正解はどっち!?上下逆のドリンクが話題
飲み物を購入するとき、どの商品を選ぶかに影響する要素の一つがパッケージ。味や栄養素なども大切だが、デザインが面白かったり目立っていたりすると、ついつい手に取りたくなるものだ。
そして今回、思わず二度見してしまいそうなラベルが貼られた飲料が登場した。それがこちらだ。

ペットボトルのラベルには文字などが上下逆に描かれていて、飲み口側を下に向けなければ商品名などがよく分からないようになっている。
印刷を間違えたかのようにも見えるが、一番下の「果汁10%未満」などの記載は正しく読めるため、意図的なデザインであることがわかる。
このラベルは、日本コカ・コーラが扱う、ミニッツメイドシリーズの新商品「ごろっと果実」のピーチとパインに採用されたもので、2020年9月から関東の一部店舗で限定発売されているという。

コンビニなどで他の製品が並ぶ中、一つだけ逆向きのラベルはインパクトがあったようで、Twitterユーザーからは驚きとともに好意的な反応が相次いだ。
コカ・コーラ ミニッツメイド ごろっと果実 広口キャップ
— お茶お茶 (@OCHA_OCHA_caps2) September 21, 2020
ラベルがさかさま! pic.twitter.com/1HUAJCaa5H
コカ・
コーラ ミニッツメイド ごろっと果実 広口キャップ ラベルがさかさま!
お茶お茶(@OCHA_OCHA_caps2)さん
ミニッツメイドの新商品。
— ツカダハヤト/Tsukada Hayato (@tsukada_hayato) September 23, 2020
パッケージデザインが逆さま!!
パッケージを見ようとするとざく切り果実の沈殿防止になる!! pic.twitter.com/dxyHNA2m8V
ミニッツメイドの新商品。
パッケージデザインが逆さま!!
パッケージを見ようとするとざく切り果実の沈殿防止になる!!
ツカダハヤト/Tsukada Hayato(@tsukada_hayato)さん
奇抜なパッケージはこれまでもあったが、上下逆はかなり攻めた印象だ。会社としても冒険したと思われるが、どんな経緯で開発されたのだろう。
また、ネットでは上下逆で陳列に困るのではないか?という意見もあったが、どう並べるのが正解なのだろうか。気になることを、日本コカ・コーラの開発チームに聞いてみた。
開発過程での課題を逆手に
ーー上下逆のラベルを採用した理由を教えて。
本製品には新技術を採用し、果実の食感をしっかりと楽しんでいただけるよう、1cm角の「ザク切り果実」が入っています。ここまで大きな果肉の粒を入れる製品は今まで無かったため、製造機械の検証と併行して、パッケージの開発も行いました。
ですが、今までに無い大きな果実の粒を入れたため、軽く振った程度では粒が浮き上がりづらいことがわかりました。そこで開発チームで話し合い、逆手に取ったデザインにして特徴をユニークに伝達し、美味しさを味わってもらおうとしました。
ーーアイデアはどんな経緯で思いついた?
私たちは多くの製品がある中、新しい価値をどうお届けできるか、手に取った瞬間からワクワクしてもらえるものを作れるかを常に考えています。ザク切り果実が入っていることを、売り場で「あれ!?」というポジティブな驚きに変えられるかを考え続けた結果、逆向きデザインに行きつきました。チーム全員がこれならいける!と思いました。
ーー開発期間はどのくらい?
固形物入り飲料の構想としては、2013年にはパイロットラインの導入が始まっているので、8年ほど前からスタートしています。プロトタイプの製造テストを行い、実際の製造ラインへの投資を行い、安定的に製造ができるようになるまでトライ&エラーを繰り返してきました。
パッケージの開発期間は、6か月程度です。当初は「正統派」のデザインもありましたが、お店での見え方やお客様のニーズを深堀りして、逆向きデザインの採用となりました。
コンセプトが分かると好意的な反応に
ーー奇抜なラベルだが社内の受け止めは?
開発段階の社内調査でも、好き嫌いがはっきり分かれました。「斬新で好き、パッと目について面白い、果物の粒が入っているから逆にしてから飲むんだね!」との反応がある反面、「わかりにくく、これでは売れないのでは?」という反対意見もありました。
ただ、反対意見の人も、果物の粒を浮き上がらせるために逆にしてから飲むというコンセプトを伝えると、ポジティブな印象に変わる人が多かったことと、最初からポジティブな反応を示した人は強い喜びを感じていたので、このコンセプトで行くべきという確信がありました。

ーーデザインでこだわったところは?
逆向きの他にも、飲用時に「楽しくなる」「ふと癒される」という方向性のデザインも作りました。結果的には「楽しいパイン」「癒しのピーチ」というイメージでの落とし込みとなりましたが、製品の世界観が広がったと思います。
また、透明なパッケージは店頭で暗く見えてしまいがちなのですが、本製品だと「パイン」は果物の粒が見えやすい透明、「ピーチ」は白色を基調としたデザインとすることで、売り場での目立ち度も担保できたと思います。ロゴをよく見ると「ごろっと」の「ご」が逆向き回転を想像させたり、「さかさま」という言葉がさかさまに書かれるなど、楽しい遊び心も詰まっています。
ーー当初のデザインとはどう変わった?
当初のデザインは「果物の粒の美味しさと高級感」を表現した、正統派のものでした。社内調査でも評価の高い美しいデザインだったのですが、長い開発期間の中で売り場やお客さまについて深く研究していく中で、「いかに新しさ、驚きを提供できるか」という視点での開発が進むことになり、逆向きデザインにたどり着きました。

原則として、キャップを上にする陳列をご案内しています
ーードリンク自体の特徴は?
一番の特徴は、デザートのように食感まで楽しめる点です。1cm角の果物の粒が入ったことで、噛んだ時にジューシーさと食感の満足感が感じられます。ジュース部分も香り立ちが良く、トロっとした濃厚な味わいが楽しめる仕上がりになっています。
ーー消費者からはどんな反応がある?
消費者の反応を見ると、「ヨーグルトにかけてみた」「製氷機で凍らせたら美味しかった」「お酒に入れるとお洒落カクテルになる」など、果汁製品を超えてデザートとしての楽しみ方をされている人もいるようです。夜のくつろぎタイムに飲まれているというデータもあり、今までと違う価値を提案できたのではないかと思っています。

ーー今回のラベルはポジティブに注目を集めたが、受け止めは?
現在は、関東の一部店舗のみでの限定販売ですが、沢山の製品の中から気付いていただき、ワクワクする反応をリアルタイムでいただき、一同感激しています。少しでも日常に新鮮な驚きを届け続けられるように、楽しみながら頑張ります。
ーー陳列を心配する声もあるが、アドバイスは?
私たちからは原則として、キャップを上にする陳列をご案内しています。ただしどちらを上にしても、違和感が出て目立つというのが狙いでもありますので、店頭の状況に合わせて工夫いただければ幸いです。デザート売り場などの近くでカゴなどを使い、横向きや斜めに陳列されているお店もあるようです。今までに無いデザインを使って、売り場でも遊んで工夫いただけると、消費者の皆さまにも新鮮なワクワクをお届けできるかなと思います。
ラベルを上下逆にするというアイデアは、「果実が大きくて沈殿してしまう」という課題を、逆転の発想でアピールポイントに変えたものだった。店頭には変わったパッケージの製品も並ぶが、その裏にはさまざまな企業努力が隠されているのかもしれない。
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