このパッケージ...実は“アレ”で決めました

ショッピングでつい見てしまうものと言えば、商品のパッケージデザイン。
魅力的なら手に取りたくなるし、特徴的なフォルムなら意識せずとも覚えているものだ。

このパッケージデザインについて、スナック菓子メーカーの「カルビー」が気になる試みをしているのをご存じだろうか。まずは、こちらの画像を見てほしい。

(提供:カルビー)

定番商品の「じゃがりこ」から派生した、「とうもりこ」と「えだまりこ」のパッケージ画像だ。
この2商品は2018年に発売され、どちらも2019年10月にリニューアルしているのだが、その際にパッケージのデザインについてはAIの“好意度”を参考に制作したというのだ。

ネットからは「すげぇ世の中」「AIが出した数値が根拠なのか」と驚きの声も聞かれたが、なぜAIで決めようと考えたのだろう。そしてどのような要素で決めているのか。カルビーに伺った。

新旧パッケージの主な違いとは?

――なぜ、パッケージ開発にAIを取り入れようと考えた?

とうもりこ、えだまりこのパッケージ開発には、「(株)プラグ」さまの「パッケージデザイン好意度評価予測AIサービスシステム」を活用しました。2019年にこのAIサービスを知ったとき、とうもりこ、えだまりこのリニューアル計画を進めていたので、試験的に導入しました。


――パッケージデザイン好意度評価予測AIサービスシステムとは、どんなもの?

パッケージの好意度調査で得た知見をAIに勉強させたものと伺っております。画像から、そのデザインの好意度がスコアとして数値化されます。


プラグのウェブサイトより

――とうもりこ、えだまりこのパッケージの主な変更点は?

旧パッケージでは、とうもろこしや枝豆が中央に描かれ、そこに味の名称やイメージキャラクター、スティックの画像などを散りばめていましたが、背景と同化するなどの課題がありました。新パッケージでは情報を整理して、中身の菓子イメージなどが目立つようにしています。

ぱっとみて、商品の特徴が分かることを心がけました。


左:リニューアル前  右:リニューアル後 (提供:カルビー)

――その変更に、AIはどう関与した?

複数のデザインパターンを作り、それをAIに判断してもらう工程を計4回繰り返してブラッシュアップしました。商品名のロゴの場所、画像の面積を変更したりしましたね。好意度予測の数値が旧パッケージよりも高いものを、新パッケージに採用しています。

【好意度予測の数値(1.00から5.00まで)の変化】
・とうもりこ
3.425(旧パッケージ)から、3.496(新パッケージ)に上昇
・えだまりこ
3.27(旧パッケージ)から、3.38(新パッケージ)に上昇

とうもりこ、えだまりこの好意度予測の変化

社内外で好意的な反応

――リニューアル前後での、反応などの違いは?

お客さまや取引先からは、「商品の魅力が分かりやすくなった」などの好意的な反応が目立ちますね。社内からも、「シリーズ商品として認識しやすくなった」との声がありました。


――従来のパッケージ開発と比べて、AIを活用するとどんな違いがある?

パッケージ開発に関しては、開発者の直感などで仮説を立てて制作するのが現状でした。
AIを活用すると数値的な評価が分かるため、早い判断につながり、考案したパッケージの方向が良いのか悪いのか、という裏付けにもなると思います。

もし望めるのであれば、スコアがどのような要素によるものなのか、キーワードなどで指摘していただけると更にわかりやすいなと感じました。今後の導入は検討中です。


新旧パッケージの比較(提供:カルビー)

好意的な反応が目立つも、AIサービスシステムの詳細までは分からなかった。
そこで、このシステム開発元である「プラグ」にも話を伺った。

524万人の回答を元にAIが好意度を予測

――パッケージデザイン好意度評価AIサービスシステムとはどんなもの?

当社は新商品のパッケージデザイン評価を扱うビジネスをしていて、そこで蓄積した消費者調査のデータをAIに学習させたものです。2019年4月からサービスを開始し、5240商品に関する524万人(2020年2月時点)の回答から予測される好意度などが、専用サイトに画像をアップロードするだけで分析できます。

2020年2月時点では、菓子や飲料、化粧品など21カテゴリの商品が分析可能です。


消費者がパッケージをどう感じるか予測できる(提供:プラグ)

――このシステムでは、どんなことが分かる?

消費者調査のデータを参考として、パッケージに関する次の4要素を予測できます。

(1)好意度予測スコア
好意度を1.000~5.000(小数点第3位まで)の数値で予測。
※1.000の好意度が「嫌い」で、2.000(やや嫌い)、3.000(どちらでもない)、4.000(やや好き)、5.000(好き)となる。
(2)ヒートマップ
予測した好意度と関係が深い箇所を赤く可視化。好意度が高い、低い要因が分かる
(3)イメージワード
人々が商品に抱くイメージを、19の言葉(一部は18)から予測できる
※おいしそう、かわいい、目立つなど
(4)好意度のばらつき
好き嫌いが分かれるデザインか、万人に好かれるデザインかを分析できる

赤い部分が評価と関連が深い。高評価なら活用、低評価なら改善につながる(画像:プラグ)
イメージワードとの関連性から、商品の印象も分かる(画像:プラグ)

ちなみに、システムは2020年2月に、上記(2)(3)(4)の機能をアップデートしました。カルビーさまが利用したときは好意度予測スコアしか分かりませんでしたが、現在はこのような要素も予測できます。

“らしさ”が伝わるデザインが評価されやすい

――好意度が高くなりやすい、低くなりやすい要素はある?

感覚的には、商品の“らしさ”が伝わるデザインが評価される印象です。スナック菓子らしいデザイン、飲料らしいデザインなどですね。逆に逸脱するものは評価が低くなりがちです。奇抜なパッケージは一部に刺さりますが、万人受けはしない傾向です。

調査データは年に複数回アップデートするので、トレンドも加味した評価ではあります。


――企業にとってのメリットは?どう活用できる?

パッケージ開発においては、時間やコストのために消費者調査がされにくく、担当者の主観でイメージが決まるという課題がありました。AIを活用することで、デザインの改良や検証を繰り返し行えるので、このような課題も解決できると思います。


パッケージデザイン好意度評価AIサービスシステムは、複数の利用プランがあり、価格やサービス範囲が異なる。好意度の予測のみ、デザイン案の上限が10枚までという条件付きだが、「無料お試しプラン」もあるので、気になる企業は試すこともできる。

あくまでデザインを考えるのは人間だが、担当者の主観や思いが強すぎてもAIが忖度せず数値化してくれるため早い判断につながることは間違いないだろう。

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