「アジアを勝って、世界選手権でメダルを取りたい」――そう語るのは、札幌大谷中学校・男子バレーボール部3年の小西出隼翔(こにしで・はやと)選手。身長188cmの中学生スパイカーが、U16日本代表に選出され、7月12日からタイ・ナコンパトムで開催される「2025男子U16バレーボールアジア選手権大会」に出場する。
日本代表12人のうち中学生はわずか5人。その狭き門を突破し、北海道から唯一選出された小西出選手の歩みと挑戦、そして仲間や指導者たちの思いとは――。
今回のU16日本代表は、高校1年生と中学3年生が中心。小西出選手は唯一、北海道から代表入りを果たしました。「選ばれたことは嬉しく思いますし、結果を残さないといけないっていう責任と自覚が大事だなと僕は思ってます」と静かに語った。
国際経験も豊富で、今年2月にイタリアで開催された「Nations Winter Cup」では全国中学選抜で唯一の下級生として出場。すべての試合、スターティングメンバーとして日本の初優勝に貢献した。
「試合を重ねるごとに成長していった」と振り返ります。特に「セッターとのコミュニケーションが試合中に取れるようになった」と実感を口にした。
冷静なレシーブ、パワーのあるスパイク、状況を読む判断力――。これらを支えるのは、自身が代表合宿で学んだ「ボディーコントロール」の知識。「試合前のアップやストレッチ方法を大谷中のチームメートにも伝えている」と、チームに還元する姿勢も見せている。

遠別町から札幌へ――進化を遂げた日々
小西出選手の原点は、北海道北部の遠別町。兄の影響で小学校1年生からバレーを始め、「兄が全国準優勝した姿を見て、自分も目指したいと思った」と語る。地元クラブ「遠別イーグルス」で実力を磨き、中学進学と同時に札幌大谷中へ進学。2024年には全国中学校体育大会でベスト8に入った。
札幌大谷中学校・男子バレー部は道内でも屈指の強豪。かつて、北海道妹背牛(もせうし)商業高校女子、札幌大谷高校女子で指導経験がある平本和久監督のもとで基礎と戦術理解を徹底的に積み重ねてきた。平本監督は、小西出選手について「中学に入って2年と少しですが、人間力がすごく伸びた」と語ります。「後輩への接し方も優しくなって、チームを引っ張ろうという姿勢が強くなった」とその成長を評価している。
さらに、「イタリアから帰ってきた時には、プレーだけでなく人としても一回りも二回りも成長していた」とし、「海外での経験を、プレーや言葉で後輩たちに伝えてほしい」と期待を寄せている。

「もっと成長しなければ」 世界と戦うための課題と目標
世界と戦う中で、小西出選手は「ディグ(=主にスパイクに対するレシーブ)、レセプション(=サーブに対するレシーブ)からスパイクへの繋ぎが一番大事だと思った」と語り、日本のディフェンス力に強みを見出します。「世界では高さが重要だけど、日本はつなぎのバレーで勝負できる」と分析。
アンダーカテゴリーでは、タイなどでバレー人気が高まり、中国では2メートルを超える選手を揃えるなど、アジア勢の強化も進んでいるという。「日本は工夫で勝たなければならない」と語るその口ぶりには、冷静な分析と負けん気が感じられた。

チーム一丸で戦う中体連 代表不在でも揺るがぬ団結
小西出選手が代表遠征のために欠場する札幌市中体連バレーボール選手権大会。その穴を埋めるのが、主将・元沢想選手をはじめとしたチームメートたち。
「攻撃力は落ちちゃうんですけど、その分守備で粘って、粘って、くらいの気持ちでやっています」と元沢選手。小西出の不在は予想されていたこともあり、「最初からそのつもりで準備してきた。動揺はなかった」と語った。
「隼翔に安心して帰ってきてもらえるように、しっかり突破したい。目標は全国優勝です」と語る姿には、強い団結力と覚悟を感じさせた。
一方、小西出選手も「僕は信じてます」とチームメートへの信頼を口にし、「まずはアジア選手権、そして仲間と一緒に中体連最後の舞台にも立ちたい」――。
世界を見据えつつ、地元・北海道での戦いにも強い思いを抱く小西出選手、そしてここまで一緒に頑張ってきたチームメートと共に、彼らの挑戦は、それぞれの舞台ですでに始まっている。
