福岡市の自宅で2025年1月、自発呼吸ができない当時7歳の娘の人工呼吸器を外して殺害した罪に問われている母親の裁判員裁判で、被告の母親が、親族らの言葉に「このまま生きたらだめなのか、心臓をえぐられたような感じになった」と、犯行に至る状況などについて法廷で語った。

弁護人「急に闇に落ちた?」

殺人の罪に問われているのは、福岡市博多区の無職・福崎純子被告(45)。起訴状などによると、2025年1月、福崎被告は、自宅マンションで、先天的な「脊髄性筋萎縮症」のため自発呼吸ができず、医療的ケアが必要な長女、心菜さん(当時7歳)の人工呼吸器を外し、窒息死させて殺害した罪に問われている。

送検される福崎純子被告(博多警察署 1月)
送検される福崎純子被告(博多警察署 1月)
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7月11日に開かれた初公判では、福崎被告は「間違いありません」と起訴内容を全て認めている。

初公判(福岡地裁 7月11日)
初公判(福岡地裁 7月11日)

福岡地裁で7月14日行われた被告人質問。弁護人から「急に闇に落ちた?」と問われた福崎被告は「急に、『あっ死のう』と周りが見えず、死ぬ準備ばかりしていた」と犯行時を思い返すようにゆっくりと答えた。

以下は、弁護人による被告人質問の要旨。

被告人質問に答える福崎被告(福岡地裁 7月14日)
被告人質問に答える福崎被告(福岡地裁 7月14日)

自殺を考えるきっかけの日は…

▼弁護人「ご主人と2人で心菜ちゃんをうつ伏せから仰向けにしようとして、手伝ってと声掛けをして…」

▼福崎被告「顔は怒っていて、舌打ちしながら『あー、いっちょん寝れん。6時から飲み会だったのに遅れていこうかな』と凄く不機嫌な態度をとっていた。(弁:どう思った?)心菜より飲み会のこと心配するんだ。心菜は動けないから、ずっとうつ伏せのままになる。可愛そうすぎると怒りがこみ上げてきました(弁:結局1人で?)はい、怒りを押し殺して全身使って1人で戻しました」

▼弁護人「その後、怒りに変化?」

▼福崎被告「怒りから悲しみに変わって、涙が止まらなくなった(弁:悲しみとは?)心菜が可哀そうで…『よく放っておけるよなあ』と思った感じで…」

▼弁護人「いろいろ過去、親族に言われたことを思い出した?」

▼福崎被告「実の父が、心菜が大きくなってきて、盆や正月に会いに行かせたときに『大きくなったね』と声をかけて欲しかったが、(実父は)ため息をついて『これからどうするね』と言われて、このまま心菜は、生きたらだめなのか…。心臓を抉られたような感じになってしまって…。なぜ、心菜は病気で頑張って生きているのに、私は私なりに頑張って育てているのに、身内はそんなこと言うんだろう。心菜のことは、いらない存在なんだって。暗いトンネルに落ちたみたいな感情になって…『心菜は、いない方がいいんだったら、私も生きる意味がない』となって、一緒に死のうと…。そこから自殺を検索しだした」

被告人質問に答える福崎被告(福岡地裁 7月14日)
被告人質問に答える福崎被告(福岡地裁 7月14日)

「時間を取り戻したい…」

▼弁護人「急に闇に落ちた?」

▼福崎被告「自殺しようと思っていなかったのに、急に、『あっ、死のう』と降りかかったようになって、それから周りが見えず、死ぬ準備ばかりしていた」

事件があった現場(福岡市博多区 1月)
事件があった現場(福岡市博多区 1月)

犯行後、福崎被告は、亡くなった心菜さんを腕に抱いたまま自殺を図ろうとしたが、家族が異変に気づき、病院に救急搬送され一命をとりとめた。

▼弁護人「大量の薬を飲んで病院で意識を取り戻したときは?」

▼福崎被告「絶望的です。心菜だけ先に行ってしまっている。早く自分も死ななきゃって。携帯で薬の致死量を検索して、ネットですぐ注文して、それを飲んで。当時は家に帰れると思っていたので首を吊ろうと思ってました(弁:もう1回自殺しようと?)はい」

被告人質問に答える福崎被告(福岡地裁 7月14日)
被告人質問に答える福崎被告(福岡地裁 7月14日)

▼弁護人「この4か月の拘留期間は何を考えていた?」

▼福崎被告「ご飯を食べる資格はないと食べず、離婚して実家や家族と縁を切って、心菜の遺骨とひっそりと生きていこうと思っていました」

▼弁護人「事件を起こしたことについて、今はをどう思っている?」

▼福崎被告「信じられないことをしました。時間を取り戻したい。心菜に会いたいです。風呂入れたり…、オムツ変えたり…、きれいな足をストレッチしたり…、頬っぺをぎゅっとしたり…、とにかくあの生活に戻りたいです」

被告人質問に答える福崎被告(福岡地裁 7月14日)
被告人質問に答える福崎被告(福岡地裁 7月14日)

そう答えている途中に福崎被告の目から涙がこぼれ始めた。

検察官「娘はどんな存在?」

▼検察官「被害者を出産して後悔したことは?」

▼福崎被告「後悔というか申し訳ない気持ち。両家にも、心菜にも、こんな体で産んで申し訳ない心(検:菜さんの存在が負担?)一切ないです」

▼検察官「被害者は、どんな存在だった?」

▼福崎被告「人生で初めてできた、かけがえのない宝物です。心菜のためなら何でもできるという感じです。(検:それを自分の手で?)殺めてしまって、自分は、のうのうと生きている。後悔、絶望、罪悪感じゃ足りなくて…、一生、罪を背負って悔い続ける気持ち…」

▼検察官「心菜ちゃんが苦しむとは思わなかった?」

▼福崎被告「苦しむだろうなとは思った。私もすぐ行くからねと…」

7月14日の法廷(福岡地裁)
7月14日の法廷(福岡地裁)

検察、弁護人双方の被告人質問後、最後に「どういう人生を歩んでいきたいですか?」と裁判長に尋ねられた福崎被告は「可能であれば、心菜のような病気で生まれた子どものお世話をしつつ、私のように悩みをため込まないように、はけ口を作る仕事をしたいと思います」とはっきりとした口調で答えた。

翌日の7月15日、福岡地裁で開かれた論告求刑で検察は、福崎被告に懲役5年を求刑した。判決は、18日に言い渡される。

(テレビ西日本)

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