正月の箱根駅伝、11月の全日本大学駅伝と並ぶ大学三大駅伝の一つ、出雲駅伝が2025年10月13日に開催される。この大会に創部以来初めての出場を決めたのが鹿児島市の志學館大学だ。チームのメンバーは全員鹿児島県出身。初めての全国の舞台、地元選手だけで活躍できるところを見せようと、練習に励んでいる。
創部以来初の全国大会 出雲駅伝出場をつかむ
午前7時半、鹿児島市のマリンポートかごしまに続々とトレーニングウェア姿の学生たちが集まってきた。
ここは桜島を望む錦江湾に面した港湾施設で多くのクルーズ船が寄港するが、芝生広場にはランニングコースがあり、多くのランナーを目にする場所でもある。

集まったのは志學館大学・陸上競技部の選手たち。所属する1年生から4年生まで14人全員が鹿児島県出身だ。2024年12月、長崎県で行われた島原学生駅伝で優勝し、創部以来初の全国大会、10月の出雲駅伝への切符をつかんだ。
この日の練習では、3kmごとにペースを上げながら12kmを走る「ビルドアップ走」を行った。

メンバーを“背中で引っ張る”エース 中村晃斗選手(3年)
チームの中心は、出水中央高校出身、3年生の中村晃斗選手。
2025年6月に行われた全日本インカレでは5000mで4位、1500mでも5位入賞を果たした。
中村選手は「(チームを)言葉で引っ張ることができないので、背中で引っ張るのが自分の役割だと思う。(1日)大体25kmぐらい走っていて、多いときは30kmを超える」と、落ち着いた口調で話す。
走る以外にしていることを聞いてみると、「特に・・・寝ています(笑)。体がきついので、寝て、起きて、走るみたいな」と、陸上中心の学生生活を送っていることがうかがえる。

ストイックに陸上と向き合う中村選手だが、高校時代はけがに苦しみ、思うように結果が残せなかった。関東の大学へ進学する道もあったが、「地元に残り、自分のペースで陸上を続けたい」と、志學館大学に入学した。
しかし、「自分が入ったときは『本当に陸上部なのかな?』という(状態)。(部員の)人数もそうだが練習もほとんど来なくて。廃部(寸前)みたいな感じだったので、結構びっくりしました」と中村選手が語るように、入部当初は予想外の状況だったが、環境に左右されず自分のペースでひたむきに競技を続け、結果を残すようになった。
鹿児島県の選手だけで全国へ 応援してもらう走りを目指す
その姿に引き寄せられるように、全国高校駅伝で都大路を走った経験もある鹿児島城西高校出身の齊藤莉樹選手や、国分中央高校時代にインターハイに出場した辻田鉄人選手ら、鹿児島県出身の有力選手たちが志學館大学に集まり、中村選手を中心に選手が切磋琢磨しながら練習することで、チームも強くなっていったという。

部を率いる前迫勇太監督は「鹿児島の志學館大学というチームがどれだけ頑張っているかを全国の人に知ってもらいたいので、1つでも前の順位でたすきを渡し、一人でも多く応援してもらえるような走りをしたい」と、意気込みを語った。
華の1区を走ると公言している中村選手は「個人としては1区区間賞を目標にしていて、チームとしては1つでも関東(の大学)を超えることが目標。鹿児島(の選手)だけで活躍できるところを見せられればいい」と、静かに、そして力強く語ってくれた。

37回目の出雲駅伝には箱根でおなじみの青山学院大学や駒澤大学をはじめ、22チームが出場する予定で6区間、45.1kmでたすきをつなぐ。廃部寸前状態から初の大舞台に挑む志學館大学も、秋の出雲路を全力で駆け抜ける。
※志學館大学が出場する出雲駅伝は、10月13日(月)午後1時から鹿児島テレビなどフジテレビ系で生中継予定です。