今回の仙台市長選挙は、主要政党が郡氏を支える「相乗り」の構図となり、対立候補も明確にならないまま、争点が見えにくい選挙戦だったとの声も聞かれました。専門家は「受け皿の不在」に警鐘を鳴らしています。
政治学が専門の拓殖大学・河村和徳教授は、今回の市長選について「現状の市政に不満を持つ人の受け皿がなかった」と指摘します。
拓殖大学 河村和徳教授
「現状の市政が不満で、新人をフッと見た時に期待できるかなというのはあった。政党の候補者擁立能力が下がっている。国会議員の候補者擁立能力が下がっている。受け皿がいないという印象に直結している」
郡氏は2017年、自民・公明が支持した候補を破って初当選。「野党系市長」としてスタートしましたが、次第に自公との関係性を強めました。
今回の選挙戦では自民・公明・立憲民主など、国政与野党の幅広い支援を受けて、盤石の戦いぶりを見せました。結果として、主要政党による明確な「対立候補」の擁立は見られませんでした。
拓殖大学 河村和徳教授
「監視が効かなくなっていく。野党は監視機能が問われるが、総与党化してしまうと、与野党対決は緊張を持てなくなる。そのあたりが課題」
河村教授は今回の市長選挙にも最近の国政選挙と似た傾向が見られると話します。
拓殖大学 河村和徳教授
「若い人たちが既成の政党、自民党や立憲民主党にノーと言い始めている。仙台市長選挙と対比しても同じことが言えて、与野党相乗りだけど、既成政党に支えられた郡市政に対してちょっと不満を持っている層がいるという見方ができる」
実際、仙台放送が行った出口調査では、自民・立憲支持層の多くが郡市長に投票した一方、国民民主党の支持層は郡氏と松本氏で拮抗。参政党の支持層の多くは松本氏に票を投じました。
広い政党支持を得た郡氏に対しても、「既成政党に乗っている」ことへの反発や、政策論争の物足りなさを感じている層が一定数存在していたことがわかります。
拓殖大学 河村和徳教授
「自民党の重鎮も、仙台の藤本副市長もなかなか変わらないですけど、変わらないということは実はネットワークが狭くなっている。知恵を受け入れるため仕掛けが、仙台市政の中で鍵になっている」
そして、8月4日午後、当選証書を受け取った郡氏。市長としてこれからの抱負を語りました。
仙台市 郡市長
「4人で戦う中で活発ないろいろな議論がされたのだろうと思いますけれど、その中でも20万票を超える票数をいただいたというのは大きなものだと受け止めている。一党一派に寄っていくということではなく、いろいろな会派の意見も真摯に受け止めさせていただきながら施策を練り上げてもいるところ。私としてはこれまでも、これからも変わらない対応になろうかと思います」