北アルプスの立山から薬師岳を目指す「ダイヤモンドルート」の縦走をシリーズでお伝えしています。
夏山の景色、そして専門家の解説もあわせて、立山連峰の地形・自然の魅力をお伝えします。
シリーズ2回目の今回は「雲上の楽園」五色ヶ原から越中沢岳を巡ります。
北アルプス・立山と薬師岳をつなぐ通称「ダイヤモンドルート」。変化に富んだ地形を体感できるコースです。
*立山カルデラ砂防博物館 飯田肇さん
「『地形』、珍しい地形、氷河のつくった地形、火山のつくった地形、水のつくった地形、そういう典型的なものをたっぷり見ることができる大変貴重なコースだと思いますね」
太古からの自然の歴史、悠久のときに思いを巡らせながら歩きます。
北アルプス・五色ヶ原の夏。
「花の百名山」にも選ばれていて、さまざまな高山植物が可憐な花を咲かせます。
立山室堂からおよそ5時間半でたどり着く「雲上の楽園」です。
*五色ヶ原山荘 志鷹祐亨さん
「やっぱり花がきれいですね。お花畑」
「たまに、天国だ~って言って入ってこられる人もいる。きれいなところだと思います」
五色ヶ原は、火山の噴火で流れ出た溶岩が形づくりました。
いまからおよそ10万年前のことです。
なだらかな溶岩台地には、泥炭層にできる小さな水たまり「池塘」も点在します。
湿原特有の植物や昆虫も生息する天空のオアシスです。
一方で、周辺の登山道には変化も。
*五色ヶ原山荘 志鷹祐亨さん
「だいぶ、昔から見たら雪の量が減ってますよね」
五色ヶ原へ向かう登山道、鬼岳の東側の雪渓が、近年小さくなっているといいます。
「けっこう大きな雪渓で2つの雪渓がつながるような感じだったが今はなんか寂しいくらいに雪減ってきましたね」
「結局雪が消えるのが早くなったら危険なのでハシゴを付けてもらって。けっこう崩れやすい場所だったから。安全確保のために」
環境が変化する中、登山客の安全を思い続ける山小屋です。
五色ヶ原山荘を後に、2日目は鳶山、越中沢岳を経て、スゴ乗越小屋を目指します。
*リポート
「いま正面には、きょうこれから進む登山道、そして越中沢岳が見えてきました。そしてその奥に薬師岳です。まだまだ遠いですね」
越中沢岳に向け、標高差およそ250メートルを下り、そして比較的なだらかな稜線を登り返します。
その斜面は…。
*リポート
「越中沢岳の登山道は、このように岩くずの斜面が広がっています。これは、日本海側、海から吹き付ける季節風によって岩の間に入っている水が融けたり凍ったりを繰り返していく。そうして岩が砕かれて、ばらばらになっていくというわけなんだそうです」
このルートはさまざまな「水の力」が感じられます。
*立山カルデラ砂防博物館 飯田肇さん
「このルートは特にスゴに行く道は、左側に黒部川の大峡谷、これを見ながら、絶えず黒部川を眺めながらたどるような道なんですね。それで黒部川はご存じのように日本一のV字峡谷。水が削った、水の力がよくわかる、そういう峡谷です。それから黒部川の源流の方も見渡すことができるようになって水の力を感じられる。水の山を行く、そういうルートになると思います」
(五色ヶ原から3時間あまり。越中沢岳・標高2591.4メートル)
*リポート
「着きました!越中沢岳の頂上です。だいぶ黒部川の源流域の山々ですとか、薬師岳も少し近づいて見えるようになってきました」
「黒部の源流に孤高を誇る山」とも呼ばれる越中沢岳です。
ここからスゴ乗越小屋までは標高差300メートルあまり、さらに3時間。
足元の不安定な登山道や急斜面のアップダウンを繰り返しながら樹林帯へ。
*リポート
「着いた着いた!到着しました。スゴ乗越小屋です。いや~長かった。だいぶ北アルプスの奥深くまでやってきた気がします。長かった・・・」
(スゴ乗越小屋・2270メートル)
変化に富んだ登山道が続く北アルプスの「ダイヤモンドルート」。
次回は最後の目的地、薬師岳へ。「再び氷河の世界へ」と歩みを進めます。