京都の山あいの町で車の「サイドミラー」が持ち去られる被害が相次いでいます。
町を取材してみると、その犯人はなんと「サル」。
サルが「ミラー」を狙うわけを動物園で緊急調査すると、見えてきたのは「ミラーを敵と認識しているのでは」ということでした。
■サイドミラーに「カバー」!の車の数々
京都府南部に位置する宇治田原町。自然豊かなこの町である異変が…
【記者リポート】「完全に覆っていますね。車のミラーにカバーですよ。ずいぶん、凝ったものを作っていますね。対策グッズではないでしょうか。あそこの家もそうですよ」
町には「サイドミラー」に、袋のようなものや、「とげ」がついたものなど、カバーがつけられた車の数々が…いまこの町で何が起きているのでしょうか。
【記者】「なんでカバーされてるんですか?」
【住民】「サルがこれをギュッとね」
【記者】「サルが?」
【住民】「サルが取るんですよ」
■サイドミラーが両方なくなった被害者も…
住民が警戒しているのは「サル」との声。
確かめるために被害にあった住民の軽トラックを見ると、なんとサイドミラーが両方ともなくなっています。
(Q:サルがこれを?)
【被害にあった人】「サルですね」
(Q:言い切ってますね、間違いない?)
【被害にあった人】「目の前でみたことあるんで。ここ(サイドミラー)めがけて、ぶら下がっているような感じで…」
■カーブミラーにも興味津々 持っているのは「サイドミラー」?
これは今月、この町に現れたサルを捉えた映像。
【住民】「カーブミラーでめっちゃ遊んでるねんけど!壊さんときや!」
一匹のサルがカーブミラーに興味深々の様子。サルの手元を見てみると持っているのはサイドミラーのように見えます。
宇治田原町によると、サイドミラーの被害は去年の末頃から始まり、およそ150件にも。目撃情報などからサルによる仕業とみられています。
住民たちは被害を防ぐために工夫を凝らした対策をとっています。
【記者】「すごいお手製ですね」
発泡スチロールの箱を利用して、完全にサイドミラーが覆われるカバーがついています。
【住民】「手作りで、(カバーを)何にしようかなと思ってたけど、(箱を)半分に切って。(ミラー)4個とられました。上から見てたらね、音したしと思って見たらね、(サルが)自分の顔見て歩いてましたやん」
(Q:昔から被害は?)
【住民】「そんなん初めてやな」
住民を悩ませるこの事態に町も対策を進めています。
■「サルパトロール」に密着すると集団のサルが!
宇治田原町では以前よりサルによる農作物への被害も起きていて20年ほど前から「サルパトロール」を行っています。
【宇治田原町の担当者】「今まではそういった(サイドミラーの)被害はなくて本当にサルがやったのかなと、どうやってできるのかと。最終的には追い払いをすることによって里に出てこなくなるようにするのが目的」
そこで取材班はサルパトロールに密着。
【記者】「いま、音がしますね?サルが近くにいる?」
【サルパトロール歴10年 三好正明さん】「そうです。ここの近くにいます」
隊員の三好さんが持つのはサルのおおまかな位置が分かる受信機。町は1匹のサルに発信機を装着。
サルは集団行動をするため、その位置から近くに群れがいることが分かるといいます。
そしてサルを発見したら、人のいる場所や畑に近づかないようエアガンでの威嚇射撃や爆竹などの音で追い払います。
(※威嚇射撃でサルには直接撃ちません)
パトロールに同行すると、サルを見つけました!
【記者】「いた!いました。また来た!かなりの数いるんじゃないですか。どんどん出てきますね。かなり集団ですよ」
目の前に現れた多くのサル。
【記者】「これが町に出てきて?」
【サルパトロール歴10年 三好正明さん】「そうです。前に数えたら30匹ちょっといました」
(Q:民家がない場合は追い払わない?)
【サルパトロール歴10年 三好正明さん】「ないです。(今回のエリアは近くに)民家もないし野菜の畑もないし」
さらにパトロールを続けるとまたまた受信機が反応!
【記者】「いましたね、また出てきました」
■町のあちらこちらにサイドミラーとみられるものの破片が…
この日はサイドミラーや農作物への被害は確認できませんでしたが、取材を続けていると目に入ってきたのが…
【記者】「これドアミラーじゃないですか?もしかして。サルか分からないですけどもしかしたら可能性ありますね」
町のあちらこちらにミラーとみられるものの破片が落ちていました。もしかするとこれもサルの仕業なのでしょうか。
■「なぜサルはミラーを狙うのか」約40年サルを飼育 園長に聞くと…
そもそもなぜサルがミラーを狙うのか。
ヒントを得ようと取材班は福知山市にある動物園を訪れました。
およそ40年間ニホンザルを飼育してきた園長なら何か知っているのでは?
(Q:ニュース聞いてどう思った?)
【三段池ラビハウス動物園 二本松俊邦園長】「初めて聞きました。鏡に写ってる自分は絶対認識できないので、そこにサルがおると思うんですね」
園長によるとサルは鏡に写る姿を見て別のサルがいると認識。敵が攻めてきたと思いミラーを攻撃したのではと推測します。
また被害の多く出ている軽トラックは、エンジンを切る際、自動でサイドミラーが閉じないタイプが多いことから、『狙われやすい』と分析します。
■鏡を設置すると…うつる姿にざわつくサル
では、飼育施設に鏡を設置するとサルはどのような反応をするのか、緊急調査しました。
そして設置からわずか1分。
【記者リポート】「すでに1匹覗きにきていますね。次々とサルがミラーを覗きにきています。警戒しているようです。どんどんサルが集まってきました」
(Q:今はどういう状況?)
【二本松園長】「相手が強いか弱いか見とんでしょう」
(Q:顔をつけてますね?)
【二本松園長】「サル同士があたったつもりで、でもにおいがしないからおかしいなと思ってますね」
鏡にうつる姿にざわつくサルたち…
【二本松園長】「一応逃げ腰なんですね、いつでも逃げられるように」
■サル飼育歴40年の延長は「潰すのが癖に。当分やるでしょうね」 対策は難しそう…
およそ5分後。
【二本松園長】「騒ぎ出しましたね」
(Q:威嚇ですか?)
【二本松園長】「そうそう相手もサルと思とるみたいで自分と思ってない。なんで出てこえへんのやっちゅうもん。向こうも怒っとるということで怒り返したと思ってるだけ」
サルたちは、パニック。メスや子ザルたちは遠くから見守ります。
鏡をおいていたおよそ1時間にわたってサルの威嚇は繰り返されました。
(Q:宇治田原町では何が起きている?)
【二本松園長】「びっくりして叩いたら折れて、やっつけたつもりで。叩いたらこのサルはいないようになるということで、潰すのが癖になったんでしょうね。当分やるでしょうね」
ミラーにカバーをしても、取って持っていくサルがいるということで、”人間のエリア”と”サルが生活するエリア”を分けることしか対策がないというのが現状だそうです。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年7月22日放送)