国内で初めて、マルミミゾウが妊娠した。
出産が近づくにつれ、期待とともにプレッシャーも増しているという広島市安佐動物公園。万一に備え、人口哺育を想定して取り寄せた「ゾウ専用ミルク」の秘密に迫る。

この時期、赤ちゃんの胎動が見える!

安佐動物公園で注目される1頭のゾウ。木の枝をむしゃむしゃと食べているのは、2025年夏~秋ごろに出産予定のマルミミゾウの「メイ」だ。

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マルミミゾウはアフリカゾウの一種で、日本での飼育は珍しい。今回の妊娠は国内初のケース。ゾウの妊娠期間は長く、20~22カ月に及ぶ。
メイのお腹もだんだん大きくなってきた。動物園の担当者は「時々、赤ちゃんがお腹の中を蹴る様子を見ることもできます」と来園者にアナウンス。

週に1度、メイの様子を見にくるという女性は「最初はお腹が横に広がっていたが、最近は下に大きくなってきているような感じがします。メイちゃんが子ゾウを連れて歩く姿をぜひ見たい」と目を細めていた。

赤ちゃんの鼻や尾の様子が映るエコー写真
赤ちゃんの鼻や尾の様子が映るエコー写真

また、赤ちゃんのエコー検査の写真を園内に掲示。2月の検査では鼻や尾がしっかりと確認でき、来園者が足を止めて成長を見守っている。

万一に備えた「ゾウ専用ミルク」

出産に向けた準備も進んでいる。安佐動物公園では人工哺育に備えて、倉庫に「ゾウ専用ミルク」を3カ月分保管。

製造を担うのは、森永乳業の子会社「森乳サンワールド」だ。イヌやネコのペットフードを主として、パンダやクマ、アザラシなどのミルクも手がけている。
ゾウ専用は、これまで5つの動物園で行われた6度の出産で納品した実績がある。

特筆すべきは、ゾウの母乳に多く含まれる「グルコサミン」を強化している点。グルコサミンは軟骨の生成を助け、体重の重いゾウの赤ちゃんが自力で立ち上がり、歩けるようになるために欠かせない栄養素だという。

赤ちゃんゾウの成長を支えるエレファントミルク
赤ちゃんゾウの成長を支えるエレファントミルク

それに、ゾウが飲む大量の粉ミルクを溶かすのは大変。溶かしやすいよう「造粒加工」という特殊な製法を導入した。水に溶けやすく工夫されたミルクは、現場の負担も軽減する。
森乳サンワールド・生産業務部の田中智弘さんは「ただ、ミルクはあくまで人工哺育となったときの“万一の備え”です。やはり一番いいのは、無事に生まれてお母さんの母乳を飲んで育ってくれることですね」と話す。

クラウドファンディングに3000万円

安佐動物公園はクラウドファンディングでゾウの出産・子育てへの支援を募り、3000万円以上が集まった。

6月下旬、10万円以上の支援者や団体名を記した芳名板を園内に設置。
支援した広島アニマルケア専門学校の大津晴男校長は、芳名板に名前があることを確認し、うれしそうに話す。

「すごく指折り数えて待っています。楽しみです。広島でゾウが生まれること自体、世界へ発信できる出来事だと思う。それがマルミミゾウという希少動物の出産ということで何十倍も素晴らしい」

国内初のマルミミゾウの誕生に、多くの支援と期待が集まっている。
6月時点では、9月ごろに出産する確率が高いと推測されていて、8月から血液検査を実施しホルモン値によって出産のタイミングをはかる予定だ。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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