東京電力・福島第一原発の事故により、福島県楢葉町に出された避難指示が解除されてから2025年9月5日でちょうど10年。帰還した町民も様々な思いで復興の歩みを振り返る一日となった。

2025年9月5日 楢葉町役場
2025年9月5日 楢葉町役場
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10年…町に感じる変化

原発事故で町のほぼ全域に避難指示が出された楢葉町。2015年9月5日に避難指示が解除され、丸10年を迎えた。
帰還した町民の寂しさをやわらげようと、10年間ボランティアとして防災無線でメッセージを発信してきた青木ひろみさんは「帰還してすぐは街灯もなく、本当に真っ暗闇だった。だんだんサークルもできるようになってきて、みんなで楽しくしている」と話し、少しずつ賑やかさを取り戻してきたことを実感している。

青木ひろみさん
青木ひろみさん

楢葉町によると、町内に住んでいる人は、2025年7月末の時点で4469人。2015年10月時の321人から年々増え、町の人口に占める町内居住率は約7割となった。

帰還の歩みを伝える企画展

一方、楢葉町の交流施設「みんなの交流館ならはCANvas」でも10年の歩みを振り返る企画展が開かれている。
展示されているのは、10年前に制作された帰還した町民の思いなどをまとめたパネルなど約60点。中には、避難指示解除前の町民の言葉が書かれたものもあり、町に帰るという『決意』や帰れないという『苦悩』といった生の声が綴られている。

展示されたパネル
展示されたパネル

7年前に戻った80代の町民は「その人の立場によって、帰りたくても帰れない人もいる。私はどこに行っても楢葉の皆の顔が浮ぶ。どうしても楢葉に戻りたかった」と話した。

原風景の復活へ

新たな復興の歩みから10年。震災前に盛んだった農業も、かつての姿を取り戻そうとしている。
「楢葉の原風景って、多分この水田のこの色だと思う。この色をいつまでも残したいなっていう強い思いがあった」と話すのは、農家の鈴木恒男さん。

農家の鈴木恒男さん
農家の鈴木恒男さん

2017年に楢葉町へ戻り、翌年に農業を再開。帰還した当時2ヘクタールだった水田は、25ヘクタールまで広がった。
楢葉町によると、2025年の水稲の作付け面積は、震災前の約8割まで回復しているという。

福島県楢葉町で再開したコメ作り
福島県楢葉町で再開したコメ作り

一方課題は「後継者不足」。現在、楢葉町内のコメ農家の数は震災前の10分の1ほど。町内に住む人の年齢も20代から30代は全体の約2割となっている。鈴木さんは「やはり若い人たちが農業に従事してくれる、そういう魅力ある環境を作ることが楢葉の農業の維持に必要」と話した。

福島テレビ
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