持続可能な書店経営を目指して、ITを活用した「シェア型書店」という選択に迫りました。
誰でも本屋さんを始めることができる。
いま「シェア型書店」という、これまでと違ったサービスを展開する書店が増えています。
店が棚を貸し出し、「棚主」がそこに好きな本を並べて販売する“新たな書店の形”です。
棚主・奥田麻菜美さん:
手に取ってくださった方の世界が広がるといいな、と思って自分で作った本を置いています。
棚主・大谷明子さん:
(棚には)来た方が売れます。ちょこちょこ配置を変えたり、宣伝をしないと忘れ去られてしまうので。
活字離れなどで全国的に書店の数は減少する一方、2008年をピークに倒産件数には歯止めがかかりつつあります。
そこには、単に本を売るだけではなくなった、書店のさまざまな工夫が。
ALL REVIEWS株式会社・由井緑郎社長:
棚を人に貸すっていう発想自体は結構古くからあった。ITと本屋さんを掛け合わせるとどうなるのか。
目指すのは「街の書店」をつぶさないことです。
世界一の本の街として知られる東京・神保町。
どこか懐かしい古書店が並ぶ通りに、新しい書店経営のモデルを示した店舗があります。
シェア型書店「PASSAGE by ALL REVIEWS」。
パリのアーケード街「パサージュ」をイメージしたクラシックな店内にはシャンデリアが並び、壁一面の本棚には、実際のパリの通りの名前が付けられています。
ALL REVIEWS・由井緑郎社長:
全国の古書店さんの成りというか、最上位クラスが「神保町でお店を出すこと」。ここに労せず入会金と月会費を払えば、この神保町の一等地で商売ができるのは非常に魅力的。
ここでは月額1600円から棚を借り、誰でも本屋になることができます。
自分の趣味で棚を埋めてもよし、普通の書店のように新刊書を扱ってもよし。
本好きの人たちの熱い思いが詰まったユニークな棚が並びます。
来店客からは「それぞれの棚ごとに特色が違っていて、多種多様なものを見られて楽しい」「こういうふうに誰かに選ばれた本が飾ってあると、いいなって思う」といった声が聞かれました。
開店から約3年。
店舗数を増やし、800人ほどの棚主がいるパサージュは、世界最大級の「シェア型書店」に成長しました。
その次なる挑戦を後押しするのが、独自で開発した棚貸しシステム「SOLIDA」です。
このシステムは、棚ごとの在庫や売り上げ管理などの煩雑な手作業を自動化。
さらに、街の書店が気軽にシェア型書店を始められるように、システムの提供も行っています。
新しくシェア型書店をオープンする大網さんご夫妻。
SOLIDAを使い、準備を進めてきました。
シェアギャラリーUPPERFIELD・大網薫さん:
棚主が来て、店側もこういうふうにコミュニケーションするのは想像と違っていて楽しそう。
ALL REVIEWS・由井緑郎社長:
全部自動化しちゃうと面白くない。対面で本を通しながら話すとか、物を通しながらコミュニケーションするのが1番重要になるんじゃないかな。
シェアギャラリーUPPERFIELD・大網剛さん:
書店の新しい形っていうのをソリダ(パサージュ)は示してくれた。(好きなものを通して)出会いがあるからやっぱりここに来たいと思ってもらえるような場所になれたらいいなと。
パサージュでは今後もITを使い、書店経営の可能性を広げていくことを目指しています。
ALL REVIEWS・由井緑郎社長:
できるだけ書店をつぶさないことっていうのが出版社をつぶさないことですし、文化を守ることにもつながるし。なので我々はサプライチェーンとしてシステム貸しをガンガンやっていきたいし、僕らができる唯一の書店を盛り上げるためのすべだと思ってやっています。