夏は台風やゲリラ雷雨のシーズンです。浸水などの水害を防ごうと、東海地方では「地下」を活用した対策が進められています。

■建設が進む「もう1つの川」
愛知県豊橋市内を流れる柳生川では、川の下にトンネルを掘り、川の水を地下に引き込む「もう1つの川」の建設が進んでいます。

2008年8月に東海地方を襲った記録的な豪雨では、愛知県内で2人が死亡し、柳生川でも水があふれるなど、大規模な浸水被害に見舞われました。
そのため、川幅を広げることなどが検討されましたが、東海道新幹線やJR東海道線などの重要な交通インフラもあり、難しいといいます。

東三河建設事務所の担当者:
「鉄道橋が3橋、道路橋が4橋、川を横断している状況で、周りの家も多く張り付いていますので、なかなか改修が難しい川になっています。川の下を有効利用して、治水効果を高めるために整備を進めていきたいと思っています」
川幅が広げられないなら地下を有効活用しようと、地下に川を作ることにしました。本格的に運用が始まるのは4年後の予定で、1時間に50ミリの雨が降っても、水位の大幅な上昇を防げると見込んでいます。

水害を経験した地元の人は…。
地元の人:
「平成20年の時はここまで(水が来た)。これで心配なくなるかなというのはあります」
豪雨対策に「地下の活用」が注目されています。
名古屋市は全国でも最大級の雨水調整池を建設中です。名古屋城周辺から南におよそ5キロ続く地下水路を作り、中川運河から水を排水する計画です。

岡崎市でも2025年3月、地下におよそ1キロに及ぶトンネルが完成し、大雨への備えが進んでいます。
■冠水した道路「運転は危険」…JAFが実験動画を公開
大雨のときに気をつけたいのが車の運転です。2023年6月、東三河地方を襲った記録的な豪雨では、各地で浸水や土砂崩れの被害が相次ぎ、JAFにもおよそ4300件の救援要請がありました。
JAFは、冠水した道路での走行テストをYouTubeで新たに公開しています。

テストでは水深60センチの中を走ると、ガソリン車は途中で止まってしまい、車内に大量の水が流れ込んでしまいました。
ハイブリッド車と電気自動車は何とか走り切れたものの、故障につながる可能性が高いといいます。
JAF愛知支部の広報担当:
「実際の冠水路は泥水などで濁っていて、どのぐらいの深さなのか非常に分かりにくいです」
もし、水の中で止まってしまうと、水圧でドアが開かなくなり、脱出できなくなるリスクもあります。

JAF愛知支部の広報担当:
「アンダーパスなど、周りの道路よりも低くなっている場所は水がたまりやすくて、短時間でも水位が上がりやすい。そういった道路を選択しないことも大切だと思います」
■「地下」で進む豪雨対策…名古屋にも全長5キロのトンネル
東海地方ではこれまで、様々な水害を経験してきました。

1959年9月の伊勢湾台風では、死者・行方不明者あわせて5000人を超える被害となりました。浸水の被害も深刻で、名古屋市内でもおよそ1カ月半、浸水が続いた地域もありました。
2000年9月の東海豪雨では、名古屋市に1日だけで428ミリの雨が降りました。これは平年の9月1カ月の2倍近くに相当し、東海3県で床上・床下あわせておよそ7万棟が床上浸水しました。
こうした過去の経験から、名古屋市でも地下を活用した対策を進めています。

「名古屋中央雨水調整池」と呼ばれるもので、名古屋城の近くから地下50メートルのところにトンネルが作られ、東海豪雨に相当する雨(1時間に97ミリ)でも、床上浸水をほぼ解消できるとしています。
現在は中川運河へ水を流す部分の工事をしていて、2028年度末の完成を目指しています。
(東海テレビ)