被爆80年を機に若い世代を巻き込んだ平和への取組みも進んでいます。
ある一人の男性の思いを通して被爆地・広島のこれからの役割を考えます。
【広島平和文化センター・谷史郎副理事長】
「皆さんは平和のシンボルであるヒロシマを代表する子どもたちです。ぜひ自分たちの言葉で全国の皆さんに平和への思いを伝えていただきたい」
子供たちに訴えかけるのは、広島平和文化センターの副理事長谷史郎さんです。
被爆80年を契機に広島の役割を見つめなおし、様々な取組みを進めています。
その1つとして新たに始めたのが、「ユース・ピース・ボランティア」。
8月6日に合わせて行われる平和学習のため、全国から広島を訪れる若者たちをサポートする取り組みです。
県の内外から333人が参加しました。
【参加者】
「木造家屋が主流の当時としては珍しい鉄筋コンクリートのモダンな建物でした」
「一人だけ生き残っとる」
「たまたま地下に書類を取りに降りていた一人を除いてその後全員死亡だって」
谷さんは広島を訪れ、実際に見て感じることを大切にしています。
【谷史郎副理事長】
「(平和学習は)原爆とか戦争のリアリティーを感じることが一番大事な出発点だと思っています。本当に原爆が落ちたんだなと知ることになりまして、広島は平和学習の拠点として、これからぜひ役割を果たしていきたいと思っています」
谷さんは2019年まで2年間広島市の副市長を務め、平和行政などを担当していました。
在任中、平和のために広島が果たすべき役割ややるべきことは、まだたくさんあると痛感しました。
「やはり2年っていうのはですね、長くない期間でしたので」
やり残したこと。
それは、次世代を担う若者たちをどう巻き込んで一緒に平和を考えていくのかということです。
「ユース・ピース・ボランティア」が目指すのは、中学生から大学生、社会人まで一貫した活動を通じた平和リーダーの育成です。
あの日、何があったのか。
【被爆者・笠岡貞江さん】
「川は死体でいっぱいだった」
その後、被爆者がどう生きたのか。
次の世代を担う若者が体験と思いを受け止めます。
【被爆者・笠岡貞江さん】
「私は心にあることを皆さんに伝える。そしたら皆さんが心で受けて、それを自分の中で消化して、考えて、他の人に伝えてくれる。心で聞いてください」
【参加者】「We’re PeaceーLoving Citizens!(私たちは平和を愛する市民です)」
世界中に平和を発信できるよう語学力を高めたり、核軍縮や国際関係論といった専門知識を学ぶことも想定しています。
今月は全国から集まった若者が、「戦争や平和」をテーマに行う議論をリードします。
【参加者】
「戦争のことや社会的なこと政治とか宗教とか調べて、何か意見を言えるように知見を広めておきたい」
「自分の意見が言いたいとき、この言葉じゃないなという時があったので、本を読んでボキャブラリーを増やして自分の意見を正しく伝えたい」
若い世代が大人になっても平和に関心を持ち続け様々な分野で活躍することは、被爆者の高齢化が進む中、極めて重要になると谷さんは考えています。
【谷史郎副理事長】
「(子供たちは)非常に成長したと思います。自分の言葉で自分の気持ちを表したり、人のことに気を遣うとか、色んなことを子供たち、身に着けてくれたんじゃないかと思います。すごく頼もしく思ってます」
毎日の通勤で平和公園を通る谷さん。
必ず、原爆慰霊碑に手を合わせるといいます。
【谷史郎副理事長】
「慰霊碑は亡くなった方との対話の場でもあると思うので、(原爆犠牲者の)皆さんと一緒に、たぶんこの仕事をしてるんじゃないかなと思ってまして、平和の仕事自体ですね」
いよいよ研修の成果を試す時がきました。
『第1回全国平和学習の集い』(8月5日)
3日間でおよそ2000人が参加します。
【参加者】
「お互いに尊重し合う世界や社会になっていったら、戦争がなくなったり、いじめがなくなったりできると思いました」
「原爆の経験があるからこそ、核の廃絶を訴えることができたということから、経験するまたは経験を理解することは平和へつながる一歩だと思いました」
「誰にもあんな思いをさせてはいけない」。
その被爆者の思い、ヒロシマの心を伝える力がここにはあります。
【平和文化センター・谷史郎副理事長】
「次の世代をつくっていくのは、若い「平和のリーダー」の皆さんなので、ぜひ平和な社会をつくっていってもらいたい」
子供たち一人一人の心に平和への思いを深く落とし込んでいく。
それは平和の種を蒔くことになると信じています。