今、関心の高い話題を詳しく解説する急上昇ニュースのコーナーです。今回は岡山・香川ともに過去最少を更新した出生数について、岡山県奈義町の取り組みからヒントを探ります。担当は森岡記者です。
（森岡紗衣 記者）
厚生労働省によりますと、２０２４年１年間に生まれた赤ちゃんの数、出生数は岡山県が１万９２６人、香川県は５０５９人で、過去最少を更新しました。「少子高齢化が進んでいますね」そんな中、”奇跡のまち”と言われているのが、岡山県北部にある奈義町です。
１人の女性が生涯に産む子供の推定人数を示した合計特殊出生率ですが、奈義町は全国平均、岡山県平均を大きく上回っています。
岡山県北部に位置する人口約５０００人の小さなまち奈義町。２０１９年に合計特殊出生率が２．９５を記録し、“奇跡のまち”と呼ばれました。２０２３年には当時の岸田首相も視察。しかし、最初から出生率が高かったわけではありませんでした。
転機は２０１２年。奈義町は「子育て応援宣言」を行い、そこから独自の少子化対策に力を入れました。２年後には合計特殊出生率が２・８１に上昇。一旦下がったものの、２０１９年に過去最高の２・９５を記録し、その後も高い値をキープしています。
子育て応援宣言を受けて、奈義町は１８歳までの医療費無料化、こども園・小中学校での給食費の無償化などを導入してきました。しかし、こうした子育て支援は、全国各地の自治体で導入が進んでいるもの。なぜ奈義町だけが“奇跡のまち”と呼ばれるほどの成果を上げられたのでしょうか。
その理由を地方の街づくりに詳しい岡山大学の岩淵泰准教授はこう分析します。
（岡山大学学術研究院 教育研究マネジメント領域 岩淵泰准教授）
「市町村合併をしなかったので独立して街づくりをする必要があった。人口を確保しないといけないという危機意識は他の街よりも２０年早かった。地方創生が叫ばれて人口減少という問題に光が当たった時に、その問題に先駆的に関わってきたのが奈義町。」
さらに、奈義町ならではのある強みが子育て支援の利用促進につながっているといいます。
（岡山大学学術研究院 教育研究マネジメント領域 岩淵泰准教授）
「小さいまちなので必要なサービスがわかりやすく届きやすい。町の人たちの積極的なサポートがあって町が運営されているのが特徴的」
町内にある子育て等支援施設、なぎチャイルドホームです。奈義町が子育て支援政策の一環で整備したもので、子供の一時預かりだけでなく、世代を超えた交流の場としての役割も果たしています。
（奈義町で子育てをする母親）
「地域の人が気軽に話しかけてくれて子どもたちも自分のおじいちゃんやおばあちゃんのように接している」
「街を歩いていても気軽に声をかけてくれる人が多い」
（なぎチャイルドホーム 貝原博子さん）
「日常の生活の中でお互いに助け合っている。悩みも相談し合っている」
奈義町は単に制度を整えるだけでなく、地域全体で子育てに取り組む風土づくりに取り組んできました。その結果、支援が利用されやすくなり、住民同士が自然と助け合う環境が生まれています。
奈義町の事例をヒントに求められる少子化対策について、岡山大学の岩淵泰准教授は「今、各自治体が準備している子育て支援の政策はとても良いもの。あとはそれを住民に届ける努力が必要」だと指摘しています。自治体ごとに課題は異なりますが、それぞれが講じている支援策をどう住民に届けるかが今、問われています。
奈義町のように地域の空気感を育てる取り組みは他の地域でも参考になるのかもしれません。
