6年前、東京・池袋で起きた高齢ドライバーによる暴走事故で妻と娘を失った男性が先日、長野県上田市で講演。癒えることのない悲しみや苦しみを語り、「自分と同じ思いをする人をなくしたい」と訴えました。
■妻と娘の命を無駄にしないために
松永拓也さん:
「たった30年しか生きられなかった若い女性と、3年しか生きられなかった女の子がいたということを、現実的に感じてほしい」
6月28日、上田市で講演した松永拓也さん。6年前、妻と娘を亡くしました。
2019年4月、東京・池袋で当時87歳の男性が運転する車が暴走。歩行者などを次々とはね、松永さんの妻・真菜さん(当時31歳)と長女・莉子ちゃん(当時3歳)が亡くなり、9人が重軽傷を負いました。
松永拓也さん:
「妻と娘の命を無駄にしないために、この自分の苦しんでいる姿を見てもらえば、誰かの意識が変わるんじゃないかと」
松永さんは「自分と同じ思いをする人をなくしたい」と全国各地で講演などを行い交通安全を訴えています。
■相次ぐ高齢ドライバーによる事故
ただ、高齢ドライバーによる事故は後を絶ちません。長野県御代田町のスーパー駐車場では2025年5月、76歳が運転する車が暴走し、女性がはねられ死亡。6月には中央道恵那山トンネルで99歳が運転する車が逆走し、事故を起こしました。
池袋の事故の直後は長野県内でも高齢ドライバーの「免許返納」が増えましたが、現在の返納の申請数はまた事故の前の水準に戻っています。
■“運転免許返納”の課題
松永さんは2024年、当時、服役中だった加害者の男性と面会。講演ではその時のやりとりも話しました。
松永拓也さん:
「『世の中の高齢ドライバーに伝えたい事ってありますか?』って伝えた。そしたら彼からはっきりと『免許返納を考えるように伝えてください』と言われました」
ただ、松永さんは「車が手放せない地域もある。一方的に返納を求めるのではなく、社会全体で解決しないといけない」と話しました。
松永拓也さん:
「その上で免許返納を促すのであればそれはフェアですよね。社会全体でそこの点も考えなければいけないと思う」
■事故後、SNSなどで誹謗中傷
また、松永さんは「二次被害」にも言及。事故の後、SNSなどで誹謗中傷を受けたと言い、インターネット教育の重要性も訴えました。
松永拓也さん:
「YouTubeでこういった動画が出されていて『駄々をこねるな、事故で妻と娘を亡くしただけだろ。死ね、消えろ、ぶっ殺すぞ』という動画が出ていて。被害者側にとっては二次被害なので、被害者側に二次被害を起きないようにしたいというふうに、こういったお話をさせていただきました」
■自分と同じ思いをする人なくしたい
講演を聞いた県民は―。
県民:
「つらいことがあれだけあったのに、心を強く持って、同じような被害者を増やさないためにこれだけやっているのが素晴らしいと思った」
松永拓也さん:
「被害者支援もそうですし、自分が体験した理不尽さとかは他の人に体験してほしくないので、体験した以上は後世の人たちが同じ体験をしないように活動していきたいと思っている」