10月は「乳がん月間」です。「ピンクリボン月間」とも言われ、早期発見や理解を進めようと啓発活動が行われています。宮城県大崎市には、乳がん経験者で作る団体があり患者同士、交流を図りながら精力的に活動しています。
日本人女性の9人に1人が罹患すると言われる「乳がん」。女性がかかるがんの種類の中で一番多く、エストロゲンという女性ホルモンが影響しており、ライフスタイルの変化などによって年々、罹患率が高くなっています。
東北医科薬科大学病院乳腺内分泌外科 鈴木昭彦科長
「結婚・出産などライフイベントの時期の変化、食生活が欧米寄り、子供を産む数が少ない女性は乳がんになりやすい傾向があります。ただし早期発見することで、生命予後、命に対する安全性が確保できる病気でもある。ぜひ、検診を受けていただきたい」
乳がんは誰もが罹患する可能性のある身近な病気ですが、宮城県対がん協会によりますと、乳がんの患者同士が悩みを相談し合う場は、首都圏に比べると多くはないと言います。
西ノ入菜月アナウンサー
「大崎市の大崎市民病院2階には、がんサロンという場所があります。がんの患者さんやその家族同士交流したり、様々ながんについて知ることができる場です」
この日、がんサロンで行われていたのは、乳がんの手術を受けた人向けのパッド作り講習会です。患者同士、悩みを相談する場にもなっているといいます。
りんりんの会 高橋修子さん
「乳がんの患者はどうしても胸を切除してしまう。パッドで補正することで患者さんが自信をもって外に出てもらう、それが一つの目的」
こう話すのは、乳がん体験者の会「りんりんの会」の代表を務める高橋修子さん(69)です。会の名前には、乳がんになっても、「凛」として生き、仲間がいるという「輪」を広げ、活動が「鈴」のようにりんりんと響いて伝わっていくようにという願いを込めたそうです。
高橋さんは保育士として働いていた24年前、40代で乳がんを患いました。元々、2年に一度乳がん検診は受けていましたが、ある日、胸の違和感に気づいたそうです。
りんりんの会 高橋修子さん
「夏場に着替えるときに、ふと触って胸にしこりがあるのを感じた。これは何かおかしいぞと思い、絶対何かあるかなって、自分では怖かった」
「乳がん」と判り、大きなショックを受けたと話します。
りんりんの会 高橋修子さん
「まさか自分ががんを告知されると思っていなかった。うちに帰ってから涙が出てきて止まらなかったのが、記憶に残っている」
その時、気づいたことが、乳がん体験者の会を立ち上げるきっかけになったと言います。
りんりんの会 高橋修子さん
「自分の病気のことを話せる人がいなかった、周りに。必要な情報も取れなくてすごく苦しかった。きっと同じように思っている人がいるんじゃないかと、患者会という形のものがあったらいいなと」
手術の3年後、主治医の後押しも受け、立ち上げたのが「りんりんの会」。交流会や講演などを開催し、同じ悩みを持つ人同士で支え合ってきました。
りんりんの会 高橋修子さん
「がん体験者にしか分からない体の痛みや、心の痛みを同じ患者さんと一緒に分かち合うことができる。一番は自分が救われたので、次の方に手を差し伸べたいという気持ちだと思う」
この日、高橋さんたちが開いたのは、乳がん患者の健康維持に関する講習会。医師や看護師も参加しました。
参加者
「ホルモン療法はしなかったので、骨粗しょう症は、私は大丈夫だろうと思っているんですけど」
大崎市民病院 内海政紀看護師
「2年に1回くらいは骨の検査を受けたほうが良い。女性がメインなんですけど、現在は正常ですよと言われても、2年後には骨粗しょう症になっている可能性が高いので」
会は患者だけでなく、医療関係者にとっても患者の本音を知る大切な場となっているようです。
大崎市民病院 内海政紀看護師
「看護師からしても、こういう機会は必要と思う。病院ではなく、患者さん自身が集まって話をする機会は貴重」
乳がん月間を前に行われたチャリティーイベント。地域全体でがんと向き合って、患者や家族を支援し、がんに関する理解、知識を深めてもらおうというものです。
りんりんの会 高橋修子さん
「ここでいっぱい歩かせてもらって、旅立った方(亡くなった)人にも思いを寄せながら、また明日から頑張ろうとエネルギーをもらう場所と思っている」
会のメンバーには、乳がんで亡くなった人もいます。
高橋さんは、亡くなった人たちの思いを決して忘れず、活動を続けていきたいと話します。
りんりんの会 高橋修子さん
「残された私たち、今生きている患者さんたちができることは、旅立たれた人の思いを次の人につなげる役割があるのではないかと思っていて、悲しむ人を減らしたい。それが今一番目指しているところ」
そして…。
りんりんの会 高橋修子さん
「検診は必ず受けてほしい。自分の胸に関心を持ってほしい。がんになってしまったときに相談できる場所・人・情報があることを知ってほしい」