東京電力は7月10日、福島第一原子力発電所での処理水の海洋放出をめぐり、異常が確認された場合に緊急停止するための「緊急遮断弁」を動かす通信ケーブルの1つに損傷が確認されたと公表した。

7月5日に通信の異常が発覚し、7月8日までに異常があったケーブルを予備ケーブルに切り替え。7月9日までに異常があったケーブルの表面に長さ3cmほどの「削れ」があったことが発覚したという。東京電力は損傷の原因を調査中としている。

「緊急遮断弁」につながるケーブルは2系統あるうえに、異常があったケーブルも予備に切り替えることができているため、緊急遮断弁の動作に問題はないとして、東京電力は7月14日から2025年度2回目の処理水放出を実施する計画。
8月1日までの19日間で約7,800t(タンク約8基分)を海水で薄めて海に放出する予定となっている。

福島第一原発では2023年8月に処理水の海洋放出を開始。これまでに通算12回の放出を実施し、合わせて約9万4000t(タンク約94基分)の処理水が薄められて海に放出された。

処理水放出は、敷地を圧迫する1000基あまりのタンクを減らし、廃炉のためのスペースを開けることが大きな目的のひとつ。
2025月2月からは、放出によってカラになった溶接型タンクの解体も始まっていて、まずは12基を2025年度中に解体する見込みとなっている。空いたスペースには燃料デブリの取り出しに関する施設を建設する計画。東京電力は廃炉の進捗に伴い、必要な施設を建設するためのスペースを作る計画を立てながらタンクの解体を実施していきたいとしている。


2025年度は、7回に分けて約5万4600t(タンク約55基分)を放出する計画で、これまでに海洋モニタリングで異常などが確認されていないことなどから、放出する処理水に含まれるトリチウムの濃度を2024年度よりも高くする方針。
東京電力は第一原発周辺海域で海水のトリチウム濃度測定を実施していて、発電所から3km以内で700ベクレルを検出した場合には放出を停止することとしているが、これまでにこの指標に達したことはない。


処理水の海洋放出に伴い、中国が日本産海産物の輸入を全面的に禁止したことから、ホタテやナマコを中心に取引中止などの損害が発生。中国は2025年6月、約2年ぶりとなる輸入再開を発表したが、処理水の海洋放出以前から禁輸措置が取られていた福島を含む10都県からの輸入停止は継続される。

東京電力は、福島第一原子力発電所での処理水の海洋放出をめぐり、2025年6月25日時点で約780件・750億円の賠償支払いを完了。1か月ほどで約40件・20億円増加している。


国と東京電力が掲げる廃炉の完了は2051年。
タンク内のトリチウムがゼロになるのも2051年と計画されている。

福島テレビ
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