ネット通販大手アスクルが受けたサイバー攻撃の影響が10日たっても収束せず、医療現場などで深刻な混乱が生じている。
クリニックでは、医療シーツや器具の調達が困難となり、代替品は通常の2〜3倍の価格に高騰している。
一方、アサヒグループへのサイバー攻撃も影響が長引き、飲食店や百貨店ではビール供給の遅れが発生している。

アスクルがサイバー攻撃で医療備品が枯渇寸前

ネット通販大手「アスクル」がサイバー攻撃を受けてから、29日で10日が経過した。

この記事の画像(11枚)

29日、アスクルは出荷を停止していたコピーペーパーやペーパータオルなど、37のアイテムを医療機関や介護施設などからFAXで注文を受け付けると発表した。
しかし、本格的な復旧はまだのようだ。

アスクルの子会社に配送の一部を委託している無印良品やロフトなどでは、物流障害の影響でネットストアでの販売を一時停止している。

そんな中、特に大きな影響を受けているのが医療業界。
混乱が続いている。

21日に「イット!」が取材した東京・足立区にある訪問看護を行う「訪問看護ステーション ブロッサム」では、アルコール消毒綿が残りわずかとなっていた。

訪問看護ステーション ブロッサム・西村直之社長(10月21日):
在庫があと7箱。だいたいあと10日ぐらいしか持たない。

この時から、約1週間たった29日の状況を聞いた。

訪問看護ステーション ブロッサム・西村直之社長:
「酒精綿」というアルコールの綿があと3箱になった。プラス1箱をドラッグストアの方で購入して、あわせて4箱。(アスクルは)その日の早い時間帯に頼めば、うまくいくと当日、その日に来る。遅くても翌日には来る。ほかの業者に依頼をすると、1週間ぐらいはみなきゃとなる。

さらに東京・北区にある「いとう王子神谷内科外科クリニック」でも影響が長引いていた。

いとう王子神谷内科外科クリニック・伊藤博道院長:
医療で使う物品の購入ができなくなってしまった。「メディカルシーツ」という、処置・手術・点滴などのときに(ベッドを)汚すわけにはいかないので、上にきれいな滅菌のシーツを敷く。はっ水と吸水が絶妙なバランスで、しかも吸水力の強い、オムツ以上、ビニール未満の専用のシーツがあるが使い捨てなんですね。(在庫が)切れてしまい買おうと思ったが、アスクルじゃないと売っていない。

医療備品の約7割をアスクルに注文しているという「いとう王子神谷内科外科クリニック」だが、今は別のサイトから購入しているというが…。

いとう王子神谷内科外科クリニック・伊藤博道院長:
皮膚の縫合用のステープラーも(別会社だと)3倍の値段の見積もりが来た。(ほかの備品も)一般の買い方をすると、2倍・3倍の値段がついてくる。処置や人件費を考えると赤字に近くなってしまうので悩ましい。

街の人からは不安の声が上がっている。

街の人:
私、医療関係で産休中なんですが、アスクル使っていたので大変だろうなと。(子どもが)病気になり、「(備品が)足りない」と言われたらどうしようもないし、かわいそうなので、早めに対応してもらいたいです。

アサヒビールも供給停止…飲食業界に波及する余波

青井実キャスター:
パックン、在庫がなくなってしまいましたが。

スペシャルキャスター・パトリック・ハーランさん(パックン):
一般家庭でも、今の時代は必要な時に注文するから大量に買い込まない。倉庫を抱えない企業もあるんです。病院も一緒なので、サプライチェーンのレジリエンスが必要かなと思いますね。

青井キャスター:
でも緊急の場合、困りませんか?

宮司愛海キャスター:
そうですね。これだけ多くの商品をアスクルが取り扱っていたということを初めて知った人も多いと思います。

青井キャスター:
すぐ届く良さもありますが。

宮司キャスター:
一企業の影響が、ここまで大きくなってしまうんだということをあらためて感じます。

青井キャスター:
一方、アサヒグループホールディングスへのサイバー攻撃によるシステム障害も続いています。街の皆さんに、その影響について伺いました。

街の人:
コンビニでアサヒだけ入ってない。ショーケースが空いてしまっている。

街の人:
アルバイト先が飲食店なんですが、「ビールが来ない」と騒いでて困りました。

青井キャスター:
アサヒへのサイバー攻撃から1カ月がたちましたが、さまざまな方面で影響が続いているようです。

宮司キャスター:
まずスーパーへの影響ですが、店頭販売には影響はあまりないそうです。一方でオンラインは、一部のスーパーではアサヒの商品を一時販売休止しています。そして、お歳暮も一部の百貨店では影響が出そうです。大手百貨店の関係者は、「ビールは売れ筋の1つなので、今の状況が続けば客の希望に添えない場合も出てくるのでは」と話しました。これはアサヒ、ほかのメーカーともに、お歳暮より通年商品の供給を優先する必要があるためだそうです。

青井キャスター:
そんな中、ビールに合うトンカツを提供する飲食店にも影響が出ているようです。ぶ厚いお肉を低温でじっくりと揚げた白いトンカツが名物の「とんかつ六角箸」では、普段はアサヒビールではなく、サントリーのビールを提供していますが…。

とんかつ六角箸・田中朋行さん:
通常使っているのがサントリーのプレミアムモルツだが、そちらが入ってこなくなって、代替のものを使っている。今は代替でオリオン(ビール)を使用しています。なかなか関東だとオリオンビールが飲める場所は沖縄居酒屋さんしかないので、「こういうふうに飲めるのはうれしいね」という話は伺ってます。

サイバー攻撃による影響はいつまで続くのか。
それぞれの現場で対策が進められている。
(「イット!」10月29日放送より)

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(11枚)