ペットを飼っていると、飼い主のもとにくっついてきてくれてかわいいんです。かたい絆で結ばれているんですね。では、その絆はどうやって作られるのでしょうか。
岡山大学の研究者が、動物はどのように人間に懐くのか、そのメカニズムを解明しました。
ラットと手でじゃれ合うのは、岡山大学理学部生物学科の特任助教、林姫花さんです。実験動物として知られるラットは通常は人間を恐れる生き物ですが、林さんは、飼育していると懐いてくることに着目し、そのメカニズムについて約2年前から研究を始めました。
(岡山大学理学部生物学科 林姫花特任助教)
「これが懐く前のラット。
(1日目)ほとんど手を出しても寄ってこない。今回の実験では「壁に手をついたらお腹をなでる」と教えるが、持っただけで何をするんだという感じ。
(10日目)じゃれ合いをずっと繰り返して10日経つとこんな感じでくすぐらせてくれる。立ったらなでると教えているので、何度も立ち上がるようになっている」
慣れてきたラットからはじゃれ合いを求めるしぐさだけでなく、快感を示す50キロヘルツの超音波発声も確認されたということです。
ラットはなぜ懐いたのか。林さんは、10日間じゃれ合いをしたラットの脳の状態を調べることにしました。
(岡山大学理学部生物学科 林姫花特任助教)
「視床下部という領域のオキシトシン受容体に作用することで懐く、愛着行動を制御していることが分かった」
オキシトシンは、出産時に子宮を収縮させたり、母乳の分泌を促したりする作用があるホルモンで、ハグやスキンシップでも分泌が促進されることから、「愛情ホルモン」や「幸せホルモン」とも呼ばれています。
(岡山大学理学部生物学科 林姫花特任助教)
「イヌが人と見つめ合うとオキシトシンが出るという論文はあるし、”絆”というものを形成する時にオキシトシンが関わっているというのもずっと言われていたので、脳の特定の部分にきいているという事が分かったのがこの研究の大きな発見」
この研究結果は、心地よい触れ合いが他者との結びつきに重要な役割を担っていることを示し、ペットとの触れ合いやアニマルセラピーで心が癒やされる現象を科学的に裏付けています。
(岡山大学理学部生物学科 林姫花特任助教)
「動物でなくてもフワフワのぬいぐるみや触り心地の良いタオルなど心地よい接触感覚がオキシトシンのシステムを活性化させて、良い影響があると分かったので心地よい感触を大事にしようということにつながるかもしれない」
林さんは今後、オキシトシンがどこからきているかなど神経回路について研究を深めたいとしています。