アメリカのトランプ大統領がSNSで公開した、石破首相に宛てた書簡。
そこには、「日本からの輸入品に対して、8月1日からたった25%の関税を課す」と、アメリカが輸入する日本製品に25%の関税をかけるとする、新たなトランプ関税の発動が予告されていました。
これは、4月に当初発表した相互関税の税率、24%を1%分上回っています。
トランプ氏は、日本との関係について「全く相互的ではない」と非難。
「貿易赤字を是正するために必要な措置だ」と説明しています。
また、日本側が対抗措置をとった場合は、日本が引き上げた分を25%の関税に上乗せすると警告しました。
これを受け、日本政府は全ての閣僚が出席する総合対策本部の会合を開きました。
石破首相:
誠に遺憾であります。現時点で日米双方が折り合えない点が残っており、残念ながら、これまで合意にいたっておりません。
交渉を担う赤沢経済再生相は、「自動車産業は基幹産業であるので、そこについての日米間の合意というものがなければ、パッケージとして全体に合意ができるということはない」と述べました。
赤沢経済再生相が7回訪米して交渉を繰り返した末に、トランプ氏に突き付けられた関税25%という事実上の最後通告。
参院選のさなかの日本を狙い撃ちにした形となったこの発表は、日本にとってどういった意味を持つのか?
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、「どちらかというとうまくいかなかったということでは。(Q.今後は?)選挙中に何かアメリカに対して追加の提案をするのも難しいと思う」と指摘します。
一方で、日本側の提案をどのような方法でトランプ氏に示すかが重要だとの指摘も。
りそな総合研究所・荒木秀之主席研究員:
最終決定権はトランプ大統領が持っている。大臣と交渉を詰めても、最終の判断でひっくり返されるというパターンもあるのかなとはっきりしたので、そこも含めた8月1日に向けての交渉ということだと思う。
一方、新たなトランプ関税は、アメリカにさまざまな商品を輸出する列島各地の企業に思いがけない変化を起こしていました。
福岡県を代表する緑茶のブランド「八女茶」。
15年前から海外への輸出を始めたという大石茶園。
現在は売り上げの7割を輸出が占め、その中心がアメリカでした。
しかし、新たなトランプ関税の発表を受け、ついに決断を下しました。
大石茶園・大石賢一専務:
アメリカ一辺倒でのビジネスは非常に危険だなと考え、世界的な抹茶ブーム、このチャンスにアメリカ以外のシェアを拡大したい。
世界的な抹茶ブームをチャンスと捉え、カナダやメキシコに販路を拡大する計画だといいます。
トランプ関税の余波を受け、変化を迫られる輸出企業。
草刈り機などを海外に輸出していた福岡・広川町の農業用機械メーカーは、トランプ関税で逆風の中、アメリカ市場向けの独自商品を開発するという戦略に打って出ました。
オーレック・今村健人常務:
我々が培ってきた草刈り機を作るノウハウで、現地では除雪機とか、それが現地にはないコンセプトの機械だった。
北米市場にはなかった小型除雪機が一躍、ヒット商品に。
独自性があれば高くても売れるといいます。
更に、異なる分野へのシフトチェンジをする企業もありました。
静岡・浜松市にあるウレタン加工の工場は、主に自動車メーカーの依頼を受けて自動車部品のシートやヘッドレストなどを作っていましたが、新たな一歩として踏み出したのは、防災分野への進出です。
浜口ウレタン・浜口弘睦社長:
世界の状況というのは大きなところですが、私たちのような小さな会社にも早い時期に影響が出る。
硬質ウレタンを生かした耐久性が高い人命救助用のボートを製造するなど、技術力の高さを売りにした商品開発を進める方針だといいます。
そして、変化は私たちの食卓にも。
東京都内のステーキハウスで焼き上げられる、日本産ブランド豚のポークステーキ。
これまではアメリカ産のハラミステーキが人気でしたが、仕入価格が高騰したため、日本産の豚のステーキを導入したところ、好評だというのです。
ヌーベルバーグ・清水恒章オーナー:
(Q.現在の仕入れ値は?)12年前から比べて(仕入れ値が)3倍くらいに。もうアメリカ産の牛肉に頼れない。「じゃあ何だろう」と思ったときに、「国産の豚だったらどうだろう」と。
トランプ関税の影響でアメリカでは今後、輸入品に関税が課せられ、物価が上がるとみられます。
そのため今後、日本が輸入するアメリカ産牛肉の値段も上がる恐れが指摘されています。
ヌーベルバーグ・清水恒章オーナー:
「ステーキ屋さんを辞めるか」ぐらいのことを考えている。続けるためには何ができるか、いつも試行錯誤している。