被爆者の高齢化が進み被爆体験の継承が課題となる中、広島市はAI=人工知能を活用した新たな取り組みを始めました。

【被爆証言の映像】
「切明千枝子と申します。よろしくお願いいたします」

20日にお披露目された「被爆証言応答装置」

【被爆証言の映像】
Q:戦後放射線の影響と思われる症状はありましたか?
「当時は放射線の影響かどうかということははっきりとはわからなかった」
Q:核兵器のない平和な未来のために自分たちができることは何だと思いますか?「みんなで行動を起こさにゃいけんのでしょうね」

利用者の質問内容に含まれた単語などをAIが認識あらかじめ撮影した被爆者のインタビュー映像から適切な答えを選んで再生する仕組みです。
これはデジタル技術を活用し、「被爆者の言葉」や「平和への想い」を的確に後世に伝えようという広島市の取り組みで、今回5人の被爆者が協力しました。

その1人、県内最高齢の被爆体験証言者切明千枝子さん。

【県内最高齢の被爆体験証言者・切明千枝子さん(95)】
「我ながらびっくり仰天、こんなまぁ大きな…」

切明さんは15歳のとき爆心地から1.9キロで被爆しました。
「令和」になってから、被爆体験証言者となり、自身の被爆体験を精力的に伝えてきました。

切明さんの証言の撮影は去年11月に行われました。

【撮影風景】
「きょうはまず被爆当時、被爆時の状況についてお伺いします。切明さんは原爆が投下される様子を見ましたか?」
「いえいえ見ていません」
「切明さんは原爆がさく裂する際光は見えましたか?」
「光はでも目の前にそれこそ目がくらむほどの閃光を感じましたね」

収録は、看護師立ち合いのもと休憩を取りながら3日間行われ200通りの質問に対する答えを収録しました。

【被爆体験証言者・切明千枝子さん】
Q:切明さんはなぜ協力をされようと思われましたか?
「私もね、95歳ですからね。あともう幾何も命はないぞと思って。でもまだ話足りない。いや、話しておきたかったことがまだたくさんあるぞと思うと焦りというか、私がいなくなったら私しか知らない被爆のときの状態、そんなものが一緒に消えてしまう。そしたらまた、同じ戦争が起きて原爆が使われるかもしれないという心配とか恐れというものがあって」

決心するには時間が要りましたが、「後世に残して平和につなげたい」その思いが勝りました。

20日の完成披露会。

【切明千枝子さんの映像】
Q:切明さんにとっての平和とはなんですか?
「そうですね。私はね戦争さえなければ平和かというとそうではないと思うんですよ」

【被爆体験証言者・切明千枝子さん】
「映像として声として形として残されていくっていうことは本当にありがたいことだと思っております。2度とね、あの時の広島のような惨状が繰り替えされてはならないと思っていますので」

確実にやってくる被爆者なき時代。
それを見据え、平和への想いをどうつないでいくか待ったなしの取り組みが進んでいます。

【参考】
〇装置は5台製作され、英語にも対応。
〇広島市はまずは、学校で試行的に体験会を開き、AIの学習能力を高めるとともにアンケートをとり、効果的な運用方法を模索予定。
〇将来的には、原爆資料館を訪れる修学旅行生の平和学習などで活用したい考え。

テレビ新広島
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