万円にも上る。

■「一生懸命育てたのにしんどい」ヌートリア被害に遭った農家
深刻な被害が出ていると聞き、取材班が向かったのは兵庫県加西市。
ヌートリアの被害にあった田んぼを見せてもらいました。
加西市の米農家 鈴木敏行さん:こういう穴の開いているところ。
(Q.稲のはげてしまっているところ?)
加西市の米農家鈴木敏行さん:そうそう。
鈴木さんは今年8月、収穫直前の米およそ90キロを食べられました。周辺には現在、おりが設置されていますが、まだ捕獲できていないということです。
加西市の米農家 鈴木敏行さん:またやられたら困るな~と思って見ているんやけどな。
(Q.収穫前にとられてしまった?)
加西市の米農家 鈴木敏行さん:ほぼ直前やな。一生懸命育てたのにしんどいやんか。

■収穫直前の野菜が全滅し、およそ20万円の損害も
また、隣の畑ではブロッコリーがヌートリアにかじられたという被害が出ていました。
加西市の農家・榊原靖司さん:これはもう完全に食べられているところ。
榊原さんの畑では去年も被害に遭い、収穫直前の野菜が全滅し、およそ20万円の損害が出たという。
加西市の農家・榊原靖司さん:見に来た時に、たまたまヌートリアが歩いてきたような状態。その時に初めて写真を撮った。
ここらはクマは出てこないけど、ヌートリアやね。ちょっと急に増えたんかな。

■泳ぐヌートリアの姿も発見
畑にはヌートリアが通ったとみられる獣道があります。しかし、姿は見当たらず帰ろうとしていると…
カメラマン:あれ?
記者:なんか泳いでますね!
カメラマン:ヌートリアや!
すぐ隣のため池にヌートリアの姿が!畑を荒らした個体なのか、周囲を気にすることなく草を食べ、悠々と歩いていった。

■ヌートリアの“脅威”は世界遺産「姫路城」にも
ヌートリアの“脅威”はあの世界遺産にも…
記者リポート:世界遺産の姫路城の中堀では過去にヌートリアが出現していて、石垣を傷める危険性があったということです。
これまでに少なくとも6匹のヌートリアが捕獲された世界遺産・姫路城。
ヌートリアはおよそ6メートルにも及ぶ巣穴を掘るため、石垣の間に巣を作ると石垣を空洞化させる恐れがあるということだ。

■大阪でも生息エリアが拡大
大阪でも、生息エリアが拡大している。
取材班が大阪市内の川へ行ってみると…
記者:あれヌートリアじゃないですか!
JR環状線・桜ノ宮駅のすぐ近く、“街中の川”に現れたヌートリア。
優雅に泳いでいますが、噛まれると骨折したりフンや尿を介して感染症をもたらすなどの危険性がある。

■ヌートリア捕獲で1匹3000円の報奨金出す自治体も
こうした状況を受けて、対策に動き出した自治体がある。
兵庫県加東市では去年から、1匹捕まえるごとに報奨金3000円を払う対策を始めていて、中には、26匹のヌートリアを捕獲した人もいる。
26匹のヌートリア捕獲中川繁美さん:農業されている方の救済。捕獲を1匹でも多くしたら被害がなくなるんちゃうかなと。『補助金が出ますよ』とありましたので、一回頑張って捕獲してみようかと。

■専門家は強い繁殖力から対策の難しさを指摘
しかし、専門家は、強い繁殖力から対策の難しさを指摘する。
北海道大学文学研究院 立澤史郎招へい教員:ネズミ算式といいますか、1頭のメスが状況が良かったら、年3回繁殖します。
1回の繁殖で多い場合には7~8頭こどもを産むことがありますので、状況次第では、非常に急速に増える動物。
イタチごっこならぬ“ヌートリアごっこ”の現状。有効な対策はあるのか。

■厄介者「ヌートリア」を活用する取り組み
厄介者「ヌートリア」を活用する取り組みがある。
静岡県磐田市では、市、農協、猟友会、大学が連携。ヌートリアを捕獲し、食材として活用する動きも。
味はどうなのか。すでに食材として活用している大阪市北区のジビエ料理を提供する店では、コースの中にヌートリア料理がある。
ヌートリアのコンフィを食べた記者によると、「独特の臭みはなく、食感や風味は鶏肉に近く、食べやすく美味しかった」ということだ。
シェフによると、「ネガティブなイメージを裏切るぐらい食材としてポテンシャルがある」とのこと。
特定外来生物のヌートリアは、自治体の許可なく駆除すると罰せられることもある。自治体に相談の上、指示に従ってほしい。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年10月31日放送)

