兵庫県宝塚市で親族4人をボーガンで撃ち、母親ら3人を殺害し、伯母を殺害しようとした罪に問われている男に、神戸地方裁判所は無期懲役の判決を言い渡しました。
この裁判では検察側が死刑を求刑し、弁護側は刑事責任能力が完全ではない「心神耗弱の状態だった」などとして「懲役25年が妥当」と主張していました。
神戸地裁の松田道別裁判長は判決で「心神耗弱は認められず、完全責任能力を認める」と判断した上で、「自殺を選択せず『死刑になる』という極端な思考は自閉スペクトラム症の症状で、被告を一方的に非難できない。家庭内であり反社会性はなく、死刑が真にやむを得ないといえない」などと指摘しました。
■母親ら3人ボーガンで殺害した罪など問われ「死刑になるため」
野津英滉被告(28)は2020年、宝塚市の自宅で祖母・母親・弟の3人をボーガンで撃って殺害し、伯母にも重傷を負わせたとして殺人と殺人未遂の罪に問われています。
これまでの裁判で野津被告は起訴内容を認め、「死刑になるためにわざわざ3人殺した」と話していました。
検察側は「犯行は計画的だった」と死刑を求刑していましたが、弁護側は「心神耗弱の状態だった」などとして、「懲役25年が妥当」と主張していました。
■神戸地裁が言い渡した判決は「無期懲役」
きょう=31日の判決で、神戸地裁の松田道別裁判長は、野津被告に対して「無期懲役」の判決を言い渡しました。
判決では野津被告の刑事責任能力について、「自閉スペクトラム症や強迫性障害は動機形成に関係するが、自らの判断で犯行していて、制御能力を十分に有していた」と指摘し、「心神耗弱は認められず、完全責任能力を認める」と判断しました。
その上で無期懲役とした理由については「不遇な家庭環境で母と弟の突然の出現で症状が悪化した。自殺を選択せず、『死刑になる』という極端な思考は自閉スペクトラム症の症状で、被告を一方的に非難できない。
精神科を受診できず、一人で判断していたのも被告人に有利に考慮できる。社会的影響は大きいが、家庭内であり反社会性はない。
同種事案と比べると、死刑が真にやむを得ないといえない。生涯をかけて罪に向かわせる」と述べました。
■法廷での野津被告は…
判決が言い渡されたとき、野津被告はうつむいた状態で肩を丸めて静かに座って聞いていました。
傍聴席から表情は見えませんでしたが、下を向いていました。
そして閉廷後、傍聴人が席を立っても座ったままで、刑務官3人が手錠を見せて手を出すように促すと、静かに応じました。
静かに立って顔はうつむいたまま、肩を丸めた状態で法廷を後にしました。
 
     
       
         
         
        