プレスリリース配信元:一般社団法人飲酒科学振興協会
現代企業における飲酒文化の再考:会社飲み会の最適化に向けて
ポイント
(1) 7,500名のアンケート調査により、会社飲み会の満足要因とストレス要因を見出した。
(2) 男性と女性で感じ方に違いがあることが明らかとなった。
(3) “最適な飲み会”実現に向けた実践的なガイドラインの構築に向けた知見を提供した。
概要
日本では現在も飲酒を伴う職場の懇親会、いわゆる“飲みニケーション”が、職場内コミュニケーションの手段として一定の役割を果たしています。しかし、働き方や価値観の多様化により、その有効性や求められる形には再検討の必要があります。九州大学都市研究センターの馬奈木俊介主幹教授、武田美都里特任助教、崔廷米研究員は、株式会社三和酒類と共同して、会社飲み会が社員の満足度やストレス、組織への影響にどのように関与しているかを明らかにすることを目的に、全国の企業勤務者7,500名を対象とした大規模オンラインアンケート調査を実施しました。分析の結果、会社飲み会において満足要因として10個の項目のうち、「参加の自由度」「開催時間」「参加費」を挙げた参加者が比較的多いことが明らかになりました。一方で、「上司の振る舞い」や、「酔っ払いによる迷惑行為」などが強いストレス要因となっており、特に女性は男性よりもすべての項目において高いストレスを感じていることが明らかとなりました。
本研究は、性別による感受性の違いや満足・不満足の傾向、ストレス要因の実態を明らかにするとともに、雇用形態や職位といった階層的要因の影響の可能性も示唆されました。これにより、企業文化の中にある飲酒行事を、社員がより快適に参加できる“最適な飲み会”にアップデートするための知見を提供しました。本研究成果は、2025年5月16日の「第98回日本産業衛生学会」にて武田美都里特任助教により発表されました。
研究の背景と経緯
アルコールの有害な使用は、依存症や生活習慣病のリスクに加え、交通事故や暴力、労働生産性の低下といった社会的損失の要因として知られています。しかしながら、これまでにはアルコールの健康被害やリスク回避に焦点が当てられ、飲酒がもたらす社会的相互作用や絆形成、個人的な楽しみといったウェルビーイングへの良い影響については、十分な検討がなされていませんでした。日本において、飲酒を伴う職場の懇親会、いわゆる“飲みニケーション”が、現在もなお職場内コミュニケーションの重要な一形態として認識されています。組織の結束力を高め、仕事の円滑な進行を支える重要な交流の場とされてきた一方で、働き方の多様化や価値観の変化にともない、そのあり方に疑問を抱く声も増えており従来の飲酒文化が必ずしもすべての社員にとって快適とは限らない状況が浮かび上がってきました。
こうした背景のもと、九州大学都市研究センターでは、株式会社三和酒類と共同して、どのような飲み会をすれば個人のウェルビーングの向上や会社のメリットが最大化されるのか、飲み会の満足度要因とストレス要因を検討分析することを目的として科学的なアプローチによる実態調査を実施しました。
特に本調査では、単に飲み会の「好き・嫌い」ではなく、参加者が実際に何に満足し、どのような点にストレスを感じているのかを項目ごとに詳細に把握することを重視しました。これにより、飲み会に関する感覚的な賛否を超えて、科学的根拠に基づき企業文化の見直しや改善につなげるための基盤を構築することを目指しています。
研究の内容と成果
本調査は、楽天インサイトを通じて、全国の企業に勤務する20歳以上の社会人7,500名を対象に、オンラインアンケート形式で行われました。調査では、性別、年齢、職種、居住地域などの基本属性に加え、飲酒習慣やアルコール体質、会社飲み会の参加状況、満足度、ストレス要因、さらには飲み会が仕事や人間関係に与える影響など、幅広い視点からデータを収集しました。
分析の結果、参加者が非常に満足と答えた会社飲み会の要因は多い順に、参加の自由度(男性:12.84%、女性:17.21%)、参加費(男性:11.22%、女性:17.35%)、開催時間(男性:7.83%、女性:9.06%)となりました。これらの要因が飲み会への心理的なハードルを下げていることが示唆されました。また、女性は男性と比較して、多くの要因について満足度が高い傾向を示しました。次に、参加者が非常にストレスを感じると答えた会社飲み会の要因は多い順に、酔っ払いによる騒音や迷惑行為(男性:30.81%、女性:48.85%)、気分・体調が優れない(男性:27.35%、女性:46.86%)、上司の振る舞い(男性:26.67%、女性:43.33%)となりました。ここにおいても、女性はすべての項目で男性より高い割合を示しており、性別に配慮した飲み会運営の必要性が示されました(図2参照)。
本研究では性別による満足・ストレス要因についての知見が得られましたが、それには年齢や雇用形態(正規・非正規)、職位(管理職・一般職)といった職場内の階層的要因が影響を与えている可能性があると考えられます。今後は層別化分析を行うことで、より包括的かつ実態に即した、実践的な指針を提示することが期待されます。
今後の展望:「飲み会ルールブック」の開発へ
本研究では、今後さらに属性別分析(例:アルコール体質、居住地、業種別)を進めるとともに、企業が実践できるオーダーメイドの「飲み会最適マニュアル(仮称)」を開発することを目標としています。これにより、社員の誰もが無理なく参加でき、適度な距離感と交流が保てる飲み会を提示することで、企業文化の持続的な健全化を目指します。
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データ提供 PR TIMES
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