創業50年を迎えた長野県塩尻市の洋菓子店。名物の「長芋のカステラ」は30年ほど前に長野県内を訪れた上皇ご夫妻が気に入り、土産としても持ち帰られた逸品です。開発した先代は亡くなりましたが、家族で味を守り続けています。

■愛され50年「町のケーキ屋さん」

厨房に広がる甘い香り。焼きあがったのはふわふわのカステラです。

塩尻市の広丘駅のすぐ近くにある洋菓子店「レーヌ」。ケーキやクッキーなど色とりどりのお菓子が並ぶ店内。「町のケーキ屋さん」として地域に愛され2025年、創業50年を迎えました。

客:
「イチゴのケーキとかババロアとかを食べておいしかった」
「日頃のおやつもそうですし、手土産やイベントでも使わせてもらっている」


■先代が亡くなっても…味は変えない

店を開いたのは先代の川上良治さん。2024年、82歳で亡くなりましたが、妻のあい子さん(80)と長女の仲田美妃さん(52)が店を守り続けています。

妻・あい子さん(80):
「ゼロからのスタートでここまでやってこられた。主人も大変だっただろうし、ここまでこられたことも幸せだったかな、大変だったけど」

長女・美妃さん:
「父と母がつくった店をそのままの状態で味とか変えないように客に満足してもらえるように日々頑張っています」


■上皇ご夫妻に献上「長芋のカステラ」

「レーヌ」には『外せない名物』があります。

常連客:
「長芋のカステラが有名なので、大事な人にお届けしたいと思って予約しました」

山形村特産の長芋を使ったカステラです。

40年ほど前に長芋を使ったお菓子を作ってほしいと知人から依頼があり良治さんが試行錯誤の末、完成させました。

長芋のしっとり感ですぐに人気となった「カステラ」。するとある特別な依頼が舞い込んできました。


仲田美妃さん:
「(山形村に)当時の天皇陛下さまと皇后さまがいらっしゃったときに、お茶うけのお菓子として出したいと」

1992年、当時の天皇皇后両陛下、今の上皇ご夫妻が山形村の高齢者施設を訪れた際、お茶うけとして献上されたのです。


あい子さん:
「こんな話が来るとは夢にも思わなかったです。(良治さんは)感激で、何とも言えないって言っていました」

さらに―。

あい子さん:
「(上皇ご夫妻が宿泊していた)諏訪湖ホテルの支配人が、ぜひカステラをお土産に持っていきたいので明日の朝用意してくださいって言われて」

特に美智子さまが気に入られ、土産として20本をお持ち帰りになりました。

仲田美妃さん:
「(当時は)すごく大変そうでした。あわただしく、慌てながら、粗相しちゃいけないと仕事をしているのを見ていました」

その後、何度も宮内庁関係者が長芋のカステラを買いに店を訪れたそうです。

あい子さん:
「感激ですね。(美智子さまは)持っていくと、喜んで、これは塩尻峠を越えて持ってきていただいたカステラだって言っていました」


美智子さまもお気に召された「長芋のカステラ」。作り方を見せてもらいました。

仲田美妃さん:
「(今、何を入れた?)長芋とすりおろしたリンゴです」

山形村産の長芋は煮た後、裏ごしをするのがポイント。ほかの材料と混ざりやすくなり、焼いた後、しっとりとしてきめが細かくなるそうです。

そこに、卵や小麦粉、そして、隠し味で長芋と相性の良い青のりなどを入れよく混ぜます。

仲田美妃さん:
「これで混ざったので、手で最後混ぜます。意外と、底にバターが固まっていたりするので、最後しっかり混ぜるように。(長芋を入れているから粘り気が?)全部合わさるとすごく重くて、力仕事です」

仲田美妃さん:
「型も全部、父が使っていたものです。このミキサーボウルも」

分量も作り方も道具もすべて父・良治さんの頃から変わっていません。

仲田美妃さん:
「全部、生前教えなきゃいけないことは教えられていたので、私に。悔いはもしかしたらないのかも、安心して旅立ったのかなと。仕事していると、どこかで見ているかなって感じはします」


180度で約30分―。

ふわふわのカステラが焼きあがりました。1日寝かせて、ブランデーを吹きかけたら完成です。

味は―。

(記者リポート)
「ふわふわしっとりで、きめ細かい舌ざわりで、とてもおいしいです」


販売開始から約40年。今でも看板商品の一つで、多いときには1日に30本売れる日もあるということです。

40年以上の常連客:
「( よく来る?)来ますね、有名だもん。山形(村)に天皇陛下が来たときに食べたって、うちでも食べておいしかった」

30年以上の常連客:
「贈答にするにも選びやすいし、受け取った方もこういう(皇室献上の)カステラだと思ってもらえるので」

地域に愛され半世紀。長芋のカステラを含め先代から引き継がれてきた味をこれからも守り続けます。

レーヌ・仲田美妃さん:
「味を変えないように、『変わったね』と言われないように毎日仕事をしています。今後も皆さんに食べて笑顔になってもらえるようなケーキやカステラ、お菓子全般を作っていけたら」

長野放送
長野放送

長野の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。