全国的にも珍しい長野県東御市の公立助産所。これまでに約1500人の赤ちゃんがここで生まれてきましたが、近年は「無痛分娩」が注目され利用者が減少しています。「助産所という選択肢も知ってもらいたい」と、このほど、助産所ならではのサポート態勢などを紹介する動画を作りました。
(東御市チャンネル)
「新しい命の誕生。お産があったのは病院ではなく長野県東御市が運営する『助産所とうみ』です」
東御市が6月下旬に公開した動画です。
小宮山千鶴さん(東御市チャンネル):
「いま妊娠29週目です。男の子は初めてなので、3人目だけど、どうなるかなと、楽しみではあります」
動画は約14分。「助産所とうみ」で出産する市内の女性を5カ月間密着しています。
助産師の検診や助産所での「出産」の様子なども紹介しています。
女性はサポートを受けながら畳の上で出産。病院では分娩台が一般的ですが、助産所では自由な姿勢で出産することができます。
なぜ、動画を作成したのでしょうか?
「助産所とうみ」は地域の産科医不足などを背景に2010年にオープン。全国的にも珍しい公立の助産所で県内では唯一です。
人それぞれ異なる妊娠中の体調や悩み。9人の助産師がじっくり検診や相談をしてきめ細かくサポートしながら分娩まで導く点が厚い支持につながっています。
これまで約1500人がここで誕生しました。
また、産後のサポートも充実。母親たちの心のよりどころにもなっています。
動画でも産後のケアに力を入れ母親に寄り添う様子を紹介しています。
助産所とうみ・藤沢祐子所長:
「お母さんの考え方を尊重して、お母さんがやりたいように『伴走者』として寄り添いながら、教科書通りじゃないやり方で、その人らしい育児ができるようにサポートすることがとても大事だと日々感じている」
ただ、近年は少子化に加え「無痛分娩」への関心の高まりもあり、利用者は減少傾向です。当初、年間の出産件数は150件ほどでしたが、徐々に減少し、2024年は69件となっています。
そこで、改めて助産所ならではの良さを知ってもらおうと動画を公開することにしました。
助産所とうみ・藤沢祐子所長:
「助産所ってどんな人がどんなふうに利用するところなのか、そういう情報が届いてないと実感して動画でPRできたらと」
動画を制作・小林拓馬さん:
「基本的には1人で撮影も編集もしてという感じでやっています」
撮影・編集したのは市職員の小林拓馬さん(32)です。
小谷村出身の小林さんは大学卒業後、テレビ局の報道記者などを経験。10年間、東京で過ごしてきましたが、妻の妊娠をきっかけに子育て環境を考え、2021年、東御市に移住しました。
3人の子どものうち2人は「助産所とうみ」で生まれました。
小林拓馬さん:
「(病院で産んだ)1人目のときは(妻が)産んでから半年ぐらい、あまりこう自由に動けなかった。(助産所で産んだ)2人目の時はもう産んでから1カ月以内には通常の生活ができる状態にはなっていたので、表情とか、本当に助産所で産んでよかったと妻本人が何度も言っているので、私も夫としてもすごく強く感じている」
「助産所とうみ」で2人出産・妻・ひとみさん:
「助産所では『いきみたいとなったときに、いきんでいいよ』と言ってくれて、自分が主導権を握れた感覚がある。それが自分の中ですごくポジティブな経験として残っていて」
こうした経験を伝えたいと小林さんは助産所と協力して動画を作成しました。
どこで出産するか。それは、人それぞれの状況や環境、考え方で変わってきます。
ただ、動画を通じて「助産所」での出産も選択肢の一つになってほしいと考えています。
小林拓馬さん:
「助産所っていう選択肢があるんだよっていうことが伝えられたらいい。『助産所とうみ』という素晴らしい施設とそこで働く方々がいらっしゃって、そのサポートの中でいい出産ができるんだよということが伝われば何より」
動画は東御市の公式YouTubeなどで公開しています。