修学旅行シーズン真っ只中ですが、広島市による修学旅行誘致のための新たな取り組みに注目です。そこには被爆体験の継承という大きな目的がありました。
広島市の平和公園、過去最多を更新する観光客数でにぎわう中大勢の修学旅行生も訪れています。
そこには、ある傾向が?
【修学旅行で訪れた学校インタビュー】
「Qどちらから?「岐阜県です」「兵庫県からです」
ほとんどが西日本の学校なんです。
関東からは対象校のおよそ2割しか来ていないのが現状です。
そこで被爆80年の今年、全国へ、修学旅行を含めた平和学習を広げようと新たな動きが。
今年8月、広島市はある集いを開催しました。参加者の多くは東京の教師です。
最初は被爆証言。元教師の梶谷さんが語りかけます。
【被爆者・梶谷文昭さん】
「ピカっと来て、後はドーンであります」とにかく核兵器はもう広島と長崎で終わり。3度目を使わせちゃ人類が危ない」
「東京の教師にヒロシマの心を伝える」機会はなぜ企画されたのでしょうか?
【広島平和文化センター・谷史郎副理事長】
「平和学習の目的は、戦争とか原爆を知るというのが出発点になるとしても、平和を作る人材を育てるということなんだと一番先導役になるのは先生ですので、教師の方に集まっていただきたいなと思ったのがきっかけです」
東京と広島の教師で意見交換も行われました。
【広島市の教師】
「自分が小学生の時から平和学習が嫌だったんです。もう学びたくない。子供たちにいざ平和教育しなさいっていったら入口がすごく悩んで例えばお好み焼き屋さんがいっぱいあるよとか、広島カープの球場があるんで私の学区にはカープはどうやってできたのとか興味あるところから入ってそこを調べてみたら80年前の広島にたどり着いた」
【東京都の教師】
「保護者に言われました。つらいところじゃないっていうことをちゃんと子供たちに分からせて帰ってくるような修学旅行にしてほしいって」
教職課程で学ばなかった平和学習の指導は、教師にとって思考錯誤です。
参加者の1人、東京から参加の田平先生。
【板橋区立桜川中学校:田平真季先生】
「平和学習は答えがないので、何をしていったらいいのかなというところはもう常に考えながらやっています。他校の先生方の取り組みを聞くことでそういうやり方、切り口があるんだというのは大変参考になります」
2日間の研修を通し、平和ボランティアガイドの存在など広島市による平和学習の支援についても知ることができました。
東京都板橋区桜川中学校。
【田川先生】
「It’sFriday」「AreyouhappyFriday?」「No」
研修に参加していた田平先生は、3年生の学年主任です。
この学校の修学旅行先は、長らく京都と奈良でした。
【桜川中学校・田平真季先生】
「校長から、この学年の3年後の修学旅行をどうするっていうことでお声がけいただいたんです。あれ、修学旅行の行先は変えられるのかな、というところがまず最初にありまして学年の教員とも相談して、私は常々平和について考えてほしいな子供たちにという思いがあったので、修学旅行、広島に行きたいんだけど、という話をしました」
同僚の教員たちは、賛同してくれましたしかし、そこからは、未知の世界。
前例がない中、東京で事前の平和学習を重ねるのは簡単なことではありません。
生徒とともに探究し学ぶ時間そこには、ある思いがありました。
【桜川中学校・田平真季先生】
「いろんな社会情勢を見たときに、原爆が日本に落とされたことを知らない若者もいるんだというようなニュースを自分が教員になったときに見たときに日本人としてやっぱり知っていかなきゃいけないし、伝えていかなきゃいけないなぁと(いうのは思っていましたね)」
一方、平和文化センターは、そんな教師たちを後押しする取り組みを始めていましたこの日は、神奈川県へ。
中学校の校長の集まりに足を運んでいました。
【平和文化センター:谷史郎副理事】
「これから広島への修学旅行をお考えの学校はぜひご活用いただけたらと思っています」
今年度、「平和学習モニター校指定制度」を設け、講師を派遣したり、生徒1人当たりおよそ3000円の修学旅行費助成金を設けるなど、関東の学校が事前に平和学習する手伝いをし、その集大成として、修学旅行で広島に来ることを呼びかけていました。
【桜川中・田平真季先生】
「Qいよいよですね、先生?「お天気でよかったです」
桜川中の修学旅行当日です。実は桜川中も、「平和学習モニター校」制度を利用していました。田平先生がどうしてもと日程に入れたものがありました。同世代の慰霊碑巡りです。
【ボランティアガイド】
「まさにこの地域。ここは、原爆が落ちたところからだいたい500メートルから600メートルで、大変なことになって、みんなここでほとんど全員が亡くなってしまいました」
自分たちと同じ中学生が原爆で大勢、犠牲になった過去と向き合いました。
詳細を伝えてくれるボランティアガイドを班ごとに手配できたのも、モニター校制度の支援によるものです。
【生徒は】
「現地で聞いた方が、実際にこの場で起こったことだからより学びに繋がるというか実感がわきます」
「Q:実際来てみるとちがう?「全然違う」「目の前にあることだからしっかり目で見てこれから一生覚えていられたらなと思っています」
【板橋区立桜川中学校・田平真季先生】
「教員だけでは探しきれないものってたくさんあると思うんですけどそういうのを広島市さんがバックアップしてくださって、被爆者の体験者の方の講演会ですとか本当にありがたかったです。リアルなものに生徒が近づけるのはありがたいなと思いました。彼らの人生の中に何か一つでもきっかけになってあの時広島に行ったのはどういうことだったんだろう?というのを将来的に何か答え合わせじゃないですけどしていくようなきっかけになればいいなと思っています」
「Q:修学旅行地を広島に選んでどうでしたか?「そうですね。それはもう大正解だったなと思います」
広島市は関東圏を足掛かりに広島への修学旅行が少ない東日本全体へ広げていきたい考えです。
ヒロシマの心を全国へつなぐ地道な種まきが始まっています。