2025年の防衛白書が15日、閣議に報告された。表紙には、「国民の平和な暮らしをまもる自衛隊」をコンセプトに陸海空自衛隊員のイラストを使っている。自衛官の募集が困難な状況にあるなか、特に若者世代にアプローチし、自衛官の募集に繋げることが狙いだという。
中国については、2024年8月に中国軍機による領空侵犯が初めて確認されたこと、2024年9月に中国海軍の空母による日本の接続水域内の航行が初めて確認されたことなどを明記し、「中国による活発な軍事活動が我が国の安全に深刻な影響を及ぼし得る状況となっており、強く懸念される」と指摘した。
また「いわゆる“第1列島線”を超え、“第2列島線”に及ぶ我が国周辺全体での活動を活発化させている」として「我が国と国際社会の深刻な懸念事項であり、これまでにない最大の戦略的な挑戦」と懸念を示した。
このような中国の動向から、「中国は太平洋への進出を通じ、空母をはじめとする海上戦力の運用能力の向上や、遠方の海域での作戦遂行能力の向上を目指しているものと考えられる」との防衛省の認識を示した。
また、防衛白書では、北朝鮮について、2024年10月に過去最長となる約86分間の飛翔時間と過去最高となる約7000km超の飛翔高度のICBM級弾道ミサイルが発射されたことなどを明記し、「従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威」だと評価した。
さらに、北朝鮮とロシアの軍事協力について、2024年10月には北朝鮮兵士がロシア東部へ派遣され、ウクライナに対する戦闘へ参加したことが記された。
ウクライナ侵略における、北朝鮮によるロシアへの弾道ミサイルを含む武器・弾薬の調達やロシアへの派兵を受けて、「ロシアによる北朝鮮への核・ミサイル関連技術の移転のおそれがあり、長期的にはインド太平洋地域の軍事バランスに影響を与える可能性も否定されない」と懸念を示した。北朝鮮とロシアの軍事協力の進展については、「欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障が不可分である」との認識を示した。
こうした情勢認識のもと、自衛隊の運用に関して、平素から有事まであらゆる段階におけるシームレスな領域横断作戦の実現に向けて、2025年3月、新たに設置された統合作戦指令部について記されたほか、石破首相の指示のもと設置された「自衛官の処遇・勤務環境の改善および新たな生涯設計の確立」に関する関係閣僚会議でとりまとめられた、過去に例のない30を超える手当の新設・金額引き上げなどの処遇改善や、居室の個室化などの生活・勤務環境の改善等の「基本方針」についても記された。