はりまや橋に路面電車、鏡川にかかかる天神大橋。30年前の高知の風景を閉じ込めたタイムカプセルのような作品「海がきこえる」が高知市のキネマミュージアムで上映され話題を呼んでいます。
1993年にテレビで放送された長編アニメで、ファンタジー作品が多いスタジオジブリの中では珍しく、日常を描いています。高知を舞台に、恋や友情など、誰もが経験する何気ない青春の時間が、みずみずしく描かれています。
2024年、東京の映画館で期間限定で上映したところ、大きな反響を呼び、2025年、全国172の映画館で上映が決定しました。
6月28日、当時の制作者が高知を訪れ、映画監督の安藤桃子さんとのトークショーが開催されました。
【トークショー】
高橋望 プロデューサー:
「当時のアニメシーンでも異質だし、ジブリ作品の中でも異質ですよね」
望月智充 監督:
「下手すると、何も起こらない、つまらない作品だっていうふうに見えてしまう可能性もあった」
高知に暮らす高校生の日常が描かれる中で、作品の魅力となるのが土佐弁です。
訪れた観客は「私、70歳ながですけど、何とも言えない土佐弁のきれいなこと。純粋な土佐弁で、日頃の日常をきちんと伝えてくれる。その言葉が一つ一つ自分に入ってくるのが、何とも言えず引き込まれました」と話します。
望月監督は「(原作者の)氷室冴子さんが『自分は北海道出身で、それまでは土佐弁も知らなかったんですけど、たまたまこっちに来て見聞きした時に、土佐弁で小説を書きたいと思ったことから書き始めた』ということなので」と話しています。
高知の独特な風土が創作意欲をかきたてたのかもしれません。
観賞を終えた母娘:
母「年齢的にめちゃくちゃリンクしますよね。(主人公たちが通う高校の校舎のモデルとなった追手前高校は)母校なので。じんわりする」
娘「高知の日常のひとコマを歴史的に残してくれている作品だと思いました」
高橋プロデューサー:
「高知の人に見てほしいです。高知を舞台に作った映画だし、高知の人がどう見てくれるのかが一番興味あります」
望月監督:
「確かに高知の人だけが、他のあらゆる県の人と別の見え方がする部分が多分あるだろうと思う」
今も変わらない景色に、今はもう見られない景色。それぞれの思い出の中にある故郷の景色を見つけに、映画館に足を運んでみてはいかがでしょうか。
キネマミュージアムでは10日で公開2週間を迎えましたが、観客動員数が1000人を超え、県民の関心度の高さが伺えます。「海がきこえる」は7月末まで公開する予定です。
キネマミュージアムでは他にも、高知出身のまひろ玲希さんが出演する「骨なし灯籠」がロングラン上映しています。