三重県伊賀市の「伊賀一之宮SS」は、昼は地域の足を支えるガソリンスタンド、夜は本格的な料理とお酒が楽しめるレストランへと姿を変える“二刀流”スポットです。カマンベールアヒージョなど創作メニューが並び、遊び心あるカクテルも人気。オーナーの男性は、ガソリンスタンドの先細りを見据え、飲食店を開店。ガソリンスタンド×レストランという全国でも珍しい挑戦が注目を集めています。
■普通のガソリンスタンドが夜は本格的なレストランに
三重県伊賀市にあるガソリンスタンド「伊賀一之宮SS」は、地域の暮らしを支えて60年になる老舗のスタンドです。店主の箱林穂高さんは、37歳の時に父からこの店を継ぎ、10年間経営を続けてきました。

午後6時半。箱林さんはガソリンスタンドの営業を終えるため、閉店作業を進めていました。
店主:
「閉店です。今から夜の営業の準備をさせていただきます」
店舗の奥へ向かった箱林さんは、ガソリンスタンドの制服からカジュアルな服装へと着替えます。

箱林さん:
「夜のユニフォームで。夜は「HAKOBA」というお店に変わります」

ここは、昼間はガソリンスタンド、夜になるとお酒が楽しめるレストランと、まったく異なる2つの顔を持つお店なのです。

レストランでは、サバのお好み焼き「サコバ焼き」(800円)や「カマンベールアヒージョ」(1500円)などの創作料理が味わえるほか、お酒も豊富にそろっています。

さらに、ガソリンスタンドならではのユニークなネーミングも魅力。ラムベースで爽やかなカクテル「ウォッシャー液」(900円)や、ジンベースで甘く飲みやすい「エンジン洗浄剤」(900円)など、遊び心にあふれたメニューが並びます。
■ガソリンと缶詰で地域を助けたい…老舗スタンドが挑む“もしもの時”への備え
開店と同時に、地元の人たちが続々と訪れます。
客:
「まさかガソリンスタンドで(飲食できる)とは思ってもみなかった」
別の客:
「昼間ここでオイル交換して、また夜来て。昼間と夜がコロッと変わるので楽しい」

箱林さんはなぜ、ガソリンスタンドでレストランを営もうと考えたのでしょうか。
箱林さん:
「ガソリンがこれから先目減りする商売の一つなので。飲食店を昔からやりたいという夢があったので」
祖父の代から三代続くガソリンスタンドですが、将来を見据えて新たな収益の柱を作ろうと、自身の夢でもあったレストランを開業したといいます。
厨房をのぞくと、ガソリンスタンドならではの工夫もありました。
箱林さん:
「消防からガソリンスタンドということで、直火を使ったらダメですと」

ガソリンに火は厳禁のため、厨房ではIH調理器を使用。これにより開業時の消防のチェックもクリアしたといいます。直火が使えない分、メニューにも特徴が。壁一面にズラリと缶詰が並びます。
箱林さん:
「アテにもなるし、温めるだけで出せるのが強み」

フードメニューは、缶詰がメイン。全国から珍しいものを取り寄せるなど、飽きさせない工夫を。そして、缶詰を採用したのには、もう一つ深い理由がありました。
箱林さん:
「ウチは『住民拠点SS』といって、有事の時に停電になっても自家発電機を置いている。そこに“食”を加えて。ガソリンと缶詰で地域を助けることを目指している」
地域のライフラインを守る役割も担うこの取り組み。楽しみながら地域に貢献しようとする箱林さんの姿勢は、訪れる人々に新たな魅力を感じさせています。
2025年7月10日放送
(東海テレビ)