全国的に、コメの買取価格の上昇が発表される中、県内でもコメの収穫が始まりました。今、コメの価格は、生産者と消費者の狭間で揺れ動いています。
広島市安芸区阿戸地区では稲刈りが始まっています。
コメ農家の宮脇政雄さん。
マツダスタジアムおよそ3.5個分の水田で、コメを作っています。
刈り取っているのは、4月の上旬に作付けした「コシヒカリ」です。
【コメ農家・宮脇政雄さん】
Q:今年の新米 味はどうですか?
「味は間違いない」
今年の収穫量の見込みは、およそ75トン。
宮脇さんは、収穫したコメをJAなど、集荷業者を通さず、インターネットを使って直接、消費者に販売しています。
【コメ農家・宮脇政雄さん】
「直接最終ユーザーに(30キロ)1万8000円で届けていますので、問い合わせがすごいです。コシヒカリだけで200何件ですかね」
宮脇さんが管理する田んぼは、200枚以上になります。
4月に始まった田植えは、6月、ようやく終わります。
田植えが全て終わった6月の終わり。観測史上、最も早く、梅雨明けが訪れました。
【コメ農家・宮脇政雄さん】
「これはコシヒカリです」
Q:植えた時期は?
「これが4月12日で、もう穂がここまで出ています」
Q:順調ですか?
「順調です」
稲から穂が出て、モミが育っていく期間、コメにとって、水は欠かせません」
【コメ農家・宮脇政雄さん】
「7月10日くらいから、7月10日から8月の頭までは、この田んぼでは水が欲しい」
そして、今年は、こんなリスクも予想されていました。
【コメ農家・宮脇政雄さん】
「(冬場に)雪もそんなに降っていないですから、越冬カメムシが相当いると思う。200枚くらい田んぼがあるが、極端な被害は5枚の田んぼで、穂がついているが中に実が入っていない。もみ殻しかない」
Q:今年はさらに厳しくなる?
「かもしれません」
7月になって、その予想は、現実になりました。
育ち始めた稲穂についたカメムシ。コメにとって大敵です。
【コメ農家・宮脇政雄さん】
「実際もう1つの穂に群がっていました。なので、先週ここはカメムシの防除はしています。他の田んぼも(防除を)しようと思ったが、ちょっと暑すぎるので」
長すぎる夏がもたらした今年の猛暑が、農作業の妨げになっていました。
【コメ農家・宮脇政雄さん】
「草刈りもしたいけど、草刈りも朝晩しかできない。昼間はもう隠れておかないと空調服を着てもだめです」
除草作業や肥料の散布など農作業が十分に出来なければ、コメの収穫量に影響してしまいます。
8月を迎える頃になっても、全国的に雨量が少なく、気温も平年より3℃以上高くなっている地域が、多くあります。
去年、同様、高温による被害が心配されます。
【コメ農家・宮脇政雄さん】
「稲刈りをしてみないと分からないです。もうあと1か月後には収穫になります」
8月末、宮脇さんの田んぼでは、稲刈りが始まりました。
県内では、早いところでは、8月の下旬から、稲刈りが始まります。
【コメ農家・宮脇政雄さん】
「それなりに量はあるのですが、品質が暑さで白い(白濁する)コメがちょっと多いうちは色彩選別機があるので、白い米もはじいて比較的良質なコメだけをお客に渡していますが、その分量は減ります。年々年々コシヒカリは栽培が(気候の影響で)厳しくなっていきそうです」
今年、県内のJAは、コメの確保に向けて、農家からコメを買い取る際に、前払いで支払う概算金を引き上げました。
コシヒカリの1等米が、30キロあたり1万3千円。
去年に比べて、50%以上アップしました。
JAが農家に支払う概算金は、その年のコメの流通価格の目安となります。
概算金のアップは、消費者にとってはコメの価格上昇につながる問題ですが、物価高騰でコメ作りにかかるコストが上昇する中、今回の価格決定は、農業の将来を見据えた判断だと言います。
この価格について、かつて宮脇さんは・・。
【コメ農家・宮脇政雄さん】
「頑張っているんじゃないですか、やっと1万3000円で(生産者が)赤字にならない金額じゃないですか」
一方、消費者にとっては、新米の小売価格が、気になりますが・・。
【スーパーたかもり・伊木英人 副社長】
「5キロで4500円から5000円くらいになるのではないかという読みですけど、(コメを)刈り取ってみないと分からないという所もあるし、そこでどうなるかです。去年の今頃は5キロで2980円で売っていたような記憶があります」
インターネットで、直接、消費者にコメを販売する宮脇さんは、コメの買い取り価格について、こう話していました。
【コメ農家・宮脇政雄さん】
「僕は僕で農協や米店がいくらかは関係なしに、自分があと30年(コメを)作れる価格を見極めて販売するので、それで買ってくれるお客というか僕のファンがどれだけ増えるのか」
収穫の季節を迎えて、今、コメの価格は、生産者と消費者の狭間で揺れ動いています。
【コメ農家・宮脇政雄さん】
「1万3000円でやっと持続可能な価格なのかな。今から多分(農業を)リタイアする人が増える事は仕方がないので、新規参入するにはもう少し(買い取り価格が)上がらないと新規で始めようと思える価格にはちょっと遠いのかなと思います」
ここ数年、物価の高騰に対応してきた小売店側は、コメ価格の上昇に、理解を示します。
【スーパーたかもり・伊木英人 副社長】
「他の食品は(価格が)2倍3倍になっているものもたくさんあるので、それを思えばコメが今まで上がっていなかっただけ。それは農家が全部負担していたのではないかという気はします」
しかし、一方で、コメの価格上昇に対して、消費者と向き合う小売店は、様々な事情と戸惑いを抱えています。
【スーパーたかもり・伊木英人 副社長】
「我々小売店で言うと他店との値段のバランスも出てくるので、原価が上がっても我慢して安く売らなければいけないという所も出てくるし、色々な要素があるので、まだ全然(価格がどうなるか)読めないというのが今の段階」
これから、全国的にコメの収穫はピークを迎えます。
生産者と消費者、双方にとって大切な実りの秋を迎えようとしています。