熱戦を繰り広げる夏の高校野球長崎大会。注目は、秋季大会と春季大会を制した海星、県会長杯を制した長崎日大、春のセンバツで21世紀枠で出場した壱岐、3連覇を狙う創成館、そして離島の強豪大崎。本命不在の混戦と言われる中、海星は伝統の守備に磨きをかけ甲子園を目指す。
夏に強い海星
海星の甲子園出場回数は、長崎で最も多い19回。秋、春の大会で振るわなくても夏の大会では勝ち進んだ実績を持つことから、高校野球ファンの間では夏の大会に強い、「夏の海星」と言われている。

海星はこれまでに14人のプロ野球選手を輩出している長崎屈指の名門校で、前回の甲子園出場は2022年。2024年秋季大会優勝、2025年春季大会優勝の実績から2025年の夏の大会は第1シードで、3年ぶり20回目の夏の甲子園を目指す。

2025年の大会は「本命不在の混戦」と言われている。6月に行われた県会長杯は海星は3位、優勝は長崎日大だった。また、春のセンバツに出場した壱岐、夏の長崎大会3連覇をねらう創成館や大崎など実力校がひしめいている。海星は第1シードとはいえ、うかうかしていられない。

加藤慶二監督は「精神的にどれだけ粘り強く厳しい局面で自分の力を出せるか。秋・春の大会で連覇したが結果だけがついてきた感じ。夏は全く別物だと思う」と語る。

田端壮太朗主将は「県会長杯は長崎日大に負けて悔しい思いをしているので雪辱を果たしたい。やれることをしっかりやってリベンジできれば」と、決意を語った。
低反発バット時代 伝統の「守備練習」は健在
高校野球の公式戦では選手の安全のため、2024年からボールが飛びにくい低反発バットが採用されている。
打球をよく弾きヒットが出やすかった金属バットとは違い、反発が弱く飛距離が出にくい低反発バットに変わったことで点を取り合う展開は減り、1点を守り切るための「ミスのない守備」が主流となった。

海星の強みは今も昔も「守備」。時代に流されることなく続けられる伝統の守備練習で、開幕直前も徹底的に守備を鍛え抜いていた。

動体視力を養うことで、打球への反応力を高めるトレーニングにも余念がない。

守備の基本は捕球。一度掴んだボールをしっかり保持し、次の送球につなげる大事な動きを、あえて緩いゴロを使って練習することで強化する。また、高くバウンドする軟式のボールを使うなど、丁寧にグローブの感覚を確かめていた。
集中力を最後まで保つ練習も大切にしている。1球ごとにランナーやボールカウントを変え選手の判断能力を養っているのだ。
「1点しか無いだろ。勝ってないんだろ。セカンドランナー変えるぞ!」
「考えてやれよ。ただ流してやるんじゃなくて。本当の試合だと思ってやれよ!」
監督からも厳しい声が飛ぶ。
時速150kmのエース復活「最後のチャンスつかみたい」
チームの中心は、3年生エースの陣内優翔投手だ。

陣内投手はMAX時速150㎞とプロ注目のストレートが武器の本格右腕で、スライダーやチェンジアップなど3つの変化球も使い分ける。2024年秋に右肩の炎症で戦線を離脱したが、リハビリの末、6月に復帰した。狙ったコースに正確に投げる「制球力」を鍛えることで、ストレートを活かしながらも変化球の精度も上げつつあり、万全の状態で大会を迎える。

陣内投手は「この仲間だったからこそ今まで乗り越えられた。最後はこのメンバーで甲子園を掴みたい」と意気みを語った。
前回の甲子園出場が3年前なので、今のチームに甲子園出場経験者は一人もいない。悔しさの経験と磨きをかけた伝統の守備で「夏の海星」復活を狙う。
初戦は7月12日、2回戦からの登場だ。
「高校生審判員」新たな可能性
高校野球でもう一つ注目が、「高校生審判員」だ。高校野球の審判員のなり手不足が深刻化していることから、審判員の年齢制限を下げ、高校生が各都道府県の高校野球連盟に登録し、講習会を受講して審判員を務める制度が確立されている。

夏の大会で初の高校生審判委員となったのが、海星3年生の北木悠汰さんだ。
北木さんは1年生の頃に審判に興味を持ったという。マネージャーに転向した2年生から本格的に審判を学び、3年生で公式戦のジャッジをするなど実践経験を積んできた。

北木さんは「今回限りで終わりにするのではなく、今後も野球だけでなく色んなスポーツの中で高校生審判が活躍できる場にしていきたい」と語る。

長崎県高野連は、北木さんのような高校生審判の定着に期待している。北木さんは12日のビッグNスタジアム第2試合から塁審を務めるので、海星の試合はもちろん、北木さんの活躍にも注目したい。
(テレビ長崎)