私たちの生活や仕事に浸透しつつあるAI。このAIの力を使って戦時中の写真を映像化することの是非を考えます。
最近、SNS上で戦時中の写真を映像化したショート動画を目にしたことはありませんか？
男性（10代）：
あります（Q.何で見た？）TikTokですね
女性（10代）：
あります（Q.何で見た？）インスタとかです
特攻隊について描いた映画の主題歌に乗せて、AIを使い戦時中の写真を映像化したこの動画。
いったい誰が、何のために作っているのでしょうか？
佐賀県の映像制作会社・ドリームピクチャー。
SNSでよく目にする特攻隊の写真をカラーで映像化した動画を手がけているのが、この会社で代表を務める荒木魁仁さん（26）です。
ドリームピクチャー・荒木魁仁 代表：
もう二度と見られないその人の姿をAIの力によってもう一度動いている姿を見ることができる。すごく感慨深いものだと思う
こうした動画を制作しようと思い描いたきっかけは、幼い頃に亡くなった祖父母の存在でした。
ドリームピクチャー・荒木魁仁 代表：
私の記憶がない頃に他界した祖父母なので、動いている映像も家には残っておらず、映像で見てみたいと思ってAIの力で映像化した。父方の祖父母だったが、父に映像化したものを見せたらすごく喜んでくれてすごく良いことをしたなと思った
そして、2024年8月から事業化し、出来上がった動画をSNSに掲載すると多くの反響が寄せられました。
SNS上のコメント：
こういうAIの使い方はすばらしいと思います
SNS上のコメント：
全員笑顔で映像化してることに温かさを感じます
SNS上のコメント：
こんな若い人がしななければならない戦争はあってはならない
実際、道行く人に動画を見てもらうと…
男性（10代）：
こういう時の写真は残っていても実際に会った人は少ない。そういう人が実際に動いているのはたとえ作り物だとしても見れるのは感動的なのかな（と思う）
女性（20代）：
かたいイメージだったが、自分たちと同じようにこうやって笑っているのはちょっと身近に感じます
高校生平和大使・水野可麗さん：
動いている映像、戦禍の時のものを見たことがないので新鮮な気持ちになるし、私自身も、多分みなさんもそうだと思うがすごくリアルに映ってくる。自分事としてとらえやすい
動画は遺族や親族からの依頼を受けて制作しているものがほとんどで、特徴やクセなどを聞き取り修正を重ねながら仕上げています。
ドリームピクチャー・荒木魁仁 代表：
印象に残っているのは、亡くなった家族にもう一度会えた気がしたという言葉をもらった時は本当に胸が熱くなった。涙が止まらなかった、家族全員で何度も見返したといった声もあり、依頼者にとって映像が単なる作品ではなく心の支えになっていることを実感した
一方で「戦争を美化している」という声や「そもそもAIが写真を映像化するという、いわゆるフィクションで感動を生もうとするのはいかがなものか」という否定的な意見があるのも事実です。
高校生平和大使（長崎派遣）・山下耀生さん：
AIで作った映像だと違和感が残ってしまうので、見ていて言葉に表すことが難しいがちょっとためらう。見るのにためらいの気持ちを抱く
高校生平和大使（長崎派遣）・大塚ほなみさん：
笑顔で出向かれた人もいると思うが歴史上、そういった見方は私としてはタブーかなと思う
静岡平和資料センター・田中文雄 センター長：
コンピューターやAIで何か仕掛けをしてやるのは反対。戦争を止める側からすると意味はないと思うし、使われ方によっては煽るのではないかと怖い。基本的にフェイクだと思う。動かないものを動かすことが
また、法律的な観点からも懸念が残っています。
松田綜合法律事務所・森田岳人 弁護士：
勝手に写真を複製したり改変したりといった行為が著作権法に違反する可能性がある。（撮影者の）死後70年は遺族が著作権を持っているので、本当はいるのかもしれないが（著作権を）持っている人もその意識・認識がないことが多い、それだけ（写真が）古いと。なので、事実上問題になることはないと思う。ただ、著作権がなくなっているかというと、どこかに誰かが承継されている可能性がある
それでも荒木さんは批判や懸念を受け止めつつ、戦争を知る世代が少なくなった現代だからこそ意味のあることではないかと問いかけます。
ドリームピクチャー・荒木魁仁 代表：
戦争は身近なものであると、ただ単に過去に生きていた人ではなく身近にいそうなお兄ちゃんたちが特攻に行って亡くなったと、より感じてもらえるのではないかと思っている。戦争はもう二度と繰り返してはいけない、特攻など悲しい過去は繰り返してはいけないという気持ち・思いもあって、若い世代にも1人でも多く持ってもらいたいと活動している
終戦から80年。
戦争を体験した人の高齢化が進む中、最近ではAIを使って体験者の生の声を伝える対話型語り部システムの導入も始まっています。
戦争の記憶をどのようにして後世につないでいくのか？
何が正解で何が不正解なのか…その模索はこれからも続きます。
