9月25日から28日まで、世界最大級のゲームの見本市『東京ゲームショウ』が開かれた。ゲーム会社などが最新の製品を紹介するイベントだが、ここに今年初めて新潟市が出展。いったい、なぜ自治体がゲームの見本市に…その理由を取材した。
新潟市がTGSに初出展 ねらいは“ゲーム企業の誘致”
VRやメタバースなど、ゲーム会社が最新の製品を持ち寄る世界最大級のゲームの見本市・東京ゲームショウ。
2025年は9月25日から28日までの4日間開催され、出展する企業・団体の数は過去最多となる1136と初めて1000を超えた。
その出展者の中にはなんと“新潟市”が。初出展だというが、なぜゲームの見本市に地方自治体が参加するだろうか。

市の企業誘致課・阿部隼人さんは「IT企業は順調に誘致できているので、いま不足しがちなゲーム関連の企業についても誘致したい」とその理由を話す。
新潟市には、ゲームだけでなくイラストやデザインなど、クリエイティブな分野を学べる専門学校などが多く立地している。
このスキルを持った豊富な人材をアピールすることで企業を誘致し、さらに人材の流出を抑えたい狙いがあるというのだ。
「学校で学んだ技術やスキルを地元新潟で生かしたいという声をよく聞くが、希望する職種がなくて、泣く泣く市外に行ったり、生かせない職種に就職したりするというケースもある。学んだ技術を生かせる職場を誘致して、学生が希望する新潟で、希望する職種で働いてもらいたい」と阿部さん。

また、県内の自治体としても初めてで、全国的にも珍しい試みではあるが、企業誘致課のある新潟市役所ふるまち庁舎の隣に立地する『新潟コンピュータ専門学校』が毎年東京ゲームショウに出展していることも初出展の後押しとなった。
ほかにも、東京から新幹線で最短89分とアクセスが良いことや、新潟駅付近に建設が進んでいるオフィスビルを含め、都心軸“にいがた2km”で新しいビルが多いのも新潟市の特徴。
市としても対象のビルに進出するIT関連企業に対して事務所賃料の75%を3年間補助するなど、手厚い支援制度を設けていて、再開発を企業誘致の追い風にしたい考えだ。
実際に新潟市に進出したゲーム企業のホンネは
そうした誘致活動が実を結んだ一つが、2023年に新潟市中央区のNINOに支社を開設したゲーム会社『OGIX』だ。

スマートフォン向けのコンシューマーゲームや“ゲーミフィケーション”というゲームのおもしろさや楽しさを取り入れた企業の課題解決コンテンツを受託して開発する企業だが、進出のきっかけは、新潟市からの視察の誘いのチラシだった。
OGIXの阿部義弘執行役員は「(視察して)人も土地も魅力的なところが多くて、それで是非進出してみようかなと。市の補助金がすごく充実しているし、最新の技術を学んだ学生との接点が多くとれるので人材確保の点で有利」などと、進出の理由を語る。

OGIXは市内の学校とイベントを開催するなど密に連携。採用にもつながっていて、新潟のオフィスの従業員の約半数の県内出身者だという。
ただ、まだ市内にゲーム関連の企業が少ないため、横のつながりを増やすためにも、市とともに東京ゲームショウに出展し、仲間を増やしたい考えだ。
TGS初出展 4日間で合計200社ほどが足を運ぶ
そして9月25日から4日間、新潟市とOGIXは実際に東京ゲームショウのビジネスソリューションコーナーに出展。
合計200社ほどの企業が訪れ、新潟市の取り組みを聞いたり、OGIXが開発したゲームを試遊したという。
そこで反応が大きかったというのが、業界を目指す若者の人材採用が期待できる点と新潟市の手厚い支援制度だったという。
一方で、新潟市と東京との具体的な距離感や積雪量、豊富な地域資源の存在など新潟市のイメージが誤解されていたことも分かった。
新潟市の阿部さんは「実際に市、そして進出企業との直接の対話を通して正確なイメージを伝えた」と話す。
新潟市としては今後の視察に意欲を示す企業と出会うことができ、OGIXとしても企業の認知を広げる機会になったと両者手応えを感じているようだ。
企業誘致を進める新潟市のユニークな取り組みにこれからも注目だ。
(NST新潟総合テレビ)