炭火で焼き上げる心地よい音に、甘辛い香りが食欲を刺激するウナギ。
19日は「土用の丑の日」ですが、今後、このウナギが手の届かないものになるかもしれません。

東京・世田谷区の「うな祐本店」を訪れた人は「暑い時期はやっぱり食べないと力がつかないので、夏バテしないように食べてます」「私と女房と娘夫婦の分で4尾を予約しました。あしたは土用の丑の日ということで楽しみにしています」と話しました。

そんなウナギに今、大きな転換点が訪れています。

6月末、EU(ヨーロッパ連合)などは、ニホンウナギを含むウナギの全種類を、野生動物の国際取引を規制する枠組み「ワシントン条約」へ掲載するよう提案。
2025年11月に始まる国際会議で採択されれば、流通量が減少し、価格が高騰する可能性があるのです。

一番大きな影響を受けるのは、世界最大のウナギ消費国・日本とみられています。

小泉農水相(6月27日):
保存管理を徹底しており、十分な資源量が確保されていることから、国際取引による絶滅のおそれはありません。今般のEUの決定は極めて遺憾であります。

水産庁も「EUに対し提案の見送りを働きかける」としています。

2023年のウナギの国内供給量のうち、輸入は約7割です。
そのうち「生きウナギ」の9割は中国からの輸入。
さらに、ウナギ製品に限ると、中国からの輸入が99%に上るなど、中国はウナギの輸出大国です。

FNNは、中国にあるウナギの聖地・広東省台山市に向かいました。

早速、ウナギ産業をPRする巨大なウナギの看板が出迎えます。
街中にもウナギを扱った飲食店が目につきます。

中国では、日本の焼き肉と同じように網の上で焼いて食べる「焼きウナギ」が人気だといいます。

そんなウナギの街にある「遠宏グループ」。
取材した日はちょうど「土用の丑の日」に向けた日本への出荷のピークで、約8トンのウナギが運び出されていました。

台山市にあるウナギの養殖場の面積は、合わせて3333万平方メートル。
これは東京ドーム約712個分の広さです。

世界最大の規模を誇る、まさに“ウナギの聖地”です。

遠宏グループ・徐愛寧弁公室主任:
日本へは毎年、約4000トンを輸出しています。一番忙しいのは6月と7月です。日本の「土用の丑の日」に合わせて、十分な供給量を確保しています。

ここでは日本が輸入する「生きウナギ」の2割近くを扱っています。

遠宏グループ・徐愛寧弁公室主任:
日本は高めの価格で買ってくれますが、その分、品質の要求も高いです。

一方、日本にとっては気になる現象も起きています。
中国で今、ウナギ人気が急上昇しているのです。

地元の飲食店をのぞいてみると、「焼いたウナギが一番おいしい」「香ばしく焼いたものと梅と一緒に蒸したものがすごくおいしい。大好きです」などの声が聞かれました。

ウナギを食べる習慣があまりなかった中国。
しかし、新型コロナの流行でウナギの輸出が一時的に減ったことなどがきっかけとなり、国内消費にも力を入れ、ウナギ料理を扱う店が急増しているというのです。

中国国内でのウナギの消費拡大。
さらに、EUの提案が採択された場合、2027年6月から規制が導入され、ウナギの輸出には許可書の発行が義務付けられます。

日本にはどのような影響があるのでしょうか。

中央大学・海部健三教授:
ワシントン条約の付属書2に掲載された場合、正当な輸出許可を出すことはかなり難しいことだと考えています。中国政府の判断がどう動くのかはわからないですけども、国内需要を伸ばすという方向に動く可能性は、考えられない訳ではないと思います。

日本の夏に欠かせない食材・ウナギ。
その未来は、11月に始まる国際会議で決まります。

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