岩手県大船渡市では9月13日からの3連休に、ロープを使った救助技術を競う大会が開かれ、全国の消防士が集結しました。
東日本大震災と山林火災が発生した地で、消防士たちはさらなる技術の向上を誓いました。
崖や高層ビルなどで発生する事故や災害の現場で用いられる「ロープレスキュー」は、専門的な知識と機材を使って命を救う高度な救助技術です。
この「ロープレスキュー」の技術を競う全国大会が毎年大船渡市で開かれていて、2025年は9月13日から3日間開催されました。
(開会式選手宣誓)青森・ハチニティ 岩崎航司消防士
「全ては要救助者のために。ここ大船渡市から日本へさらなる救助技術の向上に貢献することを誓います」
2025年の大会には、全国各地から14チーム約120人の現役消防士が参加しました。
競技は市街地や山間部など3つのステージで行われ、それぞれに用意された異なる設定に応じて救助技術を競いました。
体調不良で動けなくなった人を地上からビルの屋上まで運ぶ競技では、8人の消防士が役割を分担し安全を確認しながら力を込めてロープを引きます。
それぞれの競技は救助が完了するまでの時間で得点が決まりますが、手順や安全性のほか運ばれる人を落ち着かせる声がけなども審査の対象となります。
沖縄・島尻消防ASTRO 親川鑑消防司令補
「要救助者ファーストでしっかり声かけながら、安全確実に救助しようということで、その辺はしっかりできたと思う」
大会を企画し運営しているのは、地元・大船渡市の消防職員約40人です。
12回目となる2025年は、特別な思いを胸に全国の消防士たちを迎えました。
実行委員長・大船渡消防署 村上浩朗消防司令補
「山火事の現場である綾里地区に入って、今の状態を知ってもらいたい」
今回は2024年より大会の日程が1日増やされ、新たに綾里地区が競技ステージとして加えられました。
2025年2月に発生し綾里地区などで大きな被害が出た山林火災は、平成以降国内最大規模となる中、鎮火までの約40日間に15の都道県から9000人以上の消防士が駆けつけ、消火に当たりました。
群馬・UPSTATE 灰野良消防司令補
「実際の現場を見て、山の焼け具合とか被災者の気持ちを考えると胸が苦しい」
千葉・GRIMP CHIBA 大上剛史消防司令補
「私は東日本大震災と今年の林野火災と2度、緊急消防援助隊として来て(今回は)災害ではなく復興に関わることにうれしく思う」
競技中、強めの雨が降る場面もありましたが、消防士たちは手を休めることなく作業を続けます。
青森・ハチニティ 鳥谷部隆之消防士長
「災害対応は天気を選べないので、実際の現場に近い場面で訓練できることに逆に感謝して頑張りたい」
実行委員長・大船渡消防署 村上浩朗消防司令補
「消防の世界では(ロープレスキューは)新しい方の技術なので、技術を共有して、さらなる救助技術の向上につなげたい」
東日本大震災と山林火災という2度の大災害が発生した大船渡市。
その被災地に集結した消防士たちは、救助技術を競いながら、いつ起きるかわからない次の災害などに備える意識を新たにしていました。