渇水の夏となった宮城。県北部の鳴子ダムでは、雨不足の影響で43日間連続の「貯水率0%」に。幸いにも農業への深刻な影響は見られなかったが、多くの農家や関係者を悩ませたこの夏の水不足を振り返る。

雨の少ない「空梅雨」 貯水率は例年の半分以下

梅雨明け直後の鳴子ダム
梅雨明け直後の鳴子ダム
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2025年、宮城県を含む東北南部では7月18日ごろに梅雨明けを迎えた。梅雨の期間は25日間で、平年の42日間を大きく下回った。
期間中の大崎市鳴子温泉川渡の雨量は68.0ミリで、平年のわずか35%にとどまった。鳴子ダムでは、梅雨明け時点で貯水率が41.2%と、例年の2分の1以下に。管理所などはほかのダムと連携、放流量を調整することを決めた。

大崎市や美里町、涌谷町に農業用水を供給する鳴子ダムでは、例年より貯水率が高い岩堂沢ダムの放流量を増やし、鳴子ダムの放流量を絞ることで、水量を維持する方針が決まった。

記録的猛暑の連日 貯水率0%へ

仙台でも連日の猛暑日となった
仙台でも連日の猛暑日となった

7月29日、仙台市ではシーズン8日目の猛暑日となり、2023年の年間の猛暑日最多記録を早くも更新。梅雨明け後は13日連続で全く雨が降らなかった。

鳴子ダムの貯水率は午前3時の時点で0%。例年なら7月末に約8割あるはずの水量が空になった。鳴子ダムで0%となるのは1994年以来、じつに31年ぶりのことだった。

村井嘉浩知事も稲作への影響を懸念し、次のように語った。

村井嘉浩知事:
適切に番水等に取り組んで、水をできるだけ有効に活用するように努めていきたい。

県内7つのダムで貯水率40%以下に

貯水率が0%となった鳴子ダム
貯水率が0%となった鳴子ダム

8月に入ると、県管理ダムの平均貯水率は午前7時時点で43.6%と、過去10年の平均76.1%を大きく下回った。県内にある20のダムのうち、鳴子ダムを含む7つのダムで貯水率が40%を割り込んだ。

さらに、栗原市の栗駒ダムでも一時「1%台」に。
多くの水が田んぼに行き渡るよう、放流量を昼夜ともに毎秒1トンに減らす緊急措置が取られた。これまで夜の放流量は毎秒2.5トン、昼は1.5トンだった。
その後の降雨で栗駒ダムは持ち直したが、鳴子ダムは依然「0%」のままだった。

0%でも農業用水を供給できた理由

稲作で大量の水を必要とする「出穂期」は8月下旬まで。この時期を過ぎれば需要は減るため、深刻な水不足は避けられるとみられていた。

さらに、「最低推移以下の水」の存在も大きかった。
ダムを建設すると、供給の過程で土砂が堆積する。鳴子ダムでは、100年間でたまると予想される土砂の高さまでを、「最低水位」と表現している。
鳴子ダムは建設から約60年で、「最低水位」とされるラインまで土砂が堆積しきっていないため、利用計画外ではあるが、「最低水位以下の水」が溜まっている状態なのだ。
この水をくみ上げて利用し、さらに近隣のダムとも連携したことで、農業用水を供給することができていた。

43日ぶりの最低水位を上回る貯水量

提供:鳴子ダム管理所
提供:鳴子ダム管理所

事態が動いたのは1カ月半後。9月に入り雨が続いたこと、さらに灌漑用水の補給が終わったこともあり、11日にはダムの水位が最低水位まで回復した。0%の状態はじつに43日間にわたって続いていた。

東北地方整備局は17日、「農業用水の需要が高い時期が終わり、雨によって河川の水量も回復した」として、7月25日から設置していた渇水対策本部を解散した。

コメの品質は「1等」 農家の工夫が支えた

県内各地で続々とコメの収穫が進み、JAいしのまきでは11日、収穫されたコメが等級検査にかけられた。与えられた評価は、最も良い「1等」だった。
水不足による身割れなど、品質の低下が心配されたものの、農家は井戸水の汲み上げなどでしのぎ、昼夜の温度差も品質を高める追い風となった。

「水があるのは当然ではない」渇水の夏が残した教訓

水不足に農家は悩まされたが、振り返れば収穫への大きな影響はなかった。それは農業に携わる人々の不断の努力と工夫の結果であり、自然任せでは得られなかったものだ。

気候変動が進むなか、「水はあって当たり前」という前提が崩れる日が来るかもしれない。今夏の渇水は、その現実を突きつけた。

仙台放送

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