通信制高校から甲子園を目指す 未来富山の挑戦と注目のエース

富山県の夏の高校野球大会で、県内唯一、通信制高校として挑む未来富山高校が注目を集めている。創部からわずか8年、全国的な知名度はまだこれからだが、プロ野球スカウトが熱視線を送るエース左腕・江藤蓮投手を擁し、初の甲子園出場を目指す。
未来富山の最大の武器は、長野県出身の江藤蓮投手だ。最速145キロの伸びのあるストレートと鋭いスライダーを武器に、すでにNPB12球団がスカウティングに訪れるほどの注目選手となっている。
「チーム全体で甲子園出場を目指しているので全員でそこに向かってやっていく。将来プロ野球選手になってプロ野球のなかでも活躍できる選手になりたい」と江藤投手は意気込む。

角鴻太郎監督は「周りではストレートが速いと評価していただいているが、マウンド裁き、ピンチの時にギアを入れられる勝負勘がある。高校野球で終わるような選手じゃないと思う」と期待を寄せる。
通信制ならではの環境が才能を開花させる

未来富山の野球部が所属するアスリートコースでは、卒業に必要な単位を取得しながら野球に打ち込める環境が整っている。この特徴が、野球の練習時間を確保したい選手たちを引き寄せる要因となっている。
「ほかの高校と比べて練習時間も多く、大会の時間を想定してその時間帯に練習できる部分が強み。練習でやっていることを大会で出したい」と松井清吾主将は語る。
江藤投手も、プロ野球選手を目指すため練習時間を確保できる未来富山を選んだひとりだ。その選択は的中し、U-18日本代表候補に選出されるなど才能が開花している。
昨夏の悔しさを胸に新たな挑戦へ
未来富山にとって、昨年の夏は悔しさが残る大会だった。県大会初のベスト4進出。準決勝で江藤投手は5回まで無失点と好投していたが、雷による中断後の6回に失点し、敗退した。
「去年からエースナンバーを背負わせていただいて自分が投げて負けてしまったので去年の悔しさを忘れずに今年の夏、チームを勝たせるピッチングをしてベスト4以上いってチーム全員で甲子園にいきたい」と江藤投手は決意を新たにしている。
寮生活で育む団結力

未来富山野球部の23人のうち22人が県外出身。全員が寮生活を送っており、そこで培われる団結力がチームの強みとなっている。
「全員で朝・昼・夜(ご飯食べている)。私生活は楽しく皆で過ごせている」と松井主将は寮生活の様子を語る。
江藤投手も「(1ヶ月で)3.5キロアップした。夏こそ食べている」と体作りに励んでおり、この1年で約7キロの増量に成功。その成果もあり、球速は5キロアップしたという。

打線も進化し、1年春から江藤投手とバッテリーを組む中込大捕手を中心に勝負強さを増している。「最近バッティングも上がってきて勝負強く打てている。1点でも多くとってピッチャーを楽にしたい」と中込選手は意気込む。
未来富山の初戦は7月11日、富山高専との対戦だ。通信制高校から甲子園へ―新たな歴史を刻む挑戦が始まる。
