岐阜県大垣市の「松澤製麺所」は、創業100年を超える老舗の製麺所だ。店は母親が経営してきたが、一時は廃業の危機を迎え、銀行員だった娘が3年で売上を5倍にするなど業績を回復させ、二人三脚で味を守り続けている。

「松澤製麺所」を経営する4代目の松澤明美さんと、娘の里香さん
「松澤製麺所」を経営する4代目の松澤明美さんと、娘の里香さん
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■創業100年以上…岐阜県大垣市で人気の「松澤製麺所」

岐阜県大垣市の「大垣駅」から南へ500mほどのところにある「松澤製麺所(まつざわせいめんじょ)」は、大正12年(1923年)に創業した老舗だ。

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店を経営するのは4代目の松澤明美さんと、娘の里香さん。

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代々伝わる製法で作る麺は 主に「きしめん」「中華麺」「そば」の3種類で、店頭で一般向けに小売りもしている。

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毎朝、その日に販売する麺を2人で作る。使う材料は創業当時から変わっていない。

松澤製麺所の4代目 松澤明美さん:
「(毎日)同じように作っても、きょうは特に生地はよくておいしいかなと思う日もある」

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この道50年以上というベテランの明美さんは、その日の気温や湿度によって水分量を調整し、手で触って生地の様子を確かめながら仕上げていく。目指すのは“コシがあって舌触りのいい食感の麺”だ。

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体力のいる麺作り。専用の歯を取り付け、機械のスピードを調整しながら、次から次へと出てくる麺を、手際よく1食分にくるりと丸め、箱に詰める。

「中華麺」は、特製のしょう油ベースのスープがセットになって1食200円と、お値打ちだ。

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たっぷりのお湯で1分間茹でれば、昔ながらのラーメンに。スープによく絡む縮れ麺は、クセになる味だ。

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豊かな香りが特徴の「そば」は、1食250円で、甘みと香りが強く、のど越しも抜群。

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「手打ちきしめん」は、1食250円で、ツルツルっとした食感でのど越しのいい平打ち麺だ。

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モットーは、どの麺も「毎日食べても飽きない味」。週に2回、できたての生麺を店頭で販売している。

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客:
「麺が好きなので、一度食べたら忘れられなくて定期的に来るようになったんです。中華麺は、屋台のラーメン、夜とかやっているラーメンのサラッとした感じの麺です、だからするするって入る感じの」

別の客:
「全体的にどれものど越しがいいんですよね、きしめんは、すごくモチモチしている、噛んだ食感もコシがあって全然違う」

麺は、注文を受けてから袋に詰めるが、明美さんは、ついついサービスしてしまうという。この日も、そうめんをサービスしていた。

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明美さん:
「作ったものは、誰でもそうでしょ。野菜だってそうだと思うけど、せっかく作ったのにね、食べてもらえたらと思って差し上げると喜ばれますので、おまけが増えます」

■飲食店が減り一時廃業の危機に…銀行に勤めていた娘が跡継ぐ決心

大正12年(1923年)、自家製麺の食堂としてスタートした松澤製麺所。その後 麺づくりの専門店に衣替えし、市内の飲食店に自慢の麺を販売してきた。

大垣駅前にある食事処「駅前にしき」は、松澤製麺所のそばにほれ込んで15年以上使っている。

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駅前にしきの担当者:
「のどごしがよくて、歯ごたえがあってそば粉の香りもきちんとする。噛んだ瞬間にはじけるような食感になります。毎日食べても食べ飽きない、すごいなって。こっちも負けていられない」

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こうして長年、地元の人たちの食を支えてきた「松澤製麺所」だが、時代とともに取引先の飲食店が減少し、売上も落ちていった。工程のほとんどが手作業で体力的に厳しくなったこともあり、明美さんは「自分の代で終わりにしよう」と考えていたという。

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明美さん:
「もうここまでやったからいいかと思って。これできりかなと思っていたんですけど」

廃業の危機を救ったのが、当時銀行に勤めていた娘の里香さんだった。

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明美さんの娘の里香さん:
「100年もやって食べさせてもらってきて、目の前でそれが無くなるのかと思った時には、知らんぷりはできなかった」

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里香さんは銀行を辞めて家業を継ぐことを決意した。

■娘は原価率の高さに驚愕…小売りにシフトしSNS展開やネット販売で売上が5倍に

里香さんは、まずは店の経営状況からと確認したところ、気付いたことがあったという。

里香さん:
「このお店を最初に手伝ったのは経理からだったんですけど、原価率の高さに驚いて、これ絶対おかしいと思って。食べたか捨てたかあげたか」

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明美さん:
「業務用を出すと残るので、それをなんとかみんなに食べてもらおうと配ったのが…」

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里香さんは、売上を立てるため、小売りが得策と考え、それまでの業務用中心の卸から軸足を移した。

また、老朽化していた大型製麺機は扱いやすい小型のものに買い替え、少量生産で作りたての麺を販売するスタイルにシフトし、無駄をなくすことに成功した。

そして、SNSで情報を積極的に発信し始めたところ、次第に客が増えてきたという。

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3年前にはネットショップも開設し、ギフトにも力を入れると、徐々に口コミで評判が広がり、売上は3年でおよそ5倍にもなった。

■娘は母親に麺づくりを学びながら…二人三脚で守る老舗の製麺所

“松澤製麺所の救世主”ともいえる里香さんだが、麺作りは、まだまだ明美さんには敵わない。コツを教えてもらい、日々練習をしている。

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たくさんの人を喜ばせようと、松澤さん親子は、親子二人三脚で老舗の味を守り続ける。

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明美さん:
「やっぱりやっていてよかったなと、みんなが喜んでくれるし。孫が『おばあちゃん、僕ここに生まれてよかった』と言ってくれたの。そんなうれしいことと思ったら、『だってラーメンがいっぱい食べられるから』って。そいうのも含めてみんなが喜んでいるのがね」

2025年2月6日放送

東海テレビ
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