「みなさんこんにちは、前澤です」
SNSの広告動画でファッション通販大手「ZOZO)」の創業者で実業家の前澤友作氏とみられる人物が話し始める。
“なりすまし”広告に注意呼びかけ
そして、この人物は「このチャンスを逃したら次はありません。今すぐ下のリンクをクリックして」「参加費無料ですので。皆さまのご参加をお待ちおります」などと続けるが、これは前澤氏に成りすました偽広告だ。

前澤氏は7日、自身の公式Xにこうした偽広告を動画付きで投稿し、「すべて個人情報や金銭を騙し取ろうとする極めて悪質な詐欺です」「絶対にクリックしたり、LINE登録しないでください」と注意を呼びかけた。

SNSで被害報告が相次ぐ偽広告は社会問題化となっている。
著名人になりすました偽広告を入り口とした“投資詐欺”も以前からみられた手口だが、日々進化するAI技術を悪用し手口が巧妙化している。
巧妙な“隠し”の一方でおかしな日本語も
実際のインタビュー映像を元に、AIで生成した音声を合成して作ったとみられる偽の広告動画では、「2025年にこれら3つの株を買えば、二度と働く必要がなくなるかもしれません」などという音声が付けられていて、口元は吹き出しで巧妙に隠されている。

しかし、ほかの動画を見ると音声と口の動きがズレているものや、自らの名前を「ともさくです」と言い間違えるなど、日本語がおかしい点も多く見られた。

さらに画面上の説明文には、韓国語や中国語が確認できるなど、不思議な点も。

専門家はこうした偽広告は海外の犯罪集団が作ったものではないかと指摘する。
専門家は“中国系”の可能性を指摘
犯罪ジャーナリストの多田文明氏は「今回の文字の間違いなどを見ると中国系の詐欺グループの動画が多い印象」と指摘。

その上で「今までの広告は文字だけだったのに加え、動画になると本人だと信じてしまって騙される人が多いと思う」と述べた。
投資家テスタ氏は“進化”に懸念
そして、個人投資家で、総利益100億円を達成したテスタ氏も、偽広告に自身の動画を悪用された被害者の1人だ。「本当、悲しみも怒りもすごい大きくて、それが広告の審査を通ってしまっている現状というのをすごい驚いてみています」と話す。

テスタ氏の動画を悪用しAIで生成されたとみられる偽広告では、「すべてのイベントへの参加は無料です。参加者は1000名限定で、現在約200席の空きがあります」などという音声が付けられていた。

しかし、話す内容をよく聞くと、前澤氏の名を騙った偽広告と、日本語が不自然な部分を含めてほぼ同じ文言が使われていたのだ。
例えば、「私が独自に開発した“ひくリスク(低リスク)”の譲渡可能金利取引システムを皆さんと共有したいと思います」などだ。

しかし、こうした内容に興味を持ってアクセスしてしまうと、LINEでのやりとりに誘導され、金を振り込むよう要求され被害に遭うケースが多いという。
テスタ氏は「この1年を見ても、最初は画像が粗かったりカクカクだったりしていたのが、どんどん滑らかになってきているし、声も最初は僕じゃなかったのが僕の声を使って合成させてという風になっている」と話す。
テスタ氏は1年以上前から偽広告被害への注意喚起を行っているが、以前は画像だった偽広告が現在は動画に変化するなど、進化するAI技術を使った手口に頭を悩ませている。

テスタ氏「あと半年、1年したら本当に見分けが付かなくなると思うので、今のうちに気をつけてほしい」と警鐘を鳴らしている。
前澤氏もイット!の取材に対し、「詐欺被害に遭われる方がこれ以上増えないことを心より祈っております。政府に対しても、こうした事業者に対する何らかの規制の必要性を問いたいと思います」 と危機感を訴えた。

(8月8日イット!放送より)