プレスリリース配信元:公益財団法人交通事故総合分析センター
大阪市淀川区タクシーの追突事故(令和4年発生)事業用自動車事故調査報告書を公表
事業用自動車の重大事故の事故原因の調査・分析を行い、有識者からの提言により事故の再発防止を図ることを目的として設置された、国土交通省の外部委託組織である事業用自動車事故調査委員会(委員長:酒井一博)は、令和4年(2022年)12月2日に大阪市淀川区で発生したタクシーの追突事故に関する調査報告書を議決しましたので、公表いたします。
本事故は「重要調査対象事故」に該当し、事故原因が事業者の組織的・構造的な問題に起因する可能性があり、同種事故の多発が予測され、早期に有効な再発防止策が必要であることなどを勘案し、事故調査委員会による要因分析及び再発防止策の提言が必要であると判断されました。
【本事故について】
■事故概要
大阪市淀川区の府道41号線の三津屋跨線橋付近を十三駅方面に向けて空車により運行中、前を走る大型乗合バスに追突した。この事故により、タクシーの運転者が死亡し、大型乗合バスの運転者も軽傷を負った。
■事故原因
- 漫然運転による前方不注視とペダルの踏み間違い及び不適切なシートべルトの装着
- 指導・監督体制の不備による安全意識欠如
■再発防止策
〇適切な運行管理
- 事業者自らが法令遵守や安全最優先の原則を徹底すること。
- 視力の低下や視力障害などの疾患が、運転上大きな危険をはらんでいることを認識し、運転者が適切な運転状況にあることを確認すること。
〇適切な指導監督
- 高齢運転者については、身体的・心理的特性の変化が運転に多大な影響を与えることを認識させること。
- 運転者本人が意図しない装置の誤操作は、漫然運転の結果として発生することから、注意力の維持や集中力の低下を最低限に止めることが必要があることを強く指導すること。
- 日頃から運転者との良好なコミュニケーションの体制を維持し、状況を見極めながら、専門医への受診等を指導するなど適切な健康管理を行っていくこと。
- シートベルトの適切な装着の必要性と正しい装着方法について指導を徹底すること。
- 適性診断を定期的に受診させ、運転特性を理解させることにより、安全な運転方法を自ら考え、実践するよう指導すること。
本調査報告書は事業用自動車事故調査委員会によって事業用自動車事故及び事故に伴い発生した被害の原因を調査・分析し、事故の防止と被害の軽減に寄与することを目的として作成しており、事故の責任を問うために行われたものではありません。
今後も事業用自動車事故調査委員会は、交通事故の少ない社会を実現するために活動を続けてまいります。
高齢者運転タクシーの追突事故
漫然運転による前方不注視 前方を走行中のバスに追突
大阪市淀川区 令和4年12月2日 11時49分頃発生
事故概要
空車(状態)のタクシーが、大阪市淀川区の府道41号線を十三方面に向け走行中、前を走る乗合バスに追突。この事故により、タクシーの運転者が死亡し、大型乗合バスの運転者も軽傷を負った。事故の状況
走り慣れた道路での漫然運転による前方不注視に加えブレーキとアクセルペダル踏み間違い
タクシーが、大阪市淀川区の府道41号線の三津屋跨線橋付近を十三駅方面に向けて空車により運行中、前を走る大型乗合バスに追突した。
運転者は走り慣れた道路での漫然運転により、ブレーキ操作をせずアクセルペダルを踏み続け、減速することなく追突。
追突後もタクシーは、左に斜走し道路脇のマンションの外壁に衝突して停止した。この事故により、 タクシーの運転者が死亡し、 大型乗合バスの運転者も軽傷を負った。

状況図

大阪府道41号線 三津屋跨線橋付近(大阪市淀川区)
原因
1.漫然運転による前方不注視とペダルの踏み間違い及び不適切なシートべルトの装着- 普段から走り慣れた道路であり、漫然運転による自車前方の動静注視を怠った。漫然運転の結果、今、踏んでいるペダルがどちらかわからなくなる、あるいは、逆のペダルを踏んでいると思い込む等の心理的現象により踏み間違いが生じ、また、視力が免許基準を下回るほど低下していたにもかかわらず、免許の条件となっている眼鏡等を使用していなかったことから前方のバスを認知するのが遅れ、気持ちが混乱した結果、高齢者特有の行動コントロール機能の衰えにより、更なるペダルの踏み間違いを誘発した可能性が考えられる。なお、点呼時に免許条件(眼鏡等)を確認していたが、普段の運転時にも装着しているかは確認していなかった。
- シートベルトが緩んだ状態で固定されていたことで、シートベルトやエアバッグの効果が十分発揮されず、被害の程度が大きくなったものと推定される。

視力の違いによる見え方の違い
2.指導・監督体制の不備による安全意識欠如
- 高齢運転者を含む運転者の身体的、心理的特性の変化や、運転特性が運転に多大な影響を与えることに関しての必要な指導を実施していなかった。
- 免許の条件となっている眼鏡等の使用について、当該運転者の条件違反の運転を把握できていなかったことなど、安全運行のための取組みが不十分であったために、適切な指導・監督が実施されていなかった。
- シートベルトの不適切な着用等、安全運行の徹底に係る指導・監督が不十分だったことから、社内全般への安全運転意識が醸成されていなかった。
再発防止策
適切な運行管理- 事業者自らが法令遵守や安全最優先の原則を徹底するべく主導的に取組み、安全運転意識を社内へ共有、浸透させること。
- 視力の低下や視力障害などの疾患が、運転上大きな危険をはらんでいることを認識し、眼鏡等の装着が必要な運転者には、点呼時に眼鏡の所持を確認するだけでなく日頃よりドライブレコーダー映像を確認するなど、適切な運転状況にあることを確認すること。
適切な指導監督
- 高齢運転者については、身体的・心理的特性の変化が運転に多大な影響を与えることを認識させるべく、事故事例を紹介するなど理解促進の手法を工夫し、指導を実施すること。
- 運転者本人が意図しない装置の誤操作は、漫然運転の結果として発生することから、注意力の維持や集中力の低下を最低限に止めることが必要があることを強く指導すること。
- 日頃から運転者との良好なコミュニケーションの体制を維持し、状況を見極めながら、専門医への受診等を指導するなど適切な健康管理を行っていくこと。
- シートベルトの適切な装着は、事故発生時の身体への被害を軽減するために必須な装備であることを強く啓発するとともに、正しい装着方法について指導を徹底すること。
- 適性診断を定期的に受診させ、運転特性を理解させることにより、安全な運転方法を自ら考え、実践するよう指導すること。
事業用自動車事故調査委員会について
「事業用自動車事故調査委員会」は、平成26年 (2014年) 6月24日に設立された事業用自動車が関わる重大事故について、その原因を分析し、再発防止策を提言するための事故調査機関。
概要
- 人間工学、労働科学、健康医学、自動車工学、交通工学、道路工学などの専門知識を有する者で構成
- 毎年4回開催し、報告書について審議

【委員会の様子】

【調査事例】軽井沢スキーバス事故※ 国土交通省ウェブサイトから

【公表の状況】特別重要調査対象事故:19件 重要調査対象事故:47件
経緯
- 社会的影響の大きな事業用自動車の重大事故については、事故の背景にある組織的・構造的問題の更なる解明を図るなど、より高度かつ複合的な事故要因の調査分析と、客観性のあるより質の高い再発防止策の提言を得ることが求められている。
- 国土交通省は平成26年(2014年)6月、(公財)交通事故総合分析センターを事務局として、各分野の専門家から構成される「事業用自動車事故調査委員会」を設置し、事業用自動車の重大事故について事故要因の調査分析を行っている。
事故調査の流れ

事業用自動車事故調査委員会委員名簿
- 酒井 一博
公益財団法人大原記念労働科学研究所主管研究員
- 今井 猛嘉
法政大学法科大学院 教授、弁護士
- 小田切 優子
東京医科大学医学部医学科公衆衛生学分野 講師
- 久保田 尚
埼玉大学大学院 理工学研究科 名誉教授、日本大学 客員教授
- 首藤 由紀
株式会社社会安全研究所代表取締役 所長
- 吉田 裕
関西大学社会安全学部 教授
- 廣瀬 敏也
芝浦工業大学工学部 教授
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