JR福島駅から東へ約1キロ、福島県庁から北へ伸びる「県庁通り」には、長年市民に愛されてきた店が数多く立ち並ぶ。この通りが今、専門店ならではのこだわりやワザが光る新たな店が増え、人が集まる場所へと生まれ変わりつつある。「県庁通りクラフトモール」と名前をリニューアルし、新たな息吹を吹き込む仕掛け人がいる。
老舗から始まる街づくり
「OPTICAL YABUUCHI」を営む籔内義久さんは、2025年に創業150年を迎える老舗の5代目オーナーだ。高校卒業後は東京の眼鏡専門学校で技術を学び、イギリスへの語学留学を経て、2004年に福島市にUターンした。
「当時の県庁通りは古くて、どんどんお店がなくなっている状態でした。シャッターも多かった」と籔内さんは当時を振り返る。
Uターン後、両親が営む眼鏡店の2階で眼鏡や雑貨を扱う店を経営していた籔内さん。「ビルが空いていてもったいないのと、当時はそんなに忙しくなかったので、隣の元々は美容室だったところを改装した」と話す。そこから「自分の好きな空間作っていったら、この小さなビルに小さな街がつくれるかも」というアイデアが生まれた。
テナントが織りなす「小さな街」
2014年に両親から本格的に経営を引き継ぐと、籔内さんは眼鏡店のリニューアルに加え、テナントの誘致を本格化。現在、ニューヤブウチビルの2階には『本と喫茶コトウ』、3階には『食堂ヒトト』が入居している。
『食堂ヒトト』は東京・吉祥寺に店舗があったが、籔内さんが運営するイベントをきっかけに声をかけ、移転が実現した。「吉祥寺の時のヒトトに食べに行ったことがあって、すごくおいしかったから来てくれたら文化が変わるなって思って」と籔内さんは語る。
店長の佐藤由佳さんは「提供するメニューは野菜中心の食事。調味料もこだわっている。あまりそういうお店が近くにないので、結構それを求めて来てくださる方が多い」と話す。
拡大する街づくりの構想
籔内さんの街づくりはさらに広がりを見せている。2023年には店の向かいにある4階建てのビルを購入。1階にはカフェや生花店、2階にはメンズ・レディース服のセレクトショップなど、現在7つの店が入居している。
「テナント全てだと16入る。3階はクラフト、モノづくりする人たちをできれば集めたい。4階には、結構大きいスペースもあるので、そこで自社の眼鏡の工房を作りたい」と将来の構想を語る。
イベントで広がる可能性
2025年10月4日、籔内さん主催のイベント「COMES AROUND-巡り合う-」が開催された。県庁通りが歩行者天国となり、「食」や「雑貨」「アート」など約35の店が福島県の内外から集まった。
訪れた人は「この通り、こんなに賑わうのだなと。人もいっぱいいて、いろんな方と触れ合えている気がして、使い方の可能性を広げてくれているイベント。将来的にいろんな場所がこうなっていったらいいな」と感想を述べた。
次世代につなぐ街づくりの願い
人と人とのつながりが紡いできた県庁通り商店街。籔内さんは新たな巡り合わせの場を生み、次の世代につないでいくことを使命としている。
「プロの方たちが多い街だと思っている。ここにしかないっていうのを作っていき、たくさんの人たちがここのファンになって、この街が目的地になるようにしていきたい」と語る。
「この街を好きという人を増やしたい」—2つのビルから始まった籔内さんの街づくりは、県庁通りに新たな可能性を広げ続けている。
(福島テレビ)
